【R18】君に触れる、全てのものから

すぐる

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第1部

トレーニング開始!

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宮原はインソールを合わせてモリレアのスパイクを履くと靴紐を結び、踵の位置を合わせ、スタッドと天然芝の吸収バランスの確認をする。

しっかりと巻き直した左膝のテーピングの上にアティダスのシンガードを当て、ストッパーで押さえた後、ソックスを引き上げる。

宮原はタッチライン際に立つと一礼をし、右足からピッチ内に入るという習慣化しているルーティーンを行っていく。

「……っしゃ!」

自分自身に気合を入れるようにピッチに踏み入れ、ダッシュとバックステップを繰り返し、心拍数を上げていく。

タッチラインに転がっているボールを踵で引き寄せるとリフトアップで持ち上げ、数回リフティングを行うと宮原は味方のキーパーとフォワード向かって手を挙げる。

「クロス、上げてみてもいい?」

試合前のコーチとの至近距離でのキャッチング練習とラダーを使ってのステップを終えた味方のキーパーは、再度グローブのマジックテープを締め直し、グッと腰を落とす。

「いいよ!
打ってこいよ!」

宮原はドリブルでサイドラインをトップスピードで駆け上がりながら、バイタルエリア内にいるフォワードの位置を確認すると、キーパーとディフェンダーのギリギリのラインを想定し、クロスを上げる。
フォワードはゴール前に走り込んでくる絶妙のタイミングでボールを押し込むだけのゴールを奪う。

「ナイッシュー!
エグい場所に合わせるねぇ。
オレの手元に落ちるボール、頂戴よ!」

味方キーパーから指示を受け、宮原がフリーキックを想定したペナルティエリアの外にボールを置く。

宮原はセットポジションに入ると味方キーパーに手を挙げ、シュートモーションに入る。

ボールを振り子のように押し出すような宮原のシュートは無回転のままキーパーの足元で急激に落ち、ブレ球とも呼ばれる軌道を描いていく。
当然、そのボールはゴールに吸い込まれ、自分のイメージ通りのシュートに宮原の笑顔が溢れる。

早朝からのトレーニングゲームで、まだ朝露で濡れているピッチの上はボールがよく走る為にグラウンダーのパスのスピードが増し、バウンドの跳ね返りもスリッピーになっていく。

ピッという笛の音が鳴り、ベンチ前にチーム全員が扇状に一斉に集まる。

佐伯監督がホワイトボードを広げると、トレーニングゲーム前のミーティングが始まる。

「おはよう」
「「おはようございます!」」

「今日から1年の松下がトップチーム入りする事になった。
それに伴って今日は朝1本、午後から2本、トップチームとサブチームのトレーニングゲームを行う。
時間は30分ハーフ。
メンバーを確認するぞ」

佐伯監督はトップチーム、サブチームと共に4-4-2のシステムを組み、トップチームの右フォワードには松下、ボランチには藤本、右センターバックには沢海、キーパーには大塚が入り、サブチームの左サイドハーフには宮原が入った。

トップチームは2、3年生を中心としたレギュラーとなり、サブチームは1、2年生を中心としたメンバーで構成されている。
チームカラーとしてはトップチームは完成された戦術理解と的確なポジショニングを持ち、対照的にサブチームは荒削りでバランスも悪いが、全員守備、全員攻撃で全体をカバーしている。

ゲーム形式のポジションからすると右フォワードの松下と左サイドハーフの宮原はマッチアップをする可能性があり、宮原は一層に気合が入る。

トップチームとの力の差は歴然としているが、トレーニングゲームはサブチームである自分のプレイスタイルを監督にアピールをする事が出来る絶好のチャンスだ。

宮原の今現在のサッカーレベルでは、トップチームの水準には達していないところもある。
だが、自分の持てる精一杯の力で懸命にトップチームのプレイに粘り強く、食らい付ける自信はあった。

「ーーー以上だ。
各ポジションに入ったら、直ぐにゲームを始めるぞ!」
「「はい!」」

全体ミーティングを終えるとポジションに入る者、審判に入る者、ベンチに入る者、ゲーム内容を記録をする者と各自分かれていく。

宮原はサブチームの左サイドハーフの位置に入るとゆっくりと呼吸をしながら首を回し、その場で軽くジャンプを繰り返す。

緊張をして余計な力が入っている身体をリラックスさせ、主審の笛が鳴るのを待つ。

視線を上げると松下が宮原を見詰め、鋭い視線を投げ掛け、これから真っ向勝負に挑む厳しい表情に変えている。
対して宮原も、松下の気迫に負けないようにその視線を受け止め、毅然として睨み返す。

『ーーー絶対に勝ってやる!
狙うはトップチーム!レギュラーの座!』

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