エバーラスティング・ネバーエンド──第三人類史

悠木サキ

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第一章

16 直撃

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──ダダダダダッ!
──ガン!ガン!ガン!
 分隊の重機関銃が連続して銃声をあげ、そのなかでシーナの対装甲狙撃銃が断続的な発射音を響かせる。

「おおおっ!」
 勇ましく掩体から身を出したシーナが、こちら目掛けて突入してくる敵戦闘機に、対装甲狙撃銃を撃ちかける。
──ガン!ガン!ガン!
 弾薬を惜しまず、シーナはとにかく狙撃銃を撃ちまくる。
 しかし、はるか遠方の敵の戦闘機群──編隊を組んで飛来する十二機の敵機に目立った変化はない。
──まだ距離が遠いため、発射した弾丸が命中しないのだ。
「ちっ!」シーナが舌を撃つ。
 敵機との距離はまだ二キロはあるはずだ。
 もっと敵が近ければ余裕で当てられるが、その距離では敵の機銃がすでに火を吹いているだろう。
──この遠距離で、やるしかない。
たまぁっ!!」
 間もなく弾倉のなかのすべての弾薬を撃ち尽くすシーナが、カウルに次の弾薬を要求する。
「はい!!」
 カウルは用意していた次の弾倉を素早くシーナに渡し、シーナは手早く弾倉を交換する。
 『アマネ』の対空火器も絶えず弾幕を張り、それに耐えかねた敵機が、一機、また一機と機首の向きを変え進路を『アマネ』から反らす。
 しかし、まだ十機の敵戦闘機が『アマネ』への攻撃を敢行する。

(次の弾薬を──)
 カウルは背嚢から新たな大型弾倉を取り出し、それに『心』を精一杯込める。
 シーナは、掩体に隠れるカウルの横で射撃を続けている。
 訓練のおかげか、あるいは今のシーナに余裕がないのか──とにかくカウルは、日頃の罵声を浴びることなく、遅滞せずに弾薬の補給をこなせていた。
(どうなってるんだ──) 
 しかし、状況が気になったカウルは、掩体から僅かに頭を出して、様子を覗き見た。
(あれが敵──)
 向こうの上空に見える平らな形をした小さな影がいくつか見える。
──ブウウ……
 敵の戦闘機のエンジンの唸りが、こちらまで届いてきた。
「くそがあっ!」
 敵に狙撃銃を射かけるシーナが突然大声で怒鳴り、ビクッとカウルは驚いたカウルは反射的に彼のほうに顔を向ける。
──ガン!ガン!ガン!
 狙撃銃を撃ちまくるシーナであったが、敵の戦闘機の編隊は依然として接近し続け、『アマネ』の右舷に迫る。 
 また、新たに一機が『アマネ』への攻撃を中止し、編隊から離脱する。
 残る敵の編隊九機のうち、シーナの狙っていた敵戦闘機が、機首を引き上げ、回避運動に入った。被弾したか、危険を察知して『アマネ』への突入を断念しのだろう。 
 だが他の戦闘機はまっすぐこちらに突っ込んでくる。
 まだ八機の敵が残っている。

「ちっ!」
 他の奴らは何してやがる!──敵を退けられないでいる味方に心のなかで悪態をつきながら、すぐに他の戦闘機に狙いを変えたシーナであったが──
(間に合わない!)
「伏せろっ!」
 危険を直感したシーナが、狙撃銃を構えながらいきなり叫んだ。 
(えっ──)
 驚いたカウルの見開かれた目端で、敵航空機の機首がキラリと輝いた。
 次の瞬間、カウルたちの目の前──右舷正面の海面に連続して水柱が立った。

「!」
一瞬のうちに、水柱の列がカウルたちに迫る──
バババババッ!
「ぐおっ!!」「わあっ!」
 轟音が鳴り響く。
 カウルのすぐ横で、積まれていた掩体の土嚢が吹き飛び、甲板を覆う木の板がぜ、あたりに火花が散る。
 ブウンと音をたて、その上空を敵戦闘機が飛び越えていった。


「げほっ!」
 本能的に目を瞑り、身を丸めていたカウルが、辺りを覆う煙と塵にむせる。 
──なにが起きた……?
 一瞬のうちの出来事とその衝撃に、呆然とするカウル。
 爆発的な大音響のせいで、耳はキーンと鳴ってよく聞こえない。
 辺りを見ると、それまで身を隠していた掩体の半分──カウルがいなかった側が、中から爆発したかのように形を失って崩れていた。
(──!!)
 煙が晴れ、カウルの目に入ったのは、掩体のずっと後ろ──艦橋の壁際に倒れるシーナの姿であった。
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