26 / 70
第一章
26 口論
しおりを挟む
──第二波……。
敵の空襲を幸運にも無事に潜り抜けたカウルは、セーグネルの言葉に呆然とした。
「空薬莢は海に投棄、崩れた掩体は組み直すように」
セーグネルは矢継ぎ早に指示を出す。そこに──
「おい」
と、シーナがセーグネルの前に乗り出した。
「……スレヴィアス上等兵、なにか?」
声の調子を落として、セーグネルが問う。
「この作戦は敵の駆逐艦部隊を叩く作戦のはずだ。なんで敵の航空機が出てくる?」
シーナは眉根を寄せ、その三白眼でセーグネルを睨み付ける。
「それは私も聞かされていない」
セーグネルは淡白な口調で返した。
「スレヴィアス上等兵、早く作業に取りかかれ」
「敵に機動部隊がいたら、この戦力じゃ敵わねえだろ」
シーナはセーグネルの命令を無視し、なお食って掛かるように反駁する。自身より階級が上のセーグネルに対し、不適切な口調だ。
「……人的被害は出たが、艦自体は被弾していない。作戦続行は可能だ」
セーグネルがシーナから視線を外し、背中の方──『アマネ』を顧みながら答えた。
「答えになってねえよ。もうすでに制空権を取られてるじゃねえか」シーナはなおも反論する。
「…………」
視線を戻したセーグネルとシーナがしばし無言で対峙する。
両者の間に不穏な空気が流れた。
「……ここで貴様と論じている暇はない。早く作業にかかれ。」
口を開いたセーグネルはそれだけ言うと、踵を返してシーナに背を向けて歩きだした。
「ノベル、ここを監督してくれ。私は小隊長のところに行ってくる。」
「──はっ」
後ろに立って事態を見守っていたノベルにセーグネルが下命し、ノベルが敬礼して応じる。
「……ちっ」
去っていくセーグネルに、シーナはこれ見よがしに舌打ちをした。
敵の空襲を幸運にも無事に潜り抜けたカウルは、セーグネルの言葉に呆然とした。
「空薬莢は海に投棄、崩れた掩体は組み直すように」
セーグネルは矢継ぎ早に指示を出す。そこに──
「おい」
と、シーナがセーグネルの前に乗り出した。
「……スレヴィアス上等兵、なにか?」
声の調子を落として、セーグネルが問う。
「この作戦は敵の駆逐艦部隊を叩く作戦のはずだ。なんで敵の航空機が出てくる?」
シーナは眉根を寄せ、その三白眼でセーグネルを睨み付ける。
「それは私も聞かされていない」
セーグネルは淡白な口調で返した。
「スレヴィアス上等兵、早く作業に取りかかれ」
「敵に機動部隊がいたら、この戦力じゃ敵わねえだろ」
シーナはセーグネルの命令を無視し、なお食って掛かるように反駁する。自身より階級が上のセーグネルに対し、不適切な口調だ。
「……人的被害は出たが、艦自体は被弾していない。作戦続行は可能だ」
セーグネルがシーナから視線を外し、背中の方──『アマネ』を顧みながら答えた。
「答えになってねえよ。もうすでに制空権を取られてるじゃねえか」シーナはなおも反論する。
「…………」
視線を戻したセーグネルとシーナがしばし無言で対峙する。
両者の間に不穏な空気が流れた。
「……ここで貴様と論じている暇はない。早く作業にかかれ。」
口を開いたセーグネルはそれだけ言うと、踵を返してシーナに背を向けて歩きだした。
「ノベル、ここを監督してくれ。私は小隊長のところに行ってくる。」
「──はっ」
後ろに立って事態を見守っていたノベルにセーグネルが下命し、ノベルが敬礼して応じる。
「……ちっ」
去っていくセーグネルに、シーナはこれ見よがしに舌打ちをした。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

二度目の転生は傍若無人に~元勇者ですが二度目『も』クズ貴族に囲まれていてイラッとしたのでチート無双します~
K1-M
ファンタジー
元日本人の俺は転生勇者として異世界で魔王との戦闘の果てに仲間の裏切りにより命を落とす。
次に目を覚ますと再び赤ちゃんになり二度目の転生をしていた。
生まれた先は下級貴族の五男坊。周りは貴族至上主義、人間族至上主義のクズばかり。
…決めた。最悪、この国をぶっ壊す覚悟で元勇者の力を使おう…と。
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しています。
公爵家に生まれて初日に跡継ぎ失格の烙印を押されましたが今日も元気に生きてます!
小択出新都
ファンタジー
異世界に転生して公爵家の娘に生まれてきたエトワだが、魔力をほとんどもたずに生まれてきたため、生後0ヶ月で跡継ぎ失格の烙印を押されてしまう。
跡継ぎ失格といっても、すぐに家を追い出されたりはしないし、学校にも通わせてもらえるし、15歳までに家を出ればいいから、まあ恵まれてるよね、とのんきに暮らしていたエトワ。
だけど跡継ぎ問題を解決するために、分家から同い年の少年少女たちからその候補が選ばれることになり。
彼らには試練として、エトワ(ともたされた家宝、むしろこっちがメイン)が15歳になるまでの護衛役が命ぜられることになった。
仮の主人というか、実質、案山子みたいなものとして、彼らに護衛されることになったエトワだが、一癖ある男の子たちから、素直な女の子までいろんな子がいて、困惑しつつも彼らの成長を見守ることにするのだった。

伯爵夫人のお気に入り
つくも茄子
ファンタジー
プライド伯爵令嬢、ユースティティアは僅か二歳で大病を患い入院を余儀なくされた。悲しみにくれる伯爵夫人は、遠縁の少女を娘代わりに可愛がっていた。
数年後、全快した娘が屋敷に戻ってきた時。
喜ぶ伯爵夫人。
伯爵夫人を慕う少女。
静観する伯爵。
三者三様の想いが交差する。
歪な家族の形。
「この家族ごっこはいつまで続けるおつもりですか?お父様」
「お人形遊びはいい加減卒業なさってください、お母様」
「家族?いいえ、貴方は他所の子です」
ユースティティアは、そんな家族の形に呆れていた。
「可愛いあの子は、伯爵夫人のお気に入り」から「伯爵夫人のお気に入り」にタイトルを変更します。

女神の代わりに異世界漫遊 ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~
大福にゃここ
ファンタジー
目の前に、女神を名乗る女性が立っていた。
麗しい彼女の願いは「自分の代わりに世界を見て欲しい」それだけ。
使命も何もなく、ただ、その世界で楽しく生きていくだけでいいらしい。
厳しい異世界で生き抜く為のスキルも色々と貰い、食いしん坊だけど優しくて可愛い従魔も一緒!
忙しくて自由のない女神の代わりに、異世界を楽しんでこよう♪
13話目くらいから話が動きますので、気長にお付き合いください!
最初はとっつきにくいかもしれませんが、どうか続きを読んでみてくださいね^^
※お気に入り登録や感想がとても励みになっています。 ありがとうございます!
(なかなかお返事書けなくてごめんなさい)
※小説家になろう様にも投稿しています
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
異世界アウトレンジ ーワイルドハンター、ギデ世界を狩るー
心絵マシテ
ファンタジー
聖王国家ゼレスティアに彼の英雄あり!
貴族の嫡男、ギデオン・グラッセは礼節を重んじ、文武に励む若者として周囲から聖騎士として将来を有望視されていた。
彼自身もまた、その期待に応え英雄として活躍する日を心待ちにしていた。
十五歳になったその日、ギデオンは自身の適性職を授かる天啓の儀を受けることとなる。
しかし、それは彼にとっての最初で最後の晴れ舞台となってしまう。
ギデオン・グラッセの適性職はマタギです!!
謎の啓示を受けた若き信徒に対し、周囲は騒然となった。
そればかりか、禁忌を犯したとありもしない罪を押し付けられ、ついには捕らえられてしまう。
彼を慕う者、妬む者。
ギデオンの処遇を巡り、信徒たちは互いに対立する。
その最中、天啓の儀を執り行った司教が何者かによって暗殺されるという最悪の出来事が起きてしまう。
疑惑と疑念、軽蔑の眼差しが激怒ギデオンに注がれる中、容疑者として逮捕されてしまったのは父アラドだった。
活路も見出せないまま、己が無力に打ちひしがれるギデオン。
何もかも嫌なり自暴自棄となった彼の中で、突如として天性スキル・ハンティングが発動する。
神々の気まぐれか? はたまた悪魔の誘惑か? それは人類に終焉をもたらすほどの力を秘めていた。
・天啓の儀「一話~十六話」
・冒険の幕開け「十七話~三十九話」
・エルフの郷、防衛戦「四十話~五十六話」
・大陸横断列車編「五十七話~七十話」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる