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第一章
48 錯乱
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『アマネ』右舷──セーグネルら第二分隊は襲来する敵の攻撃隊に備えていた。
「小隊長より、第二第三分隊。破砕線を距離二百に設定し、敵を撃破せよ」
通信機から艦上守備隊を統率する小隊長の指示が下った。
破砕線とは、敵がその距離まで到達したら攻撃を仕掛ける距離のことである。
距離二百──敵が二百メートルまで近づいてきたら、機銃及び小銃で一斉射撃を仕掛けるのだ。
セーグネルは分隊員たちにその旨を伝達する。
「破砕線を二百メートルに設定する!私の合図で撃て!」
「了解!」
分隊員らの返事には緊張の色が帯びている。
(この戦力で戦えるか……?)
セーグネルは内心焦っていた。現時点での第二分隊の人数は七人──先の戦闘の負傷で脱落したジオと、左舷の支援に向かったシーナとカウル両名が不在で、今は自分と通信士、代理で機銃手を務めるノベルとアビィ、他三名の隊員しかいない。もちろん、シーナとカウルの二人がここに戻ってきたとしても、二人は専ら対空要員なのであてにはできないが……
「敵は艦の設備か、味方の対空迎撃要員を狙ってくる!とにかく敵を近づけるな!」
敵の攻撃隊──艦上攻撃隊の役割は敵艦の戦闘機能を奪うことである。その最たるものが敵の対空迎撃要員の排除であり、これによって艦の防空能力を喪失させ、艦砲による攻撃を有効にするのが艦上攻撃隊の目的である。
問題は、兵士一人一人が強大な戦闘力を持つ敵の攻撃隊を、他の分隊を含め、この戦力で退けることができるか……
「攻撃隊さらに接近!距離六百!」
隊員が報告をあげる。
敵の攻撃隊までの距離が六百メートルをきった。
敵の姿は肉眼ではまだ点のようにしか見えないが、時間と共にその距離は狭まっている。
「撃ち方用意!」セーグネルが号令する。
分隊員が小銃を構え、弾倉に『心』を注入する。機銃手のノベルも機銃の銃把を両手で握り、照準を敵の攻撃隊に合わせる。
しかし、まだ発砲はしない。六百メートルの距離は機銃も小銃の有効射程だが、敵もこちらも動いているため、命中率は著しく低くなるからだ。
──敵が破砕線に到達するまでは、堪えなくてはならない。
分隊が緊張の面持ちで、各々の火器を構える。
ズウウン!!
その間も、敵駆逐艦からの攻撃は続き、迎撃し損ねた砲弾が右舷の海面に着弾する。
水柱が上がり、海水の飛沫がセーグネルたちに降りかかる。またもや至近弾だった。
艦が揺れ、分隊員たちの不安を煽る。
その時だった──
「いやーっ!!」
そのとき突如として、分隊の中から悲鳴があがった。
「小隊長より、第二第三分隊。破砕線を距離二百に設定し、敵を撃破せよ」
通信機から艦上守備隊を統率する小隊長の指示が下った。
破砕線とは、敵がその距離まで到達したら攻撃を仕掛ける距離のことである。
距離二百──敵が二百メートルまで近づいてきたら、機銃及び小銃で一斉射撃を仕掛けるのだ。
セーグネルは分隊員たちにその旨を伝達する。
「破砕線を二百メートルに設定する!私の合図で撃て!」
「了解!」
分隊員らの返事には緊張の色が帯びている。
(この戦力で戦えるか……?)
セーグネルは内心焦っていた。現時点での第二分隊の人数は七人──先の戦闘の負傷で脱落したジオと、左舷の支援に向かったシーナとカウル両名が不在で、今は自分と通信士、代理で機銃手を務めるノベルとアビィ、他三名の隊員しかいない。もちろん、シーナとカウルの二人がここに戻ってきたとしても、二人は専ら対空要員なのであてにはできないが……
「敵は艦の設備か、味方の対空迎撃要員を狙ってくる!とにかく敵を近づけるな!」
敵の攻撃隊──艦上攻撃隊の役割は敵艦の戦闘機能を奪うことである。その最たるものが敵の対空迎撃要員の排除であり、これによって艦の防空能力を喪失させ、艦砲による攻撃を有効にするのが艦上攻撃隊の目的である。
問題は、兵士一人一人が強大な戦闘力を持つ敵の攻撃隊を、他の分隊を含め、この戦力で退けることができるか……
「攻撃隊さらに接近!距離六百!」
隊員が報告をあげる。
敵の攻撃隊までの距離が六百メートルをきった。
敵の姿は肉眼ではまだ点のようにしか見えないが、時間と共にその距離は狭まっている。
「撃ち方用意!」セーグネルが号令する。
分隊員が小銃を構え、弾倉に『心』を注入する。機銃手のノベルも機銃の銃把を両手で握り、照準を敵の攻撃隊に合わせる。
しかし、まだ発砲はしない。六百メートルの距離は機銃も小銃の有効射程だが、敵もこちらも動いているため、命中率は著しく低くなるからだ。
──敵が破砕線に到達するまでは、堪えなくてはならない。
分隊が緊張の面持ちで、各々の火器を構える。
ズウウン!!
その間も、敵駆逐艦からの攻撃は続き、迎撃し損ねた砲弾が右舷の海面に着弾する。
水柱が上がり、海水の飛沫がセーグネルたちに降りかかる。またもや至近弾だった。
艦が揺れ、分隊員たちの不安を煽る。
その時だった──
「いやーっ!!」
そのとき突如として、分隊の中から悲鳴があがった。
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