エバーラスティング・ネバーエンド──第三人類史

悠木サキ

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第一章

46 異変

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 ドオォン……
 『アマネ』左舷前方で、またもやシーナは、飛来した敵の砲弾を撃ち落とした。
(よし……)
 ふう、とシーナは大きく息を吐いた。
 ここまで、敵味方激しく砲火を交えているが、未だに『アマネ』に被弾はない。
 自分の調子もよく、そばで弾薬を供給しているカウルも──やたら緊張した情けない顔をしているが──いまのところそんなに消耗もしていない。
 着実に防衛できているといっていいだろう。
(問題は、いつまで続くかだな──)
 正確に確認しているわけではないが、左舷の彼方にいる敵艦隊も、まだ被弾──ダメージを受けている感じはない。
 開戦から現時点まで、お互い砲撃しては迎撃される、を繰り返している。
 消耗戦は面倒だな──シーナは、小さく舌打ちする。
 砲戦が続ければ、遠からずカウルの『心』──体力は尽きるだろう。そこから、自分の『心』を込めて戦闘を継続するにしても、シーナの体力も無尽蔵ではない。
(決定打がでるか、打ち止めになるか……)
 ここまでは順調だとしても、予断は許さない状況といえた。

 シーナが次の敵艦砲に備えて銃を構えた、その時だった。
 ズウウン!!
(!?)
 不意に、シーナたちの前方──『アマネ』左舷の海面に水柱が立った。
 シーナが目を見開く。
──今のは、後ろから飛んできたぞ!
 一瞬だがシーナの目は、その砲弾の軌道を捉えていた。
 赤く熱を帯びて煌めいた砲弾は、シーナたちの後ろから──右舷方向から『アマネ』を飛び越えて左舷の海に落ちたものだった。
「おいっ!!」
 シーナはそばにいるカウルに大声で怒鳴る。
「!!──は、はいっ!」
 カウルが驚いた顔でシーナを見上げる。
「今のは何だっ!」
「えっ!」突然問われたカウルは戸惑った。
 カウルは何が起きたか気がついていない。
 シーナはそんなカウルに再び怒鳴る。
「弾が後ろから飛んできたんだよ!!何が起きてるか聞いてこいっ!!」
 シーナが顎で後方──左舷の第四分隊の兵士たちがいる方向を指し示す。
「え!?あ、はいっ!!」
 彼らに訊いてこい、という意図を察したカウルは、慌てて握っていた次の弾倉を、甲板の上に置いていた背嚢の上に置いてから、第四分隊の兵士たちのほうに走っていった。
(……何がどうなってる?!)
 ずっと迎撃射撃に専念していたシーナには、現状は把握しかねた。
 もしも今のが勘違いではなくて、後方──右舷の方にも敵がいるとしたら、この艦は両舷から挟み撃ちされているということだ。
 しかも、右舷前方──第二分隊には今、対空迎撃要員はいない。
 シーナは不穏な空気を感じながら、とりあえずは目の前の脅威──左舷の敵からの砲撃に備えて、対装甲狙撃銃を構え直した。
 
 
 
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