上 下
5 / 137
第1部

初日で半分

しおりを挟む
トレーニング初日のその後は、新入部員は10km走2本を終わらせて終了となり、その後暫くグラウンドに倒れ込んでいる部員が多数いたが、脱落者は辛うじていなかった。

レギュラー組を含めた2、3年はピッチに集合して監督を含めたミーティング後、サーバーを配置してのハーフコートでのミニゲームをしている。

この程度の走力は基本中の基本で、あって当たり前いう事だ。

ちなみに初日に走力テストに参加出来なかった新入部員が、翌日の朝練での走力テストを受け、途中で音を上げる新入部員が多数いた為に、藤本の厳しい声が飛んでいたらしい。

徹底的に「蒼学サッカーの基本」の基準値を身体に叩き込まれ、入学式から僅か1週間で新入部員は半分以下になっていた。

「ま、こんなもんでしょ」

藤本はiPadをチェックして、新入部員のタイムを確認する。

ベンチに座っている監督ーーー佐伯監督にiPadを手渡し、データを確認してもらう。

「全員集合!」

藤本の整列の声で部員が全員円状に並び、監督の声に耳を傾ける。

「今月に入ってから基礎トレを中心にやってきてはいるが、コンディションが上がっている奴もいれば、下がっている奴もいる。
数値が下がっている奴は例えレギュラーでも落とすし、新入部員の中でもレギュラークラスのタイムを叩き出している奴がいれば、そいつにチャンスを与える。
ーーーーこれから2、3年だけの紅白戦をする。
1年は蒼学のスピード、技術、判断力を目で覚えろ」

「「はい!」」

完全実力主義、与えられるポジションではない、奪うポジションなのだと実感する。
佐伯監督の確固たる信念に宮原は更に気持ちを高めた。

そんな中、藤本が新入部員だけを全員集まるように指示を出す。

「全員でジャンケンして」

多分、新入部員全員が「?」マークになっていたが、取り敢えずは藤本の指示に従ってジャンケンをする。

「ジャンケン!!」

ーーーで、宮原を除いた9名がグー、宮原だけがチョキで1発で決まった。

「お前、ジャンケン弱いなぁ!」と、松下がからかってくる。

「ーーーうっさいなぁ。
藤本先輩、何ですか? コレの意味」

藤本は不貞腐れる宮原に向かってニッコリと笑う。
かなり裏がありそうな藤本の不敵な笑顔に宮原は訝しんだ。

「サッカー部の部室はアレ。
掃除道具はシャワールームに入ってるから。
あと、宜しく」
「はぁ???」

素っ頓狂な宮原の声が響き、周囲から笑いが漏れる。
松下は「じゃあ、頼むわ」と言い右手を上げ、2、3年生の紅白戦が行われるピッチへ足を運ぶ。

「松下。
部室の掃除は1年でローテーションを組んでもらうからな」と、藤本が提言をする。

「マジっすか…」
「明日からの掃除当番の順番。
こっちで用紙貼り出しておくから、日々、午後の練習前に必ず掃除は終わっておく事!」

藤本は一通り説明すると、ビブスを着てピッチに入っていく。
サイドラインに立つと、ピッチに向かって一礼をしてから中に入り、レギュラー組のボランチのポジションに着く。
その後ろ、レギュラー組のセンターバックのポジションに沢海がいる。
沢海は目を瞑ってその場で軽くジャンプし、首を回している。

センターサークルにボールが置かれ、紅白戦が始まる。

「沢海先輩のプレイ、見たいなぁ…
ーーーーはぁ…
なんでジャンケン負けんだよ…」

宮原は他の1年生がピッチサイドに向かう中、1人だけ部室のある反対方向に足を運び、重い溜息を吐いた。













しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

誰にも触れられたくないトコロ 【完結】

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:57

BL小説短編集

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:17

ドスケベ団地妻♂に食われる初心な宅配員くんの話

BL / 完結 24h.ポイント:383pt お気に入り:35

平凡な私が選ばれるはずがない

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:5,903pt お気に入り:172

【R18】嫌われていると思ったら歪すぎる愛情だった【完結】

BL / 完結 24h.ポイント:120pt お気に入り:358

不憫少年は異世界で愛に溺れる

BL / 連載中 24h.ポイント:177pt お気に入り:2,740

甘イキしながら生きてます

BL / 連載中 24h.ポイント:170pt お気に入り:62

貴方は僕の運命のひと

BL / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:886

可愛いΩのナカセカタ

BL / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:709

処理中です...