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第1部
一緒にいよう
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「今日の朝練からトレーニングゲームするみたいだから、しっかり左膝のテーピングしておけよ」
「……はい……」
朝から何度も沢海に揶揄われている宮原は、沢海に対して懐疑的になってしまい、少し距離を取ってしまう。
この状況を確実に面白がっている沢海に宮原は半分諦めながらも、Tシャツに飛び散った洗剤の泡をタオルで拭き、リビングに移動する。
自分のバックの中からネキシオロジーテープとハサミを取り出すと、宮原は2人掛けのソファーに腰掛けた。
先日、沢海から教えてもらった左膝裏のテーピングをしようと、テープの長さを自分の左腿、膝裏、脹脛の長さに調整をして切っている。
そのままソファーに寝転がると横向きに体制を変え、まだ痛みの残る箇所、左足裏の膝窩筋を指で触れる。
「…うん…と、ここを……
ーーーこう、だっけ?」
身体の柔軟性が低い宮原はソファーの上で左に腰を捻り、左足の可動とテーピングの位置を確認する。
テープの位置を合わせる為に前屈をするように手を前方へ伸ばすと下半身の筋肉が硬い為に、どうしても左膝を曲げてしまう。
左膝裏のテーピングは膝を伸ばして貼らなければならない箇所なので、宮原はソファーに埋もれるようにして必死に足を伸ばしていた。
「……うわぁ……
宮原、お前…身体硬過ぎだぞ…」
「ーーー先輩……
今、絶対に!絶対に!!オレの近くに来ないで下さいね!!…」
沢海が宮原の背中に体重を掛けて、押し潰してくる事が簡単に予想出来たので、予め予防線を張っておく。
出鼻を挫かれた沢海はカウンターテーブル越しに目を顰めているだけで何の行動は起こさなかったが、その分、口を開いた。
「宮原の膝の怪我も元はといえば身体の柔軟性がないのが原因なんだぞ。
練習前、練習後に念入りにストレッチをしているのか?
しっかりとケアをしていないと、身体の負担が増してくるぞ」
「…………」
宮原は沢海の質問に答えず、自分の都合が悪くなるとムスッと頬を膨らませ、押し黙ってしまう。
中学校時代とは対比にならない、今現在の練習メニューにはピッチ上でのトレーニング=練習と室内でのミーティング=戦術があり、日頃からの全身のケアが大事だという事は十分に周知している。
これから先には新人戦、総体、選手権と数々の試合が控え、練習試合を含めると週に2試合、3試合のハードスケジュールを組まれる場合がある。
一度ピッチ内に入ってしまえば、自分の身体と対等以上の相手とマッチアップをし、身体を激しくぶつけ、両足首を削られる。
尚且つ、ピッチの何処のポジションに敵と味方が何人いるのかを一瞬で判断し、ゴールへの最善ルートを選択する為に情報を目を見て、その後の展開を考える。
身体に蓄積された疲労を解消をする、集中力と判断力の低下を防ぐなど、それらを全て軽減させていかないと、バランスが均等に取れない身体は怪我を負うリスクを増していく。
だからこそ、自分の身体をケアする為に十分な時間を当てる事が必要不可欠になってくる。
「ーーー宮原…」
下を向いて俯く宮原に沢海は声を掛けると、沢海がカウンターテーブルの上で両肘をついて笑い掛ける。
「今日の朝の練習からストレッチの時はオレとペアでやろう。
オレが徹底的に宮原の身体の柔軟性を上げてやるよ。
藤本にも伝えておくからさ。
ーーーよし、そうしよう!」
「……えっ……」
トップチームとサブチームはフィジカルトレーニングと実践方式のチーム練習以外では内容も異なる事が多く、その為にチームを2つに分けている場合が多い。
トップチームとサブチームの現時点での実力を図り、チーム全体のレベルアップを目指す為にサーバーを用いて、ポジション別での攻守の切り替えなどをする事はある。
だが、基本的にはトップチームは固定されたメンバーだけで実戦方式のチーム練習を集中させ、サブチームは技術、スピード、フィジカルを重点的に『個人の質』を引き上げる練習内容の方が多い。
それらを全て踏まえた上で、沢海は自分勝手な対策を『良い解決方法だ!』と言わんばかりに1人で納得をしている。
宮原は苦虫を噛み潰したかのような不細工な顔をして返事もしない。
「…なんだよ。
文句あんのかよ」
「ーーー宜しく……お願いしま…す……」
宮原を眼光鋭く睨み付ける沢海に逆らえる訳もなく、静かに項垂れるのであった。
「……はい……」
朝から何度も沢海に揶揄われている宮原は、沢海に対して懐疑的になってしまい、少し距離を取ってしまう。
この状況を確実に面白がっている沢海に宮原は半分諦めながらも、Tシャツに飛び散った洗剤の泡をタオルで拭き、リビングに移動する。
自分のバックの中からネキシオロジーテープとハサミを取り出すと、宮原は2人掛けのソファーに腰掛けた。
先日、沢海から教えてもらった左膝裏のテーピングをしようと、テープの長さを自分の左腿、膝裏、脹脛の長さに調整をして切っている。
そのままソファーに寝転がると横向きに体制を変え、まだ痛みの残る箇所、左足裏の膝窩筋を指で触れる。
「…うん…と、ここを……
ーーーこう、だっけ?」
身体の柔軟性が低い宮原はソファーの上で左に腰を捻り、左足の可動とテーピングの位置を確認する。
テープの位置を合わせる為に前屈をするように手を前方へ伸ばすと下半身の筋肉が硬い為に、どうしても左膝を曲げてしまう。
左膝裏のテーピングは膝を伸ばして貼らなければならない箇所なので、宮原はソファーに埋もれるようにして必死に足を伸ばしていた。
「……うわぁ……
宮原、お前…身体硬過ぎだぞ…」
「ーーー先輩……
今、絶対に!絶対に!!オレの近くに来ないで下さいね!!…」
沢海が宮原の背中に体重を掛けて、押し潰してくる事が簡単に予想出来たので、予め予防線を張っておく。
出鼻を挫かれた沢海はカウンターテーブル越しに目を顰めているだけで何の行動は起こさなかったが、その分、口を開いた。
「宮原の膝の怪我も元はといえば身体の柔軟性がないのが原因なんだぞ。
練習前、練習後に念入りにストレッチをしているのか?
しっかりとケアをしていないと、身体の負担が増してくるぞ」
「…………」
宮原は沢海の質問に答えず、自分の都合が悪くなるとムスッと頬を膨らませ、押し黙ってしまう。
中学校時代とは対比にならない、今現在の練習メニューにはピッチ上でのトレーニング=練習と室内でのミーティング=戦術があり、日頃からの全身のケアが大事だという事は十分に周知している。
これから先には新人戦、総体、選手権と数々の試合が控え、練習試合を含めると週に2試合、3試合のハードスケジュールを組まれる場合がある。
一度ピッチ内に入ってしまえば、自分の身体と対等以上の相手とマッチアップをし、身体を激しくぶつけ、両足首を削られる。
尚且つ、ピッチの何処のポジションに敵と味方が何人いるのかを一瞬で判断し、ゴールへの最善ルートを選択する為に情報を目を見て、その後の展開を考える。
身体に蓄積された疲労を解消をする、集中力と判断力の低下を防ぐなど、それらを全て軽減させていかないと、バランスが均等に取れない身体は怪我を負うリスクを増していく。
だからこそ、自分の身体をケアする為に十分な時間を当てる事が必要不可欠になってくる。
「ーーー宮原…」
下を向いて俯く宮原に沢海は声を掛けると、沢海がカウンターテーブルの上で両肘をついて笑い掛ける。
「今日の朝の練習からストレッチの時はオレとペアでやろう。
オレが徹底的に宮原の身体の柔軟性を上げてやるよ。
藤本にも伝えておくからさ。
ーーーよし、そうしよう!」
「……えっ……」
トップチームとサブチームはフィジカルトレーニングと実践方式のチーム練習以外では内容も異なる事が多く、その為にチームを2つに分けている場合が多い。
トップチームとサブチームの現時点での実力を図り、チーム全体のレベルアップを目指す為にサーバーを用いて、ポジション別での攻守の切り替えなどをする事はある。
だが、基本的にはトップチームは固定されたメンバーだけで実戦方式のチーム練習を集中させ、サブチームは技術、スピード、フィジカルを重点的に『個人の質』を引き上げる練習内容の方が多い。
それらを全て踏まえた上で、沢海は自分勝手な対策を『良い解決方法だ!』と言わんばかりに1人で納得をしている。
宮原は苦虫を噛み潰したかのような不細工な顔をして返事もしない。
「…なんだよ。
文句あんのかよ」
「ーーー宜しく……お願いしま…す……」
宮原を眼光鋭く睨み付ける沢海に逆らえる訳もなく、静かに項垂れるのであった。
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