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第1部
誰の代わりでもない
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宮原がネキシオロジーテープと戯れている間、沢海は残りのキッチンの片付けを終わらせ、ベットルームの皺だらけのシーツとカバーを取り外し、洗濯乾燥機の中に入れる。
シーツをクローゼットから取り出し、ベットの上に大きく広げる。
毎朝のルーティーンのひとつなのに、何故か今日は
ぼんやりと余計な事を考えてしまう。
ーーーこのベットの上でオレは宮原とセックスをしようとしていたんだ。
ーーーこのベットの上でオレは意識のない宮原の身体に精液をぶちまけてしまったんだ。
ーーーこのベットの上でオレは宮原を自分の『モノ』にしたいって思ったんだ。
数十分前まで、この真っ白なシーツの上に宮原の日に焼けた素肌が横たわっていた。
沢海の指がシーツの上の曲線を撫で、薄い筋肉を纏った身体を描いていた。
何度も触れて、何度も確かめて、そして知った。
ーーー宮原が好きなのだと。
ーーー宮原を愛しているのだと。
ーーー宮原とセックスをしたいのだと。
宮原の求める存在『唯一』になりたいのだと。
ーーー宮原とセックスがしたいーーー
身体だけではなく、心も、宮原の全部が欲しい。
ーーーセックスしたい
ーーー宮原と、したい
それは『男』としての単純で生理的な欲求であるという事ではない。
勃起したペニスから精液が垂れてくるような動物的な本能が求めるまま、不特定なセックスをしたいという直情ではない。
尚且つ、『女』に全く興味がない訳でもない。
過去に何人かの『女』から告白をされ、相手の事を真面目に考え、真摯に付き合い、そしてセックスをした。
『女』の丸みを帯びた柔らかく華奢な身体を大切に守らなければならないのだと、身体を重ねる度に『男』としての責任と自覚を感じていた。
数々の『女』と理不尽な事で喧嘩をし、執拗に口説かれ、勝手に執着され、引き摺られるような哀しい別れ方をしても、下らない後腐れはなかったつもりだ。
ただ、沢海自身の中で容認し難い事が一度だけあった。
それは中学時代に自分の通う塾の講師の『女』だった。
『女』は『私の事が好きなら、それはいらないでしょう?』とベットの中で笑いながら、避妊具の使用を拒絶をした。
『女』は避妊具を取り出し、ペニスに被せようとする自分の手を押し止めると、勝手に自分の上に跨り、勃起したペニスを固定すると上から無理矢理に身体を繋げた。
『ナマは気持ちいいでしょう?』と上目遣いに強請られ、騎乗位で腰を動かされた。
妊娠をしてリスクを負うのは『女』の方にも関わらず、『妊娠したら堕ろせばいい』と簡単に自分の耳元で囁かれた。
『女』はセックスという甘美な棘の痛さを覚えると『女』から『雌』になり、快楽の深みに嵌っていく。
自分も陰嚢に溜まった精子を出す為だけの公衆便所のようなセックス=排泄行為をしていれば良かったのかもしれない。
そこには自分が求めている『愛している』事も『愛されている』事も一切存在しない、意味のないものだ。
自分の頭の中が無機質のように静まり返り、何も考えられなくなる。
『女』に今更『キレイゴト』を求める訳ではないが、自分の中でコールタール状の真っ黒な嫌悪に似た感情が生まれ、自棄に走った。
『女』の胎内を精液で満たし、セックスに溺れ、快楽を味わいたいのであれば、別に自分の身体ではなく、他の誰かの身体でもいいんじゃないか、と。
『女』の性欲は理性の咎を容易く外し、感情を伴わないセックスに耽り、そして、煩わしい、厭わしい感情に触れないように『男』の自分の身体を使って、また更にセックスに逃げる。
『女』の狡くて卑怯なセックスという行為に、自分は惹かれる事はなかった。
自分の気持ちがその人を大切に愛し、その人から大切に愛され、お互いがお互いを求めるセックスという、言葉のいらない行為ではない。
所詮、自分との関係は身体しか必要なかったのだと改めて痛切に感じ、『好き』という『愛している』という大切な気持ちが萎えてしまった。
それから、『女』との関係を全て拒否した。
『人』が嫌いな訳ではない。
ただ、『人』を好きでいたいーーー自分を好きになって。
ただ、『人』を愛したいーーー自分を愛して。
自分しかいないのだと、自分しかいらないのだと、自分の『愛している』人から全てを求められたい。そして、自分の『愛している』人を求めていたい。
盲目的な程の束縛の強さが自分にはある事を知っているからこそ、自分が『愛されている』と強く感じたい。
この肌の体温を、この汗の匂いを、この熱い吐息を、全てを奪いたい。
想いの激しさが自分の中に燻るように潜んでいるからこそ、全てを受け入れ、全てを受け止めてもらいたい。
自分勝手な我儘なのかもしれない。
不完全でも、不器用でも、自分が相手を愛するように、相手にも自分を愛してもらいたい。
ーーー大切にしたい。
ーーー大事にしたい。
乾いてしまった『心』を満たしてくれる、そんな大切で大事な人を求めている。
それが、今、自分にとっての存在がーーー宮原なのだと。
宮原が少しでも自分の事を考えてくれるのなら、自分の全てを持って宮原を守りたい、宮原を大切にしたいと思う。
だからこそ、宮原を取り巻く今現在の不穏な状態を取り除いてあげる事で、宮原の本当の笑顔が見れるのなら、どんな代償でも払える覚悟もある。
宮原の笑顔の翳りの一切をなくしてあげたい。
宮原の本当の笑顔が見たい。
そして、追い求めて、追い求め続けて、やっと手に入れた宮原を決して離さないように、決して壊さないようにーーー自分だけの大切な存在として絶対に傷付けたりはしない。
「ーーー宮原…」
ボクサーパンツの中のペニスが頭を擡げる。
宮原の中に入りたいと、入れたいと、亀頭から体液が零れ、布地を湿らしていく。
沢海はそっと溜息を吐いた。
シーツをクローゼットから取り出し、ベットの上に大きく広げる。
毎朝のルーティーンのひとつなのに、何故か今日は
ぼんやりと余計な事を考えてしまう。
ーーーこのベットの上でオレは宮原とセックスをしようとしていたんだ。
ーーーこのベットの上でオレは意識のない宮原の身体に精液をぶちまけてしまったんだ。
ーーーこのベットの上でオレは宮原を自分の『モノ』にしたいって思ったんだ。
数十分前まで、この真っ白なシーツの上に宮原の日に焼けた素肌が横たわっていた。
沢海の指がシーツの上の曲線を撫で、薄い筋肉を纏った身体を描いていた。
何度も触れて、何度も確かめて、そして知った。
ーーー宮原が好きなのだと。
ーーー宮原を愛しているのだと。
ーーー宮原とセックスをしたいのだと。
宮原の求める存在『唯一』になりたいのだと。
ーーー宮原とセックスがしたいーーー
身体だけではなく、心も、宮原の全部が欲しい。
ーーーセックスしたい
ーーー宮原と、したい
それは『男』としての単純で生理的な欲求であるという事ではない。
勃起したペニスから精液が垂れてくるような動物的な本能が求めるまま、不特定なセックスをしたいという直情ではない。
尚且つ、『女』に全く興味がない訳でもない。
過去に何人かの『女』から告白をされ、相手の事を真面目に考え、真摯に付き合い、そしてセックスをした。
『女』の丸みを帯びた柔らかく華奢な身体を大切に守らなければならないのだと、身体を重ねる度に『男』としての責任と自覚を感じていた。
数々の『女』と理不尽な事で喧嘩をし、執拗に口説かれ、勝手に執着され、引き摺られるような哀しい別れ方をしても、下らない後腐れはなかったつもりだ。
ただ、沢海自身の中で容認し難い事が一度だけあった。
それは中学時代に自分の通う塾の講師の『女』だった。
『女』は『私の事が好きなら、それはいらないでしょう?』とベットの中で笑いながら、避妊具の使用を拒絶をした。
『女』は避妊具を取り出し、ペニスに被せようとする自分の手を押し止めると、勝手に自分の上に跨り、勃起したペニスを固定すると上から無理矢理に身体を繋げた。
『ナマは気持ちいいでしょう?』と上目遣いに強請られ、騎乗位で腰を動かされた。
妊娠をしてリスクを負うのは『女』の方にも関わらず、『妊娠したら堕ろせばいい』と簡単に自分の耳元で囁かれた。
『女』はセックスという甘美な棘の痛さを覚えると『女』から『雌』になり、快楽の深みに嵌っていく。
自分も陰嚢に溜まった精子を出す為だけの公衆便所のようなセックス=排泄行為をしていれば良かったのかもしれない。
そこには自分が求めている『愛している』事も『愛されている』事も一切存在しない、意味のないものだ。
自分の頭の中が無機質のように静まり返り、何も考えられなくなる。
『女』に今更『キレイゴト』を求める訳ではないが、自分の中でコールタール状の真っ黒な嫌悪に似た感情が生まれ、自棄に走った。
『女』の胎内を精液で満たし、セックスに溺れ、快楽を味わいたいのであれば、別に自分の身体ではなく、他の誰かの身体でもいいんじゃないか、と。
『女』の性欲は理性の咎を容易く外し、感情を伴わないセックスに耽り、そして、煩わしい、厭わしい感情に触れないように『男』の自分の身体を使って、また更にセックスに逃げる。
『女』の狡くて卑怯なセックスという行為に、自分は惹かれる事はなかった。
自分の気持ちがその人を大切に愛し、その人から大切に愛され、お互いがお互いを求めるセックスという、言葉のいらない行為ではない。
所詮、自分との関係は身体しか必要なかったのだと改めて痛切に感じ、『好き』という『愛している』という大切な気持ちが萎えてしまった。
それから、『女』との関係を全て拒否した。
『人』が嫌いな訳ではない。
ただ、『人』を好きでいたいーーー自分を好きになって。
ただ、『人』を愛したいーーー自分を愛して。
自分しかいないのだと、自分しかいらないのだと、自分の『愛している』人から全てを求められたい。そして、自分の『愛している』人を求めていたい。
盲目的な程の束縛の強さが自分にはある事を知っているからこそ、自分が『愛されている』と強く感じたい。
この肌の体温を、この汗の匂いを、この熱い吐息を、全てを奪いたい。
想いの激しさが自分の中に燻るように潜んでいるからこそ、全てを受け入れ、全てを受け止めてもらいたい。
自分勝手な我儘なのかもしれない。
不完全でも、不器用でも、自分が相手を愛するように、相手にも自分を愛してもらいたい。
ーーー大切にしたい。
ーーー大事にしたい。
乾いてしまった『心』を満たしてくれる、そんな大切で大事な人を求めている。
それが、今、自分にとっての存在がーーー宮原なのだと。
宮原が少しでも自分の事を考えてくれるのなら、自分の全てを持って宮原を守りたい、宮原を大切にしたいと思う。
だからこそ、宮原を取り巻く今現在の不穏な状態を取り除いてあげる事で、宮原の本当の笑顔が見れるのなら、どんな代償でも払える覚悟もある。
宮原の笑顔の翳りの一切をなくしてあげたい。
宮原の本当の笑顔が見たい。
そして、追い求めて、追い求め続けて、やっと手に入れた宮原を決して離さないように、決して壊さないようにーーー自分だけの大切な存在として絶対に傷付けたりはしない。
「ーーー宮原…」
ボクサーパンツの中のペニスが頭を擡げる。
宮原の中に入りたいと、入れたいと、亀頭から体液が零れ、布地を湿らしていく。
沢海はそっと溜息を吐いた。
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