63 / 70
第一章
63 劣勢
しおりを挟む
──どういう状況だよ!
敵の火線をくぐり抜け、第二分隊のところまでたどり着いたところであったが、すでに、味方が敵に攻め込まれている状況にシーナは焦りと苛立ちを覚えた。
ダダッ!ダダダッ!
シーナは右舷空中にいる敵に牽制の射撃をしながら前進する。
状況は厳しかった。駆けつけたばかりだが、目に入った限りでは、槍を構えるセーグネルとおそらくノベル──彼も刀を手にしている──が甲板に乗り込んできた敵兵にあたっていたようだ。
他の分隊員は掩体で、空中の敵に射撃をしている。しかし、人数は少ない。
(──あ?)
シーナは掩体の陰にしゃがみこんでいるアビィに気が付いた。
どこか負傷したのかと思ったが、外傷は見られない。しかし、怯えたようすで身を丸めている。
「おいっ!どうした!!」
掩体の裏まで来たシーナは、小銃を構えたまま、しゃがみこんでいるアビィに向かって怒鳴った。
自分の前に現れたシーナに気が付いたアビィが顔を上げる。
泣いていたのか、彼女の目は赤く腫れぼったくなっていた。
──なにやってんだよ。
怪我をしているわけではない。単に怯えて泣いているだけだ。
アビィが戦意を喪失し、任務を放棄していることを悟ったシーナは憤った。
「てめえも戦えっ!」
小銃を構えながら、シーナがしゃがんでいるアビィの肩を押すように片足で蹴った。
「きゃっ!」
突然シーナに蹴られたアビィは掩体に体をぶつけた。しかし、さらに怯えたように体を丸めて震えている。
「ちっ!」
ダメだこいつは──これ以上時間をかける暇はないと感じたシーナは、アビィを捨て置いて前に進む。
「シーナ!」
加勢にやってきたシーナに向かって、セーグネルが彼の名前を呼ぶ。その声は歓喜の色を帯びていた。
シーナは応じることはせず、小銃を構えたまま、状況を観察する。
(どうする…………っ!!)
素早くあたりに目を走らせたシーナがはっとしてノベルに向かって叫んだ。
「うしろだ!」
「っ!」
後ろを振り向いたノベルは、先ほど『アマネ』から弾き出した少女の敵兵が、自分に向かって飛びかかってくるのに気づいた。
いつの間にか体勢を立て直したベルニカは、空戦機動で空中を駆けながら猛烈なスピードでノベルに迫る。
──はやい!!
敵のスピードは、さっきよりはるかに速い。
ノベルのまえに躍り出たベルニカが彼に向かって刃を振り下ろす。
キン!キン!キン!
ベルニカのすばやい斬擊をノベルが受ける。
しかし、
「──ぐっ!!」
ベルニカは、細剣による攻撃のなかに、体術を織りまぜてきた。
直線的な蹴りがノベルの胴体を打つ。
防弾装具を以てしても内臓を揺らす威力の蹴りだった。
そして、ベルニカが脇のホルスターから、何かの銃器を抜き取って、ノベルに向けた。
長い銃身をもった大口径の自動拳銃だ。
まずい──ノベルがそれを避ける間もなく、
──ガァン!!
大型自動拳銃が火を吹いた。
「──っ!!」
とっさに、刀の刃を横にして銃弾を防ごうとしたノベルであったが──
パキィン!!
ノベルの刀が、細かい断片を散らして二つに折られた。
ビシッ!!
「ぐあっ!」
ノベルの刀を砕いた銃弾は、ノベルの体を直撃した。
衝撃を受けて、後ろに吹き飛ぶノベル。
「くそっ!!」
味方の危機に、シーナが小銃を撃ちながら果敢にベルニカに挑んでいった。
敵の火線をくぐり抜け、第二分隊のところまでたどり着いたところであったが、すでに、味方が敵に攻め込まれている状況にシーナは焦りと苛立ちを覚えた。
ダダッ!ダダダッ!
シーナは右舷空中にいる敵に牽制の射撃をしながら前進する。
状況は厳しかった。駆けつけたばかりだが、目に入った限りでは、槍を構えるセーグネルとおそらくノベル──彼も刀を手にしている──が甲板に乗り込んできた敵兵にあたっていたようだ。
他の分隊員は掩体で、空中の敵に射撃をしている。しかし、人数は少ない。
(──あ?)
シーナは掩体の陰にしゃがみこんでいるアビィに気が付いた。
どこか負傷したのかと思ったが、外傷は見られない。しかし、怯えたようすで身を丸めている。
「おいっ!どうした!!」
掩体の裏まで来たシーナは、小銃を構えたまま、しゃがみこんでいるアビィに向かって怒鳴った。
自分の前に現れたシーナに気が付いたアビィが顔を上げる。
泣いていたのか、彼女の目は赤く腫れぼったくなっていた。
──なにやってんだよ。
怪我をしているわけではない。単に怯えて泣いているだけだ。
アビィが戦意を喪失し、任務を放棄していることを悟ったシーナは憤った。
「てめえも戦えっ!」
小銃を構えながら、シーナがしゃがんでいるアビィの肩を押すように片足で蹴った。
「きゃっ!」
突然シーナに蹴られたアビィは掩体に体をぶつけた。しかし、さらに怯えたように体を丸めて震えている。
「ちっ!」
ダメだこいつは──これ以上時間をかける暇はないと感じたシーナは、アビィを捨て置いて前に進む。
「シーナ!」
加勢にやってきたシーナに向かって、セーグネルが彼の名前を呼ぶ。その声は歓喜の色を帯びていた。
シーナは応じることはせず、小銃を構えたまま、状況を観察する。
(どうする…………っ!!)
素早くあたりに目を走らせたシーナがはっとしてノベルに向かって叫んだ。
「うしろだ!」
「っ!」
後ろを振り向いたノベルは、先ほど『アマネ』から弾き出した少女の敵兵が、自分に向かって飛びかかってくるのに気づいた。
いつの間にか体勢を立て直したベルニカは、空戦機動で空中を駆けながら猛烈なスピードでノベルに迫る。
──はやい!!
敵のスピードは、さっきよりはるかに速い。
ノベルのまえに躍り出たベルニカが彼に向かって刃を振り下ろす。
キン!キン!キン!
ベルニカのすばやい斬擊をノベルが受ける。
しかし、
「──ぐっ!!」
ベルニカは、細剣による攻撃のなかに、体術を織りまぜてきた。
直線的な蹴りがノベルの胴体を打つ。
防弾装具を以てしても内臓を揺らす威力の蹴りだった。
そして、ベルニカが脇のホルスターから、何かの銃器を抜き取って、ノベルに向けた。
長い銃身をもった大口径の自動拳銃だ。
まずい──ノベルがそれを避ける間もなく、
──ガァン!!
大型自動拳銃が火を吹いた。
「──っ!!」
とっさに、刀の刃を横にして銃弾を防ごうとしたノベルであったが──
パキィン!!
ノベルの刀が、細かい断片を散らして二つに折られた。
ビシッ!!
「ぐあっ!」
ノベルの刀を砕いた銃弾は、ノベルの体を直撃した。
衝撃を受けて、後ろに吹き飛ぶノベル。
「くそっ!!」
味方の危機に、シーナが小銃を撃ちながら果敢にベルニカに挑んでいった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

【完結】家庭菜園士の強野菜無双!俺の野菜は激強い、魔王も勇者もチート野菜で一捻り!
鏑木 うりこ
ファンタジー
幸田と向田はトラックにドン☆されて異世界転生した。
勇者チートハーレムモノのラノベが好きな幸田は勇者に、まったりスローライフモノのラノベが好きな向田には……「家庭菜園士」が女神様より授けられた!
「家庭菜園だけかよーー!」
元向田、現タトは叫ぶがまあ念願のスローライフは叶いそうである?
大変!第2回次世代ファンタジーカップのタグをつけたはずなのに、ついてないぞ……。あまりに衝撃すぎて倒れた……(;´Д`)もうだめだー

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界転移~治癒師の日常
コリモ
ファンタジー
ある日看護師の真琴は仕事場からの帰り道、地面が陥没する事故に巻き込まれた。しかし、いつまでたっても衝撃が来ない。それどころか自分の下に草の感触が…
こちらでは初投稿です。誤字脱字のご指摘ご感想お願いします
なるだけ1日1話UP以上を目指していますが、用事がある時は間に合わないこともありますご了承ください(2017/12/18)
すいません少し並びを変えております。(2017/12/25)
カリエの過去編を削除して別なお話にしました(2018/01/15)
エドとの話は「気が付いたら異世界領主〜ドラゴンが降り立つ平原を管理なんてムリだよ」にて掲載させてもらっています。(2018/08/19)

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“
瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
だが、死亡する原因には不可解な点が…
数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、
神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました
空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが当たり前になった世界。風間は平凡な会社員として日々を暮らしていたが、ある日見に覚えのないミスを犯し会社をクビになってしまう。その上親友だった男も彼女を奪われ婚約破棄までされてしまった。世の中が嫌になった風間は自暴自棄になり山に向かうがそこで誰からも見捨てられた放置ダンジョンを見つけてしまう。どことなく親近感を覚えた風間はダンジョンで暮らしてみることにするが、そこにはとても可愛らしいモンスターが隠れ住んでいた。ひょんなことでモンスターに懐かれた風間は様々なモンスターと暮らしダンジョン内でのスローライフを満喫していくことになるのだった。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる