上 下
51 / 140
第1部

絶対的な自信

しおりを挟む
トレーニングゲームの結果。

1セット目 3-0
2セット目 2-0
3セット目 2-1

途中、トップチームとサブチームは選手交代でメンバーを入れ替え、辛うじてサブチームはトップチームから1点を返す事が出来た。

その1点は1、2セットでセンターバックに入っていた沢海が3セット目で抜け、ベンチ入りしていたメンバーが入り、試合後半のラストプレイでのファウルをしてしまった事が要因だった。

ペナルティエリアの直ぐ側でゴールマウスから左斜め45度の位置でのフリーキックが与えられる。

キッカーは3試合全てに出場していた宮原が蹴る事になり、セットポジションからすると宮原の得意の角度だという好条件が重なった。
この角度からのフリーキックを決める絶対的な自信が宮原にはあった。

全員が身長180cm以上を超える高い壁が3枚、宮原の前に立ちはだかる。

グラウンダーのボールで、蹴った瞬間にジャンプをすると想定をして壁の下を潜らせる事も考えたが、あえて宮原はボールひとつ分くらいもないようなゴール右隅の僅かなスペースに蹴り込む事を選択する。

相手ゴールキーパーはトップチームでもある3年生の大塚だ。

大塚は自分の位置から中央から右側のコースに壁を3枚立たせると、宮原のゴール前の視界を消し、壁の左右と上のスペースを狭める。

大塚本人は中央から左側のコースにポジションを取り、ゴールポストとの距離を確認すると壁の位置の微調整をする。

主審がピッと笛を吹き、ゲームが再スタートする。

宮原は大きく息を吐き出すとボールから真横に4歩下がり、シュートモーションに入る。

ボールの手前で左足を斜めに踏み込むと腰と股関節を捻り、ボールをスパイクの側面で掬い上げるように押し出す。

大塚からすると選択肢のないコースを狙われたにも関わらず、宮原のフリーキックは流線形の弧を描き、ゴールマウスの右側にある僅かの隙間を突き刺さった。

壁の側面を避けるように曲がり、強く、速いボールは大塚の左指をギリギリに掠め、ゴールポストとクロスバーの隅を抜け、サイドネットに吸い込まれる。

大塚も宮原のフリーキックのコースを読んでいたが、自分の指先を掠めてゴールを許してしまい、ピッチを叩いて悔しがる。

「あーーー!…クソッ!
ボールに触れたのに押し出せなかった!
宮原!狙ったな!」

宮原はボールを蹴り込んだ瞬間にゴールに吸い込まれる軌道が見え、自分のイメージ通りのフリーキックに小さくガッツポーズをする。

宮原はゴールした直後だけ笑顔を作ると直ぐにまた厳しい表情をし、大塚のいるゴールマウスに走っていく。

ゴールマウス内に転がるボールを大塚が拾いにいくより早く、宮原はそのボールを奪い、センターサークルに置き、ゲームのリスタートをアピールする。

1分、1秒の時間がある限りは反撃をしようとする宮原の懸命なプレイにサブチーム全員が『もう1点返すぞ!』『まだ試合は終わっていないぞ!』と指揮が上がる。

宮原はサブチーム全体の一体感に更に気を昂らせた。

だが、試合内容と試合結果は伴わず、3試合トータルで、7-1というスコアにトップチームとサブチームの差を改めて考えさせられ、宮原は深い溜息を吐いた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アダルトショップでオナホになった俺

ミヒロ
BL
初めて同士の長年の交際をしていた彼氏と喧嘩別れした弘樹。 覚えてしまった快楽に負け、彼女へのプレゼントというていで、と自分を慰める為にアダルトショップに行ったものの。 バイブやローションの品定めしていた弘樹自身が客や後には店員にオナホになる話し。 ※表紙イラスト as-AIart- 様(素敵なイラストありがとうございます!)

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

少年ペット契約

眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。 ↑上記作品を知らなくても読めます。  小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。  趣味は布団でゴロゴロする事。  ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。  文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。  文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。  文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。  三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。  文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。 ※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。 ※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

笑って誤魔化してるうちに溜め込んでしまう人

こじらせた処女
BL
颯(はやて)(27)×榊(さかき)(24) おねしょが治らない榊の余裕が無くなっていく話。

モルモットの生活

麒麟
BL
ある施設でモルモットとして飼われている僕。 日々あらゆる実験が行われている僕の生活の話です。 痛い実験から気持ち良くなる実験、いろんな実験をしています。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

処理中です...