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第一章 藤林疾風『戦国の伊賀に登場』
第5話 築城 藤林要塞砦と、戦火の足音。
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永禄2(1559)年10月 伊賀藤林館 藤林疾風
未来から持って来た情報の中に、伊賀の土壌の情報があり、それによると凝灰質泥岩
と花崗岩の地層が大半であるとあった。
また、員弁郡藤原には石灰岩が豊富にあることがわかった。
この時代は石灰と呼ばれ、畑の肥料に使うほか、石灰石を焼成して石灰練の試作をしていたが、うまくいったようだ。 この石灰練を使って、新藤林砦を造る。
中に入れる鉄筋は、青銅鋼で代用する。
一番先にやったのは、藤林砦近くの石灰の採掘、東の大山田にある銅鉱山の採掘と棒道の整備と舗装、それに荷馬車の製造だった。
(上野と島ヵ原には亜炭があるけど保留だ。)
不便なことにこの時代には馬車がない。
平安京には貴族の牛車があったが、馬より力が強いので使われたのだろう。
悪路と車輪のベアリングがないため、酷く負荷が掛かり荷物など積むと動かないのだ。
四苦八苦して作りましたよ滑空輪。
青銅で二重輪のレールと、その間に挟めた青銅球で。球の型は鉄砲玉だ。
『ゴムタイヤ』もないから、藁の畳床の要領で外周りを薄い銅板で覆って作った。
藤林の館は、標高200m余の小丘陵にあり、室町時代に藤林のご先祖が築城した砦という名の小さな山城である。
館は忍者屋敷でなので、隠し扉や罠など、各種の仕掛けが施されている。
俺は旧砦を拡張し、南の低地の畑を囲い込み、一面が100~150mのほぼ八角形に塀と堀をまず作った。
堀を掘って出た土砂の砂利は、篩に掛けてコンクリートに混ぜ、塀の壁に使った。
砦の正面となる低地に作ったコンクリートの塀なのだが、外周と敷地側までは幅20mもあり、壁の入口が一箇所だけで内部を迷路として、敷地内には繋がっていない。
敷地内側からの通路には、小穴が開け弓や鉄砲で攻撃ができるようにした。
つまり、完全に罠として作ったのだ。
本当の出入口は、東西南北4ヶ所に、塀の上から滑車で操作する木製の跳ね橋の階段が取り付けてあり、ここから出入りする。
塀の高さは3m。内壁側には段差の通路があり、守備兵が鉄砲や弓で攻撃ができる。
外周に設けた低地側の堀は、巾が30mもあり水深も3mで、舟でもないと渡って攻めるのは容易でない。
また、八角の角に当たる場所には、円柱形二階建ての郭を設けて、籠城戦に備えた。
敷地の中は藤林館のほか、一階に大広間、二·三階を兵の休憩室とした別館を建てた。
さらに地下1F地上3Fの1棟60戸1DK住戸を8棟建て、郭も併せれば3,000人位は楽に籠城できる。
地下は食糧などの資材貯蔵庫だ。
そして、残った敷地は田畑だ。長期の籠城には食糧の確保が不可欠だしね。堀の底から水を引いたが井戸も豊富にあり、碁盤の目のように石灰練の道が敷かれている。
唯一あまり変ってないのは館だが、周囲の四方に趣きの違う庭園を造った。
北側は、鯉が泳ぐ池を配した木々が色濃い和風庭園。南側は芝生に木々が所々にある。
東側は草花の花壇で満たされ、西側には竹林が静けさを醸し出している。
草花が好きな母上のために造った東側の庭には、振子椅子と長椅子、そして木陰でお茶(麦茶)でも飲んでもらおうと東屋を造った。
外周部の迷路の塀と水堀は3ヶ月。敷地内の施設は更に3ヶ月掛かって春に完成した。
「あなた。領民達に私達がなんて言われてるか知ってるかしら?」
南側の東屋で、綺羅を抱いた母上が父上に笑いながら、話し掛けている。
「よくは知らんが、大方、鳶が鷹を産んだとでも言っておるのじゃろう。はははっ。」
「惜しいわ。近いけど、もっと凄いのよ。」
「なんじゃ、もったい付けずに、教えてくれても良かろう。」
「あのね、猛虎と孔雀が麒麟を産んだのですって。くすっ。」
「なんじゃそりゃ、褒め過ぎじゃわい。」
「そうなのよそれでね。『綺羅』のことは、智慧、長寿、富を与えてくれる『弁天様』の生まれ変りに違いないのですって。」
「やれやれ、疾風のせいで、儂らまで祭り上げられてしまうわい。」
「領民達からしたら、疾風は救いの神にも等しいのでしょうね。
暮らしが豊かになって、今の伊賀は争いもなく、堺の次くらいに活気に溢れてるって、商人達も言っているわ。」
「うむ、百地殿も言っとる。おかげで、領民の衣食住ばかりか、鉄砲などの高価な武具の調達も容易になったとな。
しかし、伊賀の平穏もいつまで続くかわからん。織田と今川、浅井と六角が戦になるじゃろうし、それに北畠は裕福になった伊賀を狙っておる。」
そして今、秋の収穫後まもなく北畠具教が兵を起こし、伊賀攻めを開始した。その数は8,000余、大将は具教自らが出陣してきた。
一方伊賀では、早くから情報を得ており、刈り入れ作業も、長柄鍬や千歯こきを使い、男衆も戦さ働きに出ていないので、藤林砦の敷地内の収穫を後回しにし、総力で刈り入れを行い、わずか4日で終わらせた。
また、戦力は伊賀の5つの砦に集約し女衆と子らは、藤林砦に匿われた。
別館で、伊賀全家の当主が集まった軍議の場が開かれた。
「北畠家の軍勢はおよそ8千。畠山や織田の備えに5千ほどを領内に残したようです。」
「半蔵殿、すると北畠具教の居城、多気城にはどのくらいの兵がいるのでしょうか。」
「御曹司。多気城には、およそ2,000の兵がいるものと思われますな。」
「とりあえず、籠城戦じゃな。小さな砦では護り切れぬ。斥候程度を留め兵を集約しよう。」
「百地殿、百地砦から鉄砲隊を100人お借りしたいのですが。」
「構わぬが、途中での奇襲は、難儀じゃぞ。
おそらく、本陣の敵の構えは、相当厚いと見ねばならぬ。」
「いえ本陣には向かいません。多気城を落とします。
藤林砦の投擲部隊50人と護衛の鉄砲隊50人、百地砦の鉄砲隊100人で奇襲部隊を編成し、北畠具教の居城、多気城(霧山御所)に火薬と油で火を放って丸焼けにします。」
「多気城が焼かれたら、北畠具教も伊賀攻めに構っておれんか。」
「引き返すでしょうな。本拠の多気城を荒らされては、面目が立ちませぬからな。」
「御曹司には、策がお有りなのですな。だだ籠城するだけでは、伊賀の田畑が荒らされるばかりで面白くありませぬなぁ。
伊賀者一同、麒麟児と謂われる 御曹司のお手並みを拝見致しましょうぞ。」
( はあ、戦法たって城攻めだしなぁ。隙を突いての夜討ち朝駆けしかないぞ。
まあ、放火して逃げて来るだけだな。)
【 弁天(弁財天)様 】
神仏習合で、ヒンドゥー教の女神『サラスヴァティー』が仏教に取り込まれた呼び名らしい。
その後、明治の神仏分離以降は多数が宗像三女神又は市杵嶋姫命を、少数は瀬織津姫を弁才天として祭っいる。
未来から持って来た情報の中に、伊賀の土壌の情報があり、それによると凝灰質泥岩
と花崗岩の地層が大半であるとあった。
また、員弁郡藤原には石灰岩が豊富にあることがわかった。
この時代は石灰と呼ばれ、畑の肥料に使うほか、石灰石を焼成して石灰練の試作をしていたが、うまくいったようだ。 この石灰練を使って、新藤林砦を造る。
中に入れる鉄筋は、青銅鋼で代用する。
一番先にやったのは、藤林砦近くの石灰の採掘、東の大山田にある銅鉱山の採掘と棒道の整備と舗装、それに荷馬車の製造だった。
(上野と島ヵ原には亜炭があるけど保留だ。)
不便なことにこの時代には馬車がない。
平安京には貴族の牛車があったが、馬より力が強いので使われたのだろう。
悪路と車輪のベアリングがないため、酷く負荷が掛かり荷物など積むと動かないのだ。
四苦八苦して作りましたよ滑空輪。
青銅で二重輪のレールと、その間に挟めた青銅球で。球の型は鉄砲玉だ。
『ゴムタイヤ』もないから、藁の畳床の要領で外周りを薄い銅板で覆って作った。
藤林の館は、標高200m余の小丘陵にあり、室町時代に藤林のご先祖が築城した砦という名の小さな山城である。
館は忍者屋敷でなので、隠し扉や罠など、各種の仕掛けが施されている。
俺は旧砦を拡張し、南の低地の畑を囲い込み、一面が100~150mのほぼ八角形に塀と堀をまず作った。
堀を掘って出た土砂の砂利は、篩に掛けてコンクリートに混ぜ、塀の壁に使った。
砦の正面となる低地に作ったコンクリートの塀なのだが、外周と敷地側までは幅20mもあり、壁の入口が一箇所だけで内部を迷路として、敷地内には繋がっていない。
敷地内側からの通路には、小穴が開け弓や鉄砲で攻撃ができるようにした。
つまり、完全に罠として作ったのだ。
本当の出入口は、東西南北4ヶ所に、塀の上から滑車で操作する木製の跳ね橋の階段が取り付けてあり、ここから出入りする。
塀の高さは3m。内壁側には段差の通路があり、守備兵が鉄砲や弓で攻撃ができる。
外周に設けた低地側の堀は、巾が30mもあり水深も3mで、舟でもないと渡って攻めるのは容易でない。
また、八角の角に当たる場所には、円柱形二階建ての郭を設けて、籠城戦に備えた。
敷地の中は藤林館のほか、一階に大広間、二·三階を兵の休憩室とした別館を建てた。
さらに地下1F地上3Fの1棟60戸1DK住戸を8棟建て、郭も併せれば3,000人位は楽に籠城できる。
地下は食糧などの資材貯蔵庫だ。
そして、残った敷地は田畑だ。長期の籠城には食糧の確保が不可欠だしね。堀の底から水を引いたが井戸も豊富にあり、碁盤の目のように石灰練の道が敷かれている。
唯一あまり変ってないのは館だが、周囲の四方に趣きの違う庭園を造った。
北側は、鯉が泳ぐ池を配した木々が色濃い和風庭園。南側は芝生に木々が所々にある。
東側は草花の花壇で満たされ、西側には竹林が静けさを醸し出している。
草花が好きな母上のために造った東側の庭には、振子椅子と長椅子、そして木陰でお茶(麦茶)でも飲んでもらおうと東屋を造った。
外周部の迷路の塀と水堀は3ヶ月。敷地内の施設は更に3ヶ月掛かって春に完成した。
「あなた。領民達に私達がなんて言われてるか知ってるかしら?」
南側の東屋で、綺羅を抱いた母上が父上に笑いながら、話し掛けている。
「よくは知らんが、大方、鳶が鷹を産んだとでも言っておるのじゃろう。はははっ。」
「惜しいわ。近いけど、もっと凄いのよ。」
「なんじゃ、もったい付けずに、教えてくれても良かろう。」
「あのね、猛虎と孔雀が麒麟を産んだのですって。くすっ。」
「なんじゃそりゃ、褒め過ぎじゃわい。」
「そうなのよそれでね。『綺羅』のことは、智慧、長寿、富を与えてくれる『弁天様』の生まれ変りに違いないのですって。」
「やれやれ、疾風のせいで、儂らまで祭り上げられてしまうわい。」
「領民達からしたら、疾風は救いの神にも等しいのでしょうね。
暮らしが豊かになって、今の伊賀は争いもなく、堺の次くらいに活気に溢れてるって、商人達も言っているわ。」
「うむ、百地殿も言っとる。おかげで、領民の衣食住ばかりか、鉄砲などの高価な武具の調達も容易になったとな。
しかし、伊賀の平穏もいつまで続くかわからん。織田と今川、浅井と六角が戦になるじゃろうし、それに北畠は裕福になった伊賀を狙っておる。」
そして今、秋の収穫後まもなく北畠具教が兵を起こし、伊賀攻めを開始した。その数は8,000余、大将は具教自らが出陣してきた。
一方伊賀では、早くから情報を得ており、刈り入れ作業も、長柄鍬や千歯こきを使い、男衆も戦さ働きに出ていないので、藤林砦の敷地内の収穫を後回しにし、総力で刈り入れを行い、わずか4日で終わらせた。
また、戦力は伊賀の5つの砦に集約し女衆と子らは、藤林砦に匿われた。
別館で、伊賀全家の当主が集まった軍議の場が開かれた。
「北畠家の軍勢はおよそ8千。畠山や織田の備えに5千ほどを領内に残したようです。」
「半蔵殿、すると北畠具教の居城、多気城にはどのくらいの兵がいるのでしょうか。」
「御曹司。多気城には、およそ2,000の兵がいるものと思われますな。」
「とりあえず、籠城戦じゃな。小さな砦では護り切れぬ。斥候程度を留め兵を集約しよう。」
「百地殿、百地砦から鉄砲隊を100人お借りしたいのですが。」
「構わぬが、途中での奇襲は、難儀じゃぞ。
おそらく、本陣の敵の構えは、相当厚いと見ねばならぬ。」
「いえ本陣には向かいません。多気城を落とします。
藤林砦の投擲部隊50人と護衛の鉄砲隊50人、百地砦の鉄砲隊100人で奇襲部隊を編成し、北畠具教の居城、多気城(霧山御所)に火薬と油で火を放って丸焼けにします。」
「多気城が焼かれたら、北畠具教も伊賀攻めに構っておれんか。」
「引き返すでしょうな。本拠の多気城を荒らされては、面目が立ちませぬからな。」
「御曹司には、策がお有りなのですな。だだ籠城するだけでは、伊賀の田畑が荒らされるばかりで面白くありませぬなぁ。
伊賀者一同、麒麟児と謂われる 御曹司のお手並みを拝見致しましょうぞ。」
( はあ、戦法たって城攻めだしなぁ。隙を突いての夜討ち朝駆けしかないぞ。
まあ、放火して逃げて来るだけだな。)
【 弁天(弁財天)様 】
神仏習合で、ヒンドゥー教の女神『サラスヴァティー』が仏教に取り込まれた呼び名らしい。
その後、明治の神仏分離以降は多数が宗像三女神又は市杵嶋姫命を、少数は瀬織津姫を弁才天として祭っいる。
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