25 / 70
第一章
25 撤退
しおりを挟む
ザアアァ……。
舞い上がった飛沫が雨となって海面に降り注ぐ。
「──ぷっ」
セーグネルが口に入った海水を吐き捨てる。
水柱のなかから姿を現したセーグネルは、海水を全身に浴び水浸しであったが、体に外傷はなかった。
(よし──)
魚雷の破壊には成功した。
見ると槍の穂先は爆発の衝撃でひしゃげている。
セーグネルは、槍はもう使いようはないとして、その槍を手した。
ぼちゃ、と飛沫を立てて、放棄された槍は海に沈んでいった。
(早く戻らないと)
セーグネルはすぐにその場を後にし、『アマネ』への帰還を急いだ。
セーグネルが『アマネ』の甲板に戻ると、シーナやノベルたち第二分隊は、敵機と応戦している最中であった。
「准尉!」帰還したセーグネルの姿を見てノベルが声を上げる。
「すまない!」セーグネルはすぐさま、銃座の機銃についているノベルの援護に入る。
背中に掛けた小銃を外し、槓桿を引いて小銃を構える。
「弾幕を切らすな!」
セーグネルは声を張り上げると、『アマネ』上空を飛び交う敵機に射撃を開始した。
ウウゥ……ドオン!
機体から火を吹いた敵の戦闘機がくぐもった唸り上げながらを海へと墜落する。
また新たに一機、敵機を撃墜したシーナが対装甲狙撃銃から顔を離し、銃口を下げた。
「……終わりか」
「え?」
突然射撃を止め、何か呟いたシーナにカウルが顔を上げる。
(……?)
状況が分からず辺りを見渡すカウル。
見ると、先ほどまで『アマネ』上空を飛び交っていた敵機たちが、皆同じ方向に飛びながら『アマネ』に背を向けて離れていく。
そして、『アマネ』艦上の対空砲火の砲声も散発的になり、間もなくして皆止んだ。
「撃ち方、やめ!!」
銃座にいたセーグネルが分隊全体に号令する。
──終わった……?
カウルはここ出始めて、敵が撤退していったことを理解した。
(生きてる…………)
両手で握りしめていた対装甲狙撃銃の弾倉が、手のひらから滑り落ちる。
甲板に片膝をついていたカウルは呆然とした表情でゆっくりと立ち上がった。
大きな怪我はない。いつの間にか打ったのか、体の所々が少し痛いのにカウルは今、気がついた。
先ほどまで辺りを覆っていた、敵機のプロペラ音も、対空砲火の砲声も、機銃の銃撃音も全てなくなり、艦が波を切る音だけが聞こえる。
カウルが辺りをゆっくりと見渡す。
砲火の煙も彼方にかき消えて、真っ青な海と、澄んだ水色の空が広がっていた。
「今のうちに事態を収集する!」
すると、セーグネルが声を張り上げた。
カウルが彼女のほうに顔を向ける。
セーグネルは続ける。
「敵の第二波攻撃もあり得る!速やかに弾薬を補給し、体勢を整えよ!」
──第二波攻撃!?
安心しかけたカウルは愕然とした。
舞い上がった飛沫が雨となって海面に降り注ぐ。
「──ぷっ」
セーグネルが口に入った海水を吐き捨てる。
水柱のなかから姿を現したセーグネルは、海水を全身に浴び水浸しであったが、体に外傷はなかった。
(よし──)
魚雷の破壊には成功した。
見ると槍の穂先は爆発の衝撃でひしゃげている。
セーグネルは、槍はもう使いようはないとして、その槍を手した。
ぼちゃ、と飛沫を立てて、放棄された槍は海に沈んでいった。
(早く戻らないと)
セーグネルはすぐにその場を後にし、『アマネ』への帰還を急いだ。
セーグネルが『アマネ』の甲板に戻ると、シーナやノベルたち第二分隊は、敵機と応戦している最中であった。
「准尉!」帰還したセーグネルの姿を見てノベルが声を上げる。
「すまない!」セーグネルはすぐさま、銃座の機銃についているノベルの援護に入る。
背中に掛けた小銃を外し、槓桿を引いて小銃を構える。
「弾幕を切らすな!」
セーグネルは声を張り上げると、『アマネ』上空を飛び交う敵機に射撃を開始した。
ウウゥ……ドオン!
機体から火を吹いた敵の戦闘機がくぐもった唸り上げながらを海へと墜落する。
また新たに一機、敵機を撃墜したシーナが対装甲狙撃銃から顔を離し、銃口を下げた。
「……終わりか」
「え?」
突然射撃を止め、何か呟いたシーナにカウルが顔を上げる。
(……?)
状況が分からず辺りを見渡すカウル。
見ると、先ほどまで『アマネ』上空を飛び交っていた敵機たちが、皆同じ方向に飛びながら『アマネ』に背を向けて離れていく。
そして、『アマネ』艦上の対空砲火の砲声も散発的になり、間もなくして皆止んだ。
「撃ち方、やめ!!」
銃座にいたセーグネルが分隊全体に号令する。
──終わった……?
カウルはここ出始めて、敵が撤退していったことを理解した。
(生きてる…………)
両手で握りしめていた対装甲狙撃銃の弾倉が、手のひらから滑り落ちる。
甲板に片膝をついていたカウルは呆然とした表情でゆっくりと立ち上がった。
大きな怪我はない。いつの間にか打ったのか、体の所々が少し痛いのにカウルは今、気がついた。
先ほどまで辺りを覆っていた、敵機のプロペラ音も、対空砲火の砲声も、機銃の銃撃音も全てなくなり、艦が波を切る音だけが聞こえる。
カウルが辺りをゆっくりと見渡す。
砲火の煙も彼方にかき消えて、真っ青な海と、澄んだ水色の空が広がっていた。
「今のうちに事態を収集する!」
すると、セーグネルが声を張り上げた。
カウルが彼女のほうに顔を向ける。
セーグネルは続ける。
「敵の第二波攻撃もあり得る!速やかに弾薬を補給し、体勢を整えよ!」
──第二波攻撃!?
安心しかけたカウルは愕然とした。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

憧れのテイマーになれたけど、何で神獣ばっかりなの⁉
陣ノ内猫子
ファンタジー
神様の使い魔を助けて死んでしまった主人公。
お詫びにと、ずっとなりたいと思っていたテイマーとなって、憧れの異世界へ行けることに。
チートな力と装備を神様からもらって、助けた使い魔を連れ、いざ異世界へGO!
ーーーーーーーーー
これはボクっ子女子が織りなす、チートな冒険物語です。
ご都合主義、あるかもしれません。
一話一話が短いです。
週一回を目標に投稿したと思います。
面白い、続きが読みたいと思って頂けたら幸いです。
誤字脱字があれば教えてください。すぐに修正します。
感想を頂けると嬉しいです。(返事ができないこともあるかもしれません)

ダンマス(異端者)
AN@RCHY
ファンタジー
幼女女神に召喚で呼び出されたシュウ。
元の世界に戻れないことを知って自由気ままに過ごすことを決めた。
人の作ったレールなんかのってやらねえぞ!
地球での痕跡をすべて消されて、幼女女神に召喚された風間修。そこで突然、ダンジョンマスターになって他のダンジョンマスターたちと競えと言われた。
戻りたくても戻る事の出来ない現実を受け入れ、異世界へ旅立つ。
始めこそ異世界だとワクワクしていたが、すぐに碇石からズレおかしなことを始めた。
小説になろうで『AN@CHY』名義で投稿している、同タイトルをアルファポリスにも投稿させていただきます。
向こうの小説を多少修正して投稿しています。
修正をかけながらなので更新ペースは不明です。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

チュートリアル場所でLv9999になっちゃいました。
ss
ファンタジー
これは、ひょんなことから異世界へと飛ばされた青年の物語である。
高校三年生の竹林 健(たけばやし たける)を含めた地球人100名がなんらかの力により異世界で過ごすことを要求される。
そんな中、安全地帯と呼ばれている最初のリスポーン地点の「チュートリアル場所」で主人公 健はあるスキルによりレベルがMAXまで到達した。
そして、チュートリアル場所で出会った一人の青年 相斗と一緒に異世界へと身を乗り出す。
弱体した異世界を救うために二人は立ち上がる。
※基本的には毎日7時投稿です。作者は気まぐれなのであくまで目安くらいに思ってください。設定はかなりガバガバしようですので、暖かい目で見てくれたら嬉しいです。
※コメントはあんまり見れないかもしれません。ランキングが上がっていたら、報告していただいたら嬉しいです。
Hotランキング 1位
ファンタジーランキング 1位
人気ランキング 2位
100000Pt達成!!

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる