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第一章
58 異変の元凶
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「こちら第三分隊──救援を……」
セーグネルたちに通信機から異変を知らせる緊急連絡が入った直後、第三分隊との通信は途絶えた。
その直後、『アマネ』右舷後部で、炎と黒煙が上がった。
(なにが──)
突然の出来事に、セーグネルをはじめ第二分隊の隊員たちがそちらに気をとられる。
『アマネ』の両舷の中央には、対空砲台が両舷一門ずつ舷側から少しはみ出す形で設置されているので、セーグネルたちのいる右舷前部からは右舷後部の様子は直接見ることはできなかった。
しかし、右舷後部がなんらかの敵の攻撃を受けたことは間違いない。
セーグネルが右舷後部のほうを注視すると、こちらに向かって逃げてくる味方の兵士たちの姿が見えてきた。
右舷後部を守備する第三分隊の隊員たちである。
なにがあった、とセーグネルが彼らに呼び掛けようとした直後、甲板を走る彼らは後ろから突き飛ばされたように倒れこみ、そのまま動かなくなった。
「なっ……」
いったいどうしたのか──、 驚いたセーグネルがまばたきを忘れて凝視する。
どくん、と胸が脈打ち、この異変──悪い予感に一筋の汗が頬を伝った。
奥から現れた人影──すぐにセーグネルにはわかった──それは味方のものではない。赤国の敵兵が身に付けている黒の戦闘服をまとった何者かが、こちらに向けて甲板を歩いてくる。
それが見えた瞬間、セーグネルはこの異変の元凶がその者であると直感した。
──こいつのせいか!!
セーグネルの体の芯に、ぐわっと怒りが吹き上がる。
その敵兵もこちらを視認したのか、はじめ歩いていた歩調を次第に速め、そしてこちらに向けて真っ直ぐ走ってくる。
「セト、援護しろ!!」
セーグネルはそばにいる通信士──セト=マクミラーに怒鳴る。
「他は前の敵をやれっ!!」 他の隊員に叫びながら、セーグネルはそれまで自分がいた掩体から離れ、他の掩体にいる隊員の後ろを通り抜け、こちらに走っててくる敵兵に向かっていった。
通信士の隊員──セーグネルと同い年の少年兵士であるセトも、セーグネルのあとに続く。
「了解!!」機銃のノベルが力強い返答し、他の隊員を奮起させる「准尉を撃たせるなっ!!」
掩体から離れれば、右舷側の空中にいる敵に身を晒すことになる。その敵に攻撃をさせないため、これを心得たノベルは弾薬を撃ち尽くす勢いで弾幕を厚くする。他の隊員たちもノベルに従い、弾幕を切らさぬよう果敢に射撃を続ける。
(こいつがっ──)
こちらに向かってくる敵兵は、一般的な敵兵とは異なる装備──鉄帽も防弾装具も身に付けず、体の各所にホルスターとマガジンポーチ、そして、片手に細い剣を手にしているだけだった。
しかし、その敵は──距離も近づき、目に入ったその姿は少女だった──異様な雰囲気を発している。
しかし、怒りに体を熱くさせたセーグネルにはそれらは気にならなかった。
(殺す──)
敵兵の前に出たセーグネルは小銃を甲板に捨てた。
──鋼鉄の律動。
セーグネルの両手から光の粒子が放出され、細長い棒状に形を成した。
光が消えると共にそこに現れたのは一本の鋼鉄製の槍であった。
槍の先の刃──『穂』の根本には垂直の角度で左右に刃が分岐している。
白銀に輝く十字槍を構えたセーグネルは、敵に向かって突進する。
敵もセーグネルを次の標的と定めたのか、セーグネルに向かって突っ込んできた。
「ええええぃっ!!」
勢いに乗せ、セーグネルは十字槍を敵兵めがけて突き出した。
セーグネルたちに通信機から異変を知らせる緊急連絡が入った直後、第三分隊との通信は途絶えた。
その直後、『アマネ』右舷後部で、炎と黒煙が上がった。
(なにが──)
突然の出来事に、セーグネルをはじめ第二分隊の隊員たちがそちらに気をとられる。
『アマネ』の両舷の中央には、対空砲台が両舷一門ずつ舷側から少しはみ出す形で設置されているので、セーグネルたちのいる右舷前部からは右舷後部の様子は直接見ることはできなかった。
しかし、右舷後部がなんらかの敵の攻撃を受けたことは間違いない。
セーグネルが右舷後部のほうを注視すると、こちらに向かって逃げてくる味方の兵士たちの姿が見えてきた。
右舷後部を守備する第三分隊の隊員たちである。
なにがあった、とセーグネルが彼らに呼び掛けようとした直後、甲板を走る彼らは後ろから突き飛ばされたように倒れこみ、そのまま動かなくなった。
「なっ……」
いったいどうしたのか──、 驚いたセーグネルがまばたきを忘れて凝視する。
どくん、と胸が脈打ち、この異変──悪い予感に一筋の汗が頬を伝った。
奥から現れた人影──すぐにセーグネルにはわかった──それは味方のものではない。赤国の敵兵が身に付けている黒の戦闘服をまとった何者かが、こちらに向けて甲板を歩いてくる。
それが見えた瞬間、セーグネルはこの異変の元凶がその者であると直感した。
──こいつのせいか!!
セーグネルの体の芯に、ぐわっと怒りが吹き上がる。
その敵兵もこちらを視認したのか、はじめ歩いていた歩調を次第に速め、そしてこちらに向けて真っ直ぐ走ってくる。
「セト、援護しろ!!」
セーグネルはそばにいる通信士──セト=マクミラーに怒鳴る。
「他は前の敵をやれっ!!」 他の隊員に叫びながら、セーグネルはそれまで自分がいた掩体から離れ、他の掩体にいる隊員の後ろを通り抜け、こちらに走っててくる敵兵に向かっていった。
通信士の隊員──セーグネルと同い年の少年兵士であるセトも、セーグネルのあとに続く。
「了解!!」機銃のノベルが力強い返答し、他の隊員を奮起させる「准尉を撃たせるなっ!!」
掩体から離れれば、右舷側の空中にいる敵に身を晒すことになる。その敵に攻撃をさせないため、これを心得たノベルは弾薬を撃ち尽くす勢いで弾幕を厚くする。他の隊員たちもノベルに従い、弾幕を切らさぬよう果敢に射撃を続ける。
(こいつがっ──)
こちらに向かってくる敵兵は、一般的な敵兵とは異なる装備──鉄帽も防弾装具も身に付けず、体の各所にホルスターとマガジンポーチ、そして、片手に細い剣を手にしているだけだった。
しかし、その敵は──距離も近づき、目に入ったその姿は少女だった──異様な雰囲気を発している。
しかし、怒りに体を熱くさせたセーグネルにはそれらは気にならなかった。
(殺す──)
敵兵の前に出たセーグネルは小銃を甲板に捨てた。
──鋼鉄の律動。
セーグネルの両手から光の粒子が放出され、細長い棒状に形を成した。
光が消えると共にそこに現れたのは一本の鋼鉄製の槍であった。
槍の先の刃──『穂』の根本には垂直の角度で左右に刃が分岐している。
白銀に輝く十字槍を構えたセーグネルは、敵に向かって突進する。
敵もセーグネルを次の標的と定めたのか、セーグネルに向かって突っ込んできた。
「ええええぃっ!!」
勢いに乗せ、セーグネルは十字槍を敵兵めがけて突き出した。
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