50 / 143
第1部
トレーニング開始!
しおりを挟む
宮原はインソールを合わせてモリレアのスパイクを履くと靴紐を結び、踵の位置を合わせ、スタッドと天然芝の吸収バランスの確認をする。
しっかりと巻き直した左膝のテーピングの上にアティダスのシンガードを当て、ストッパーで押さえた後、ソックスを引き上げる。
宮原はタッチライン際に立つと一礼をし、右足からピッチ内に入るという習慣化しているルーティーンを行っていく。
「……っしゃ!」
自分自身に気合を入れるようにピッチに踏み入れ、ダッシュとバックステップを繰り返し、心拍数を上げていく。
タッチラインに転がっているボールを踵で引き寄せるとリフトアップで持ち上げ、数回リフティングを行うと宮原は味方のキーパーとフォワード向かって手を挙げる。
「クロス、上げてみてもいい?」
試合前のコーチとの至近距離でのキャッチング練習とラダーを使ってのステップを終えた味方のキーパーは、再度グローブのマジックテープを締め直し、グッと腰を落とす。
「いいよ!
打ってこいよ!」
宮原はドリブルでサイドラインをトップスピードで駆け上がりながら、バイタルエリア内にいるフォワードの位置を確認すると、キーパーとディフェンダーのギリギリのラインを想定し、クロスを上げる。
フォワードはゴール前に走り込んでくる絶妙のタイミングでボールを押し込むだけのゴールを奪う。
「ナイッシュー!
エグい場所に合わせるねぇ。
オレの手元に落ちるボール、頂戴よ!」
味方キーパーから指示を受け、宮原がフリーキックを想定したペナルティエリアの外にボールを置く。
宮原はセットポジションに入ると味方キーパーに手を挙げ、シュートモーションに入る。
ボールを振り子のように押し出すような宮原のシュートは無回転のままキーパーの足元で急激に落ち、ブレ球とも呼ばれる軌道を描いていく。
当然、そのボールはゴールに吸い込まれ、自分のイメージ通りのシュートに宮原の笑顔が溢れる。
早朝からのトレーニングゲームで、まだ朝露で濡れているピッチの上はボールがよく走る為にグラウンダーのパスのスピードが増し、バウンドの跳ね返りもスリッピーになっていく。
ピッという笛の音が鳴り、ベンチ前にチーム全員が扇状に一斉に集まる。
佐伯監督がホワイトボードを広げると、トレーニングゲーム前のミーティングが始まる。
「おはよう」
「「おはようございます!」」
「今日から1年の松下がトップチーム入りする事になった。
それに伴って今日は朝1本、午後から2本、トップチームとサブチームのトレーニングゲームを行う。
時間は30分ハーフ。
メンバーを確認するぞ」
佐伯監督はトップチーム、サブチームと共に4-4-2のシステムを組み、トップチームの右フォワードには松下、ボランチには藤本、右センターバックには沢海、キーパーには大塚が入り、サブチームの左サイドハーフには宮原が入った。
トップチームは2、3年生を中心としたレギュラーとなり、サブチームは1、2年生を中心としたメンバーで構成されている。
チームカラーとしてはトップチームは完成された戦術理解と的確なポジショニングを持ち、対照的にサブチームは荒削りでバランスも悪いが、全員守備、全員攻撃で全体をカバーしている。
ゲーム形式のポジションからすると右フォワードの松下と左サイドハーフの宮原はマッチアップをする可能性があり、宮原は一層に気合が入る。
トップチームとの力の差は歴然としているが、トレーニングゲームはサブチームである自分のプレイスタイルを監督にアピールをする事が出来る絶好のチャンスだ。
宮原の今現在のサッカーレベルでは、トップチームの水準には達していないところもある。
だが、自分の持てる精一杯の力で懸命にトップチームのプレイに粘り強く、食らい付ける自信はあった。
「ーーー以上だ。
各ポジションに入ったら、直ぐにゲームを始めるぞ!」
「「はい!」」
全体ミーティングを終えるとポジションに入る者、審判に入る者、ベンチに入る者、ゲーム内容を記録をする者と各自分かれていく。
宮原はサブチームの左サイドハーフの位置に入るとゆっくりと呼吸をしながら首を回し、その場で軽くジャンプを繰り返す。
緊張をして余計な力が入っている身体をリラックスさせ、主審の笛が鳴るのを待つ。
視線を上げると松下が宮原を見詰め、鋭い視線を投げ掛け、これから真っ向勝負に挑む厳しい表情に変えている。
対して宮原も、松下の気迫に負けないようにその視線を受け止め、毅然として睨み返す。
『ーーー絶対に勝ってやる!
狙うはトップチーム!レギュラーの座!』
しっかりと巻き直した左膝のテーピングの上にアティダスのシンガードを当て、ストッパーで押さえた後、ソックスを引き上げる。
宮原はタッチライン際に立つと一礼をし、右足からピッチ内に入るという習慣化しているルーティーンを行っていく。
「……っしゃ!」
自分自身に気合を入れるようにピッチに踏み入れ、ダッシュとバックステップを繰り返し、心拍数を上げていく。
タッチラインに転がっているボールを踵で引き寄せるとリフトアップで持ち上げ、数回リフティングを行うと宮原は味方のキーパーとフォワード向かって手を挙げる。
「クロス、上げてみてもいい?」
試合前のコーチとの至近距離でのキャッチング練習とラダーを使ってのステップを終えた味方のキーパーは、再度グローブのマジックテープを締め直し、グッと腰を落とす。
「いいよ!
打ってこいよ!」
宮原はドリブルでサイドラインをトップスピードで駆け上がりながら、バイタルエリア内にいるフォワードの位置を確認すると、キーパーとディフェンダーのギリギリのラインを想定し、クロスを上げる。
フォワードはゴール前に走り込んでくる絶妙のタイミングでボールを押し込むだけのゴールを奪う。
「ナイッシュー!
エグい場所に合わせるねぇ。
オレの手元に落ちるボール、頂戴よ!」
味方キーパーから指示を受け、宮原がフリーキックを想定したペナルティエリアの外にボールを置く。
宮原はセットポジションに入ると味方キーパーに手を挙げ、シュートモーションに入る。
ボールを振り子のように押し出すような宮原のシュートは無回転のままキーパーの足元で急激に落ち、ブレ球とも呼ばれる軌道を描いていく。
当然、そのボールはゴールに吸い込まれ、自分のイメージ通りのシュートに宮原の笑顔が溢れる。
早朝からのトレーニングゲームで、まだ朝露で濡れているピッチの上はボールがよく走る為にグラウンダーのパスのスピードが増し、バウンドの跳ね返りもスリッピーになっていく。
ピッという笛の音が鳴り、ベンチ前にチーム全員が扇状に一斉に集まる。
佐伯監督がホワイトボードを広げると、トレーニングゲーム前のミーティングが始まる。
「おはよう」
「「おはようございます!」」
「今日から1年の松下がトップチーム入りする事になった。
それに伴って今日は朝1本、午後から2本、トップチームとサブチームのトレーニングゲームを行う。
時間は30分ハーフ。
メンバーを確認するぞ」
佐伯監督はトップチーム、サブチームと共に4-4-2のシステムを組み、トップチームの右フォワードには松下、ボランチには藤本、右センターバックには沢海、キーパーには大塚が入り、サブチームの左サイドハーフには宮原が入った。
トップチームは2、3年生を中心としたレギュラーとなり、サブチームは1、2年生を中心としたメンバーで構成されている。
チームカラーとしてはトップチームは完成された戦術理解と的確なポジショニングを持ち、対照的にサブチームは荒削りでバランスも悪いが、全員守備、全員攻撃で全体をカバーしている。
ゲーム形式のポジションからすると右フォワードの松下と左サイドハーフの宮原はマッチアップをする可能性があり、宮原は一層に気合が入る。
トップチームとの力の差は歴然としているが、トレーニングゲームはサブチームである自分のプレイスタイルを監督にアピールをする事が出来る絶好のチャンスだ。
宮原の今現在のサッカーレベルでは、トップチームの水準には達していないところもある。
だが、自分の持てる精一杯の力で懸命にトップチームのプレイに粘り強く、食らい付ける自信はあった。
「ーーー以上だ。
各ポジションに入ったら、直ぐにゲームを始めるぞ!」
「「はい!」」
全体ミーティングを終えるとポジションに入る者、審判に入る者、ベンチに入る者、ゲーム内容を記録をする者と各自分かれていく。
宮原はサブチームの左サイドハーフの位置に入るとゆっくりと呼吸をしながら首を回し、その場で軽くジャンプを繰り返す。
緊張をして余計な力が入っている身体をリラックスさせ、主審の笛が鳴るのを待つ。
視線を上げると松下が宮原を見詰め、鋭い視線を投げ掛け、これから真っ向勝負に挑む厳しい表情に変えている。
対して宮原も、松下の気迫に負けないようにその視線を受け止め、毅然として睨み返す。
『ーーー絶対に勝ってやる!
狙うはトップチーム!レギュラーの座!』
0
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。


男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる