思い出して欲しい二人

春色悠

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第一章

取引先との昼食先での再会2(攻め視点)

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 俺は今、物凄く動揺している。それこそ、かつてみどりにプロポーズした時以来ではないだろうか。
 
 目の前にみどりが居る。凄い目があってる。それだけで、これほど心が乱されるのは、惚れた弱みなんだろうか。
 気づいてほしい。俺だよみどり。あすくんだよ。
 そんな思いは儚く散り、かけられた言葉は他人行儀だった。
「ご注文がお決まりでしたか?」
 お冷を持って来てくれたみどりは、俺が見つめていたからか、注文がもう決まっていると思ったらしい。
「オススメはあるかい?」
「ランチでしたら、日替りサンドがおすすめです。今日は、カツサンドとトマトサラダサンド、プラスでスープがついてます。」
「じゃあ、俺はそれで。滝川さんはどうします?」
 滝川は、ストーカー女の名字だ。
「私もそれにしますわ。」
「では、日替りサンドお2つですね。畏まりました。」
 それでみどりとの久しぶりの会話は終わってしまった。
 でも、他人行儀の方がよかったかもしれない。なにしろ俺は今、ストーカーの女と一緒にいる。
 俺と知り合い、しかも結婚の約束をした仲だとばれたら、みどりに危害を加えるかもしれない。そんな事はさせないけどな。
 
 カランカラン
 そう扉が閉まり、店を出てしまった。サンドイッチは美味しかった。みどりが作ったんだろうか。また食べに来よう。
「朱鳥さん、美味しそうにサンドイッチを食べていらっしゃいましたね。サンドイッチがお好きなの?でしたら、もっと美味しいお店を私知っていますわ。今度ご一緒に…」
「いえ、結構です。それでは仕事がありますので。」
 あ?みどりが作ったサンドイッチ以上に美味しいサンドイッチはねぇんだよ。ボケが。
 さっさとストーカー女と離れ、向こうの社長さんに連絡する。案の定向こうの社長さんからは、謝られた。その上で、警察沙汰にはしないでほしいと頼まれた。二度と関わられなければ何でもいいので、みどりと会わせてくれた礼も込めて、警察沙汰にはしない事にした。ただし、二度はない。



 仕事も終わらせ、一人暮らしの自宅に帰ってきた。
 
 誰も居ないリビング。電気もつけずに通り過ぎ、寝室に向かう。大人二人が余裕で寝られるベットに寝そべり、みどりの事を考える。
 大人になったみどりは、美人になっていた。天使が女神に進化してた。
 ふわふわの髪の毛も、大きな目も変わっていなかった。
 子猫みたいに可愛かった声は、甘さを含んだ男の声になっていた。体つきも、中性な物から、男性だとはっきりわかるようになっていた。
 変わっていた所も、変わっていなかった所も、どちらも好きだ。
 みどりは多分、俺の事を覚えていない。それはそうだ。みどりはあの時幼稚園児。しかも一緒に居たのは3ヶ月ほど。覚えていない可能性は充分に考えていた。

 だけど…………………………一度結婚すると言ったんだ。逃さないよみどり。
 忘れてても、思い出さなくても、もう一度、いや、前以上に俺に惚れてもらう。
 俺、頑張るから、また俺を好きになってね、みどり。
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