エバーラスティング・ネバーエンド──第三人類史

悠木サキ

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第一章

32 迎撃支援

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(左舷……!?)
 セーグネルの言葉をカウルは頭のなかで反芻した。
 左舷砲雷同時戦──砲雷同時戦とは、艦砲による砲撃戦と魚雷による雷撃戦を同時に行う戦闘である。
 それが『左舷』で行われる──つまり、艦の砲塔は左側に指向し、艦の左舷を敵艦にさらす形で戦闘が行われるということだ。
(俺たちがいるのは右舷だから──)
 カウルたち第二分隊は『アマネ』の右舷前部に配置している。
──や、やった。
 強ばった表情のまま、カウルは安堵した。右舷のここなら、直接敵の砲火にさらされることはない。
(よし……よし……!)
 それまで生きた心地がしていなかったカウルは、ここで初めて息を大きく吸って吐いた。
 
「……了解!スレヴィアス上等兵!ハウンド二等兵!」
 すると、なにやら通信機でやりとりをしていたセーグネルが、カウルとシーナのもとにやってきた。
(な、なんだ……?)
 カウルはぎくりとセーグネルのほうを向き、背筋を伸ばす。
 カウルとシーナの前に立ったセーグネルは、二人をそれぞれ真っ直ぐな眼差しを向けて指示を下した。
「両名はこれより左舷前部に向かい、対空戦闘を支援せよ!」
──!?
 カウルは愕然とした。
 そんなカウルをよそに、セーグネルは矢継ぎ早に続ける。
「左舷前部は第四分隊が守備している。到着したら彼らの指示に従い配置につけ!」
──支援?えっ、俺たちだけ?
 セーグネルの指示を飲み込めないカウルが当惑した目を隣のシーナに走らせる。
 するとシーナは、
「……了解」
とだけ短く返答し、踵を返して駆け出した。
「あっ……」
「おい!ついて来い!」
 呆然と突っ立ったままのカウルにシーナが怒鳴る。
「は、はい!」
 カウルはシーナの声にびくっと我に帰り、慌てて背嚢を抱えてシーナの後を追った。

「はっ──はっ──」
 長大な対装甲狙撃銃を抱えながらも素早く先を駆けていくシーナを、カウルが必死に追いかける。
(くそっ)
 しかし、心のなかではこの理不尽な展開に納得できないでいた。
──なんで、なんで俺たちだけ……
 他の分隊員たちはそれぞれの持ち場に残ったままなのに、なぜ自分たちだけが危険な場所に
向かわなければならないのか。
──ふざけんな。
 カウルは心のなかで毒づいた。
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