思い出して欲しい二人

春色悠

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第一章

バイト先での再会。(受け視点)

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 穏やか昼時。カランと、店の扉に着けたベルの音が鳴り、客が入ってきた事を知らせる。
 客は二人組。初恋の男性と、女性だった__。


 

 俺は鷹木翠。大学生二年生。家から近い喫茶店でバイトしてる。
 今日は平日だけど、大学が休みだから、バイトに来てる。因みに今日は店長がいない。珍しいコーヒー豆を探しに旅に出たよ店長は……。ま、ちょっと遠いデパートに仕入れに行っただけ、だけどね。
 そして凄く暇。平日っていうのもあるけど、この店は穴場っぽい感じだから、元々客が少ない。
 取り敢えず、掃除や食材の確認をして暇を潰す。
 ちょうど十二時頃、カランと店のベルがなった。
 どうやら客は男女二人組の様で、恋人同士だろうか、腕を組んで店に入ってきた。
「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ。」
 そう声をかけ、お冷を用意する。
「お冷をお持ちしました。ご注文が決まったらお呼びください。」
 いつも通りの対応で、声をかけ、お冷を置く。
 その時、男性の方と目が合い、その時初めて、しっかりと顔を見た。
 気がついた頃には、客は店を出ていった後だった。動揺して記憶はおぼろげだが、きちんと対応できていたらしい。客が座っていた席には、食べた後のコップやお皿がある。
 本来ならば、後片付けをしなければならないが、俺は、ズルズルとその場に座り込んだ。
 ___初恋の人だった。
 隣に居た女性は今の恋人なのか、また会うと思ってなかった、とか、着てたスーツ高そうだったな、とか………。
 俺のこと、覚えてなかったな………とか………。
 はっきり聞いた訳じゃない。でも、俺を見る顔が余りにも他人行儀で、覚えていない事をものがたっていた。
 忘れられてると、思っていた。期待しない様にしてた。
 大人になった彼は、多分良い会社に入ったんだろう。彼は賢いから、これからどんどん出世するんだろうし、もうしてるかもしれない。あんなにかっこいいなら、一緒にいた女性が恋人じゃなくても、引く手数多だろうし…。
 _____遠い、なぁ。
 小さい頃とはいえ、「ずっと一緒」て、言ってくれたのに………。
 所詮、小さい頃の戯言。覚えていなくて当然。

 なんで………おぼえてないの、
「あすくん…。」
 そう彼の名前を呟いた声は、誰もいない店内に溶けていった。
 
 
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