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27.へたれの失態(フィオレside)
しおりを挟む「っ、あ、ば…、あおばっ!!!」
「冬斗!よかった…。いま蒼葉呼んでくるから、待ってて」
ガチャ
「!?冬斗兄ちゃん!!」
やっと起きたかと思えば、第一声に蒼葉の名前を叫んだので、すぐに呼びに行こうとするとタイミング良く蒼葉が入ってきた。ちょうど様子を見に来たようだ。
「蒼葉ごめんな~!びっくりしただろ」
「うん~っ、ふゆっとにぃぢゃんがいなぐなるがと、ひっく、思っだ~っ。」
抱き合いながら号泣している姿を見ると、2人とも随分無理をしていたんだろうと思う。
「ねぇ冬斗」
「なんだ」
「僕と手を組まない?」
「…は?」
「…え?」
「いや、なんでフィオも驚いてんだよ」
…やってしまった。
ほんとはもっとかしこまって、ちゃんとした場を設けて聞く予定だったのに。僕もこの宮殿を出るから一緒に暮らしてくれないか、お母様達の悪事の証拠を集めたいから手を貸して欲しいと。
なのになぜか、泣いている2人をみたら急に言葉が口から飛び出してしまった。ほんとに無意識に。それに今はあまりにもタイミングが悪すぎる…。
自分で言ったのに動揺して頭がまわらない。どうしよう…
「おい。意識飛ばすな。戻って来て説明しろ」
「その。あの、えっと…。僕も宮殿を出るから一緒に暮らして欲しい。あと色々と手を貸して欲しいことがあるんだ。もちろん僕も2人のやってることに協力する。僕が一方的に協力する訳じゃないから、手を組んで欲しいというお願いというか…」
自分でも何を言ってるか分からないけれど、きっと伝わっているはず。それに今なら少しは信頼が得られていると思うから、一緒に暮らすのはダメでも、一緒にいることくらいは許してくれるかもしれない…
「いや無理だ。」
「な、なんで??僕のこと信用できない?やっぱり1ヶ月もちゃんと話してないから??」
「いや、もうフィオのことは信用してるよ。…でも俺フィオとカメリアが話してるの聞いたんだ。俺たちが一緒にいたら良くないってやつ。盗み聞きみたいなことしてごめん。」
「もしかして急に宮殿から出たのは、それを聞いたから…?」
「、、そうだ。」
少し目線をさげ、申し訳なさそうにしている冬斗がいつもの倍、可愛く見えて仕方ない。信用してるという言葉はこんなにも嬉しい物なんだ。それに出ていったのは僕のため…?
「っ!僕のこと心配してくれたんだ!ありがとう!!でも大丈夫、なんの問題もないんだよ!」
「うおっ!抱きつくな!!」
「フィオお兄ちゃん苦しい!!」
「ご、ごめんね」
了承も得られていないのに、蒼葉ごと冬斗を抱き締めてしまった。あの会話を聞かれていたのは予想外だったが、冬斗が少しでも僕のことを考えてくれていたことが嬉しくて堪らない。
あとは2人の返事にかかっている。こんな時に言うつもりはなかったけど、言ってしまったからには少し強引にでもいい返事を引き出したいな…
信用していると言われたら、少しでも近くにいたいと欲が出てきてしまう。
どうかこの無意識の失態がいい方に転びますように。
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