エバーラスティング・ネバーエンド──第三人類史

悠木サキ

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第一章

40 迎撃はじめ②

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「ぶっ!!」
 対装甲狙撃銃の発した凄まじい衝撃に、カウルは首を縮めて怯む。その直後──
 バーン!!
 カウルたちの前方五十メートルほどの上空で、大爆発が起きた。
 一瞬走った閃光の後、ぼわっと膨らむ爆煙。
「わっ!!」
 それに驚いたカウルが、とっさに身を翻し腕で頭部を覆う。 到達した衝撃波とともに、カンカン、とあたりで物音が立った。爆発により飛散した、砲弾の小さな破片であった。
──す、すごい……
 カウルは驚愕の表情でシーナを見上げた。
 爆発を目の前にしながらも、シーナは対装甲狙撃銃を構えたまま微動だにしない。その鋭い眼は前方の空中を見据え続けていた。
 ドッ!ドオッ!
「!」
 すると今度は海面にいくつもの水柱が立ち上がった。
 他の敵艦が放った砲弾が海面に着弾したのである。
 しかし、そのどれもが『アマネ』から離れた位置に着弾しており、『アマネ』への命中弾はなかった。
(これが、こいつの能力ちから……)
 カウルには空中を高速で飛来してきた砲弾の姿を見つけることすらできなかった。
 それなのにシーナは、砲弾を瞬間的に捉え、さらに狙撃銃の放った弾丸を命中させるという離れ業をやってのけている。
 普段の言動に、さんざんストレスを受けっぱなしだったカウルは、はじめてこの少年をすごいと思った。



──使い物になりゃしねえ。
 対装甲狙撃銃を構えながらシーナは、たかだかこの程度の爆発で驚いているカウルに対して内心毒づく。
 命中の危険があった砲弾を撃ち落とした後、『アマネ』の周囲に他の砲弾による水柱が上がるも、シーナは冷静であった。
 そのどれもが『アマネ』に命中しないと見切っていたからだ。
(!)
 見ると敵艦隊の艦影が、さっきまでは小さな粒のように見えていたのが、次第に横に伸びていく。
 それまで、梯形陣で船首をこちらに向けていた敵艦隊が全艦舵を切り、陣形を変えて横一列に並び出したのだった。
(単縦陣……同航戦か……)
 シーナは敵艦隊の動向を見てとった。
 同航戦とは、自軍の艦ないし艦隊が、敵艦隊と同じ方向に進みながら行われる戦闘である。
 このとき、仮にお互いの速度が同じ場合、相手の相対速度はゼロとなる。つまり、お互いにという状況になり、相手の未来位置の予測──すなわち砲雷撃の照準が容易くなるため、激しい戦闘になりやすい。
 また、相手に対して艦の側面を向けるため、稼働できる砲門の数も増える──相手を艦の正面で捉えているときは、艦の前部の砲しか敵に指向できないが、側面を向けているときは、艦の前後の砲で敵を狙うことができる。
 そのため、より火力を発揮できる同航戦は、苛烈な撃ち合いの様相を呈することになる。
「チッ」
 これからさらに多くの砲弾が飛び交うだろうと予想したシーナがひとり舌打ちをする。
──この足手まとい、ついてこれんのか?
 いや無理だろうな、とすぐに思ったシーナは、フンと小さく鼻を鳴らした。
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