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第一章
42 予感
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「敵艦が?!」
無線を通じて、新たに敵艦が現れたことがセーグネルたち艦上守備隊の隊員たちに知らされた。
セーグネルは背嚢から双眼鏡を取り出し、覗きこむ。
「……あれか!」
右舷水平線上に朧気に見える小さな影。
──小さい……恐らく駆逐艦……
セーグネルはしばらくじっと双眼鏡を覗き続けた。
双眼鏡の視界に捉えた艦影は、次第に濃くなり、それがかちらに向けてまっすぐ接近してきていることがわかる。
しかし、その艦影の数自体は一つだけで、その周辺には他に何も現れなかった。
(一隻だけ……艦隊じゃない……?)
敵国の別の艦隊が現れたのではないかと危惧していたセーグネルはそこで疑念を抱く。
(単艦でいったい何を……?)
単艦で行動しているこの艦影は、おそらく現在、左舷側で交戦中の艦隊のうちの一隻だろう。
何かしらの狙いがあって、敢えて艦隊から離れ、単艦で別行動をしたに違いない。
(でも、挟撃するにしても、一隻では……)
セーグネルはこの一隻の小型艦の意図を掴みかねた。
砲戦を繰り広げている左舷側には巡洋艦らしき中型艦を含む四隻の艦隊。対して右舷から来たのは駆逐艦らしき小型艦一隻。
仮に自分達を挟み撃ちにするにしても、もう少し均等に戦力を分けそうなものだが……
──まさか。
嫌な予感がする。
「各員、見張りを厳にせよ!」
セーグネルが第二分隊の隊員たちに命じた。
「敵の攻撃隊がくるかもしれない」
「攻撃隊…!?」隊員らが顔を見合わせる。
艦上攻撃隊とは、敵艦船の戦力の排除や破壊のために編成される部隊である。
兵科としては、自動小銃や機関銃、手榴弾といった小火器を携行し、航空機や船舶などを用いず生身で戦闘を行う歩兵と同様であるが、通常の歩兵科の兵士と異なるのは、『鼓動』による特殊能力を駆使した戦闘を行う点にあった。
母艦から出撃した艦上攻撃隊は、『鼓動』の思念動力による空中移動によって、目標となる敵艦船へ接近し、攻撃を敢行する。
敵艦船に到達した彼らがまず攻撃対象とするのは、艦船の防衛任務にあたる対空迎撃要員である。
艦砲や航空機を迎撃する能力を持つ対空迎撃要員を火器などを用いた直接攻撃によって排除することで、艦船の防御力を奪う。これによって味方航空機や艦船からの攻撃を有効にするのが、現在、主流になっている戦術理論であった。
(もし、本当に敵に攻撃隊がいたら大変なことになる……)
セーグネルの表情が強ばる。
セーグネルら艦上守備隊は、確かに、敵の艦上攻撃隊から対空迎撃要員や艦を守るために編成された部隊だが、艦上攻撃隊の兵士は、それぞれが『鼓動』や『律動』の能力に非常に長けており、個々の戦闘能力が一般の兵士──セーグネルたち艦上守備隊の兵士よりもはるかに高く、艦上攻撃隊の兵士一人が、普通の兵士の五人分もの戦闘力を持つと言われている。
また、セーグネルたちは『アマネ』に乗艦して以来、実際に敵の艦上攻撃隊を目の当たりにしたことや、ましてや近接戦闘など経験したことはなかった。
(絶対接近させてはいけない……警戒を厳にして、あと弾薬も……)
どんな展開になってもいいように、セーグネルは考えを巡らせる。
(いや、それよりもまずは……!)
セーグネルは無線で、艦上守備隊を統括する第六小隊の小隊長に呼び掛けた。
「こちら第二分隊より小隊長!第四分隊の支援に向かった迎撃要員の帰投を要請します!」
とにかくまずは、現れた小型艦からの砲撃を警戒しなければならない。
そうなると、対空迎撃要員の力が必要となるが、第二分隊の対空迎撃要員であるシーナは現在、左舷の第四分隊の支援のため不在である。早く彼を呼び戻さなくては。
『──了解』
無線からの応答は早かった。小隊長ほか、『アマネ』の幹部たちもすでに事態を把握しているようだ。
「よし……」
セーグネルは緊張した表情で、水平線上の敵艦に目を向けた。
無線を通じて、新たに敵艦が現れたことがセーグネルたち艦上守備隊の隊員たちに知らされた。
セーグネルは背嚢から双眼鏡を取り出し、覗きこむ。
「……あれか!」
右舷水平線上に朧気に見える小さな影。
──小さい……恐らく駆逐艦……
セーグネルはしばらくじっと双眼鏡を覗き続けた。
双眼鏡の視界に捉えた艦影は、次第に濃くなり、それがかちらに向けてまっすぐ接近してきていることがわかる。
しかし、その艦影の数自体は一つだけで、その周辺には他に何も現れなかった。
(一隻だけ……艦隊じゃない……?)
敵国の別の艦隊が現れたのではないかと危惧していたセーグネルはそこで疑念を抱く。
(単艦でいったい何を……?)
単艦で行動しているこの艦影は、おそらく現在、左舷側で交戦中の艦隊のうちの一隻だろう。
何かしらの狙いがあって、敢えて艦隊から離れ、単艦で別行動をしたに違いない。
(でも、挟撃するにしても、一隻では……)
セーグネルはこの一隻の小型艦の意図を掴みかねた。
砲戦を繰り広げている左舷側には巡洋艦らしき中型艦を含む四隻の艦隊。対して右舷から来たのは駆逐艦らしき小型艦一隻。
仮に自分達を挟み撃ちにするにしても、もう少し均等に戦力を分けそうなものだが……
──まさか。
嫌な予感がする。
「各員、見張りを厳にせよ!」
セーグネルが第二分隊の隊員たちに命じた。
「敵の攻撃隊がくるかもしれない」
「攻撃隊…!?」隊員らが顔を見合わせる。
艦上攻撃隊とは、敵艦船の戦力の排除や破壊のために編成される部隊である。
兵科としては、自動小銃や機関銃、手榴弾といった小火器を携行し、航空機や船舶などを用いず生身で戦闘を行う歩兵と同様であるが、通常の歩兵科の兵士と異なるのは、『鼓動』による特殊能力を駆使した戦闘を行う点にあった。
母艦から出撃した艦上攻撃隊は、『鼓動』の思念動力による空中移動によって、目標となる敵艦船へ接近し、攻撃を敢行する。
敵艦船に到達した彼らがまず攻撃対象とするのは、艦船の防衛任務にあたる対空迎撃要員である。
艦砲や航空機を迎撃する能力を持つ対空迎撃要員を火器などを用いた直接攻撃によって排除することで、艦船の防御力を奪う。これによって味方航空機や艦船からの攻撃を有効にするのが、現在、主流になっている戦術理論であった。
(もし、本当に敵に攻撃隊がいたら大変なことになる……)
セーグネルの表情が強ばる。
セーグネルら艦上守備隊は、確かに、敵の艦上攻撃隊から対空迎撃要員や艦を守るために編成された部隊だが、艦上攻撃隊の兵士は、それぞれが『鼓動』や『律動』の能力に非常に長けており、個々の戦闘能力が一般の兵士──セーグネルたち艦上守備隊の兵士よりもはるかに高く、艦上攻撃隊の兵士一人が、普通の兵士の五人分もの戦闘力を持つと言われている。
また、セーグネルたちは『アマネ』に乗艦して以来、実際に敵の艦上攻撃隊を目の当たりにしたことや、ましてや近接戦闘など経験したことはなかった。
(絶対接近させてはいけない……警戒を厳にして、あと弾薬も……)
どんな展開になってもいいように、セーグネルは考えを巡らせる。
(いや、それよりもまずは……!)
セーグネルは無線で、艦上守備隊を統括する第六小隊の小隊長に呼び掛けた。
「こちら第二分隊より小隊長!第四分隊の支援に向かった迎撃要員の帰投を要請します!」
とにかくまずは、現れた小型艦からの砲撃を警戒しなければならない。
そうなると、対空迎撃要員の力が必要となるが、第二分隊の対空迎撃要員であるシーナは現在、左舷の第四分隊の支援のため不在である。早く彼を呼び戻さなくては。
『──了解』
無線からの応答は早かった。小隊長ほか、『アマネ』の幹部たちもすでに事態を把握しているようだ。
「よし……」
セーグネルは緊張した表情で、水平線上の敵艦に目を向けた。
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