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第1部

*秘密のお姫様抱っこ

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地域資料室から実習棟へ続く渡り廊下を歩いていると人の声が遠く離れ、閑散と静まり返っていく。
その中を沢海は宮原の身体を軽々と横向きに抱え、足早に歩いていく。

以前、部活での居残り練習の時にマーカー役の宮原のポジショニングの修正をしようと指示を出した事があった。

沢海の指示に対して宮原は理解が出来ず、そのままプレイの続行をした挙句、ファウル寸前の危険行為を繰り返した為に沢海はゲームを強制的に中断させた。
宮原は自分が目指す理想と現実の差異にあからさまに苛立ち、同時に自身のプレイに対して違和感を覚えているにも関わらず、身勝手なプレイをする事で正当化させようとしていた。
あまりにも稚拙な考え方にこの現状を続行させられない理由も明確であり、沢海は半ば無理矢理、宮原を通称「お姫様抱っこ」をしてポジションチェンジをさせる。
当然、宮原も目の前の最悪な結果に納得している筈なのだが余計なプライドが邪魔をしてしまい、無駄に大声を出し、沢海の髪を引っ張り、腹部を蹴り上げていた。

無益な喧嘩だと周囲は唖然とするが、この2人にはサッカーに関して絶対に妥協出来ないラインがあり、居残り練習とはいえ徹底的に意見を論議しなければならなかった。
お互いに交わらない平行線だけの主張に善後策を講じられる筈もなく、沢海は仕方なく「お姫様抱っこ」を強行したのだ。

トップチームとサブチームの大きな相違点として、得失点に直結する攻守の切り替え、パスやドリブルのスピード、ボールの位置とポジショニング等があり、それら全てが常に流動的に変化し、僅か数秒の時間で瞬時に対応出来るかどうかでチームの所属が決定されてしまう。
視線を巡らせてボールの軌道と人の動きを読み、一歩先のプレイの予測と展開を見極め、ピッチ上を制圧する。
それは宮原にとって日々のトレーニング内容から無意識にフラストレーションの蓄積を感じる程、プレイ内容に表れていた。

宮原の類稀な感性はトップチームと比較しても同レベル以上でもあり、サブチーム全体の未完成な戦術とプレイ内容の画一性の低さに歯痒さを覚えていた。

宮原自身が気が付く事もなく、定まらない視覚情報によって強点でもある広い視野を故意に狭めてしまい、身勝手なワンプレイの軽さを引き起こしてしまう。
宮原は自分のプレイとゲームの全体の組立を理解していないが故にサブチームで1人だけ浮いている存在となり、チームの統率を瓦解する存在になっている事に気付けていないのだ。

そして、個人プレイを重視する内実を伴わないプレイスタイルを続ける事はチーム全体のバランスを失い、周囲との連携に誤差を生み、失点を重ねてしまう事にもなる。

サブチームとして十分なレベルに達せず、チーム編成の未熟さが悪い訳ではない。
尚且つ、沢海はトップチームの高みから宮原の在籍するサブチームを卑下している訳でもない。

沢海はトップチームではなくサブチームが作り出す自由度の高いプレイを、様々な角度から見える選択肢の広がりを理解してもらいたかった。

結果的に沢海は宮原のポジション、宮原のプレイを軸にサブチームへの全体的なコーチングにまで口を出してしまい、ゲームを中断させてしまう。

同時に直感の鋭いサブメンバーは何故自分達ではなく、宮原1人だけなのか?と気が付く。
だが、特定の個人だけに対する依怙贔屓なのだと声を上げようとするならば、沢海の虫螻を見るような睥睨を浴び、結局何も言えなくなってしまう。
そして、またピッチ上で沢海はポジションチェンジという名目で宮原を「お姫様抱っこ」で修正をするのだ。

沢海の白々しい独占欲は傲慢に満ち溢れ、その態とらしい行動にキャプテンでもある藤本は半ば呆れ、喚起を促すが、沢海のポジショニングの修正は的確でもあり、結局は藤本は目視するだけになってしまった。

当然、サブチームを好転させる指示はトップチームのボランチでもある藤本のプレイの切り替えの的確な素早さと正確さを求められ、二転三転させてしまい、沢海自身を含めて対応に手一杯になってしまう。
その後ろで沢海は第三者的視点で動静を探る厄介な存在になり、2つのチームが混乱するゲーム内容を楽しんでいる。

宮原は何度も「お姫様抱っこ」で沢海に抱えられ、好い加減に本人が本気で怒り出すと、「言葉で説明をしても全く理解出来ていないから、感覚で覚えろ」と沢海は威丈高に御教授される。
そして、多数ある選択肢の中から宮原は最善のプレイをゲーム上に展開させ、広い視野と冷静な判断力で更にプレイが精査されていく。

沢海のコーチングが「お姫様抱っこ」というやり方に宮原は異を唱えるが、的確があるが故に段々と口を噤んでしまう。
2人の間では曰く付きとなってしまった「お姫様抱っこ」はポジショニングの修正という大義名分が立ち、それはチーム間でも暗黙の了解となってしまった。

そして、今は沢海の腕の中であどけない表情を浮かべ、すうすうと寝息を立てている宮原の身体を思う存分に抱き寄せ、優しい人肌の温もりを感じている。
愛おしさに溢れ、沢海はポカンと口を開けて眠る唇に、泣き疲れた目蓋に軽く口付けをし、うっすらと上気する顔に頬ずりをする。
少し長めの前髪を沢海は鼻先で掻き分けると頬から耳朶、耳朶から首筋へと舌と唇を這わせ、また新しいキスマークを散らしていく。

「可愛いなぁ…
ずっと、こうやって、抱っこしていたいなぁ…
ーーーって……
……あ……ヤバイ……
また跡、付けちゃった…
・・・怒られる……けど、ま、いっか」

『自分勝手なご都合主義だな』と沢海は笑いながら校舎の廊下を突き当たりまで歩く。
サッカー部の部室の近道へ続く出入り口の扉を開け、屋外へ出ると沢海は念の為に周囲を見回してから再度、歩を進めた。

部室前に到着するとキャプテンの藤本からも了承を得て持ち歩いている部室の鍵を開け、室内へ入る。

沢海は宮原を一度抱え直すと真っ直ぐにシャワー室へ向かい、壁に背を凭れ掛けさせて床に座らせた。

流石に2人の制服を汚す小便と精液の臭気を誤魔化せる筈もなく、沢海は羽織っただけのワイシャツを脱ぎ捨てると下着も下ろし、全裸になる。
そして、未だに重い目蓋を上げない宮原の制服のボタンを外し、ゆっくりと脱がすとお互いの肌を晒した。

沢海は汚れた衣服を集めると部室に設置してある洗濯乾燥機に乱雑に突っ込み、シャワー室へと戻る。

視線を上げるとシャワー室のタイルの床の上で宮原の身体が崩れ、室内に差し込む日中の眩しい陽光が裸体の曲線を滑らせていく。
静謐なひとときを描く時間は一瞬でさえも長く感じられ、沢海は口元に笑みを浮かべながら宮原の上肢を優しく抱き上げた。

濡羽のような黒髪が宮原の頬を流れ、愛おしく前髪を梳くと閉じられたままの目蓋に口付けを落とし、そして唇を重ねる。
僅かに開いた隙間から舌を入れると緩く絡め、その柔らかい感触と甘い蜜を味わい、角度を変えて食んでいく。

宮原の呼吸の温かさを唇に感じながら深く、浅く口付けを繰り返し、力の入らない身体を胸の中に抱いた。

「身体、洗うね?」

沢海は意識を失ったままの宮原の小さな尻を鷲掴み、簡単に持ち上げると自らの太腿の上に横向きに座らせる。
部室のシャワー室にも沢海が勝手に置いているシュワルツコフのボディソープを手のひらに取り、軽く泡立て、宮原の首筋から鎖骨へ塗り広げる。

身体を覆う薄い筋肉に沿って全身を洗い始めると沢海の指先が乳首に触れ、宮原の肩がピクリと反応を示す。
真っ白な泡の中で薄桃色の乳頭が健気に痼り、乳暈を摘みながら指先でコリコリと擦る。
時折、ツンと尖り立つ先端を爪で弾き、悪戯を繰り返す。

「小ちゃい乳首。
ーーー悠?
おっぱい、舐めてほしい?
吸ってほしい?
噛んでほしい?
ーーーでも、ゴメンね…
今は身体だけ、洗わせてね」

もう一度、ボディソープを手に取ると鼠蹊部に滑らせ太腿を広げる。
弛緩する膝を立たせ、M字に足を開脚させると下腹の柔らかい肌を撫で、陰毛を掻く。
未発達な少なめの毛で遊び、その箇所でボディソープを泡立てると小さく縮こまるペニスを手の中で揉む。
僅かに芯の残る陰茎を根本から扱き、亀頭まで隠していた包皮を剥き下ろし、勃起を促す。

宮原は無意識に痙攣する太腿を閉じようとするが、沢海に肘を入れて押さえられ、与えられる自慰を受け入れるしかない。

ローションのように滑らせながら強弱を付け、遅速を付けながら扱かれ、沢海の手を引き剥がそうと爪を立てる。
だが、宮原の手は軽く往なされ、強引にだらりと垂れ下がる陰嚢にも触れられる。
2つの睾丸を手の中で転がすように揉まれ、緩く反応する陰茎を扱かれ、不自然に開いた口から高い喘ぎ声が漏れていく。

「…は、ぁ……あぁ…ぁ、ん……
や、ぁ……あぁぁ……」

深い眠りに誘われ、覚醒の兆候を見せない身体は直接的な愛撫を感じ、快感に蕩ける剥き出しの嬌声を奏でる。
沢海の骨張った手筒の中で陰茎を扱かれ、捲れる包皮から雁首を引っ張り出され、尿道口の切れ込みを潰されながら穴を拡げられる。

乱暴な前戯に宮原は眉間に皺を寄せ、沢海の膝の上で身体を捩り、抵抗を示すが直ぐに押さえ付けられてしまう。
そして、柔らかく解されたアヌスに触れると宮原は両肩を竦め、顎を上げ、小刻みに震え出す。

指先で数回、腫れたアヌスの肉を掻くと僅かな隙間から精液が垂れ、その潤滑に遊び、根元までぬるりと挿入をしてしまう。
動作を静止をしたまま様子を見ると精液が雨垂れのようにポタポタと流れ、どれだけ多量に注いでしまったのか、止まらない状態に沢海は苦笑いしてしまう。

「ーーーどうする?
オレの精液、入れたままにして部活に出てみる?
ボールを蹴る度に、全力で走る度にオレの精液をここから、垂らして…
段々とお尻が濡れてくるハーフパンツを押さえて…
顔、真っ赤にして、練習中にオレの事、可愛く睨み付けてきて…
ーーー想像するだけで、ドキドキしちゃうね」

沢海は2本の指を揃え、畝る直腸の襞に沿って入れるとドロリとした精液の塊が更に掻き出される。
柔らかい媚肉の蠢きを感じながら襞を掻き分け、前立腺の膨らみを直腸の内側から押すと僅かな精液が再び、とろりと漏れていく。

それと同時にアヌスが収斂しながら沢海の指を咥え込み、物欲しげに締め付けられ、僅かな律動さえも許してくれなくなる。

生理的な射精反応だとしても宮原にとって下肢にこびり付く重怠い感覚が残ってしまい、無意識に身体を強張らせてしまう。

「ーーー悠のケツマ●コ…
処女みたいにキツイね。
オレの指も喰われちゃいそう…
…オレのチンポの太さまで、広げてみてもいい?」

返答がないと分かっていても宮原の耳元で囁く言葉は甘い狂気を孕ませ、沢海は熱い吐息と共に耳朶を喰む。
産毛が逆立つような、ざわりとした感触に宮原は背中を緊張させると噛み締めた唇を緩く開き、甲高い声を上げていく。
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