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第一章
15 戦闘開始
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「撃ち方──用意!!」
シーナとカウルは、土嚢製の掩体のなかで、セーグネルの号令を聞いていた。
「おい!」
シーナがカウルに怒鳴る。
はっと顔をシーナに向けたカウルにシーナは、
「目一杯込めろ!!」と命令した。
「りょ、了解!!」
上ずった声でカウルが返事をし、震える手で背嚢から大型弾倉を取り出す。
──戦いが、本当に戦いが始まってしまった。
(くそっ──)
死にたくない。必死な思いで、カウルは目をぎゅっと瞑り、両手で握りしめた大型弾倉に『心』を込めた。
カウルの両の手のひらがぱあっと光り、手から弾倉へ『心』が注入される。
「寄越せ!!」
弾倉が準備できるやいなや、すぐさまシーナが弾倉をカウルの手から奪い取る。
「てめえはそこに隠れてろ!!」
弾倉を対装甲狙撃銃に挿入しながら、シーナがカウルに叫ぶ。
「は、はい!」
掩体に身を隠すよう言われたカウルは、シーナの弾薬が入った背嚢と、自分の小銃を抱え、掩体に体を寄せる。
分厚く土嚢が積まれてできた半円形の掩体は、カウルらの半身ほどの高さである。
敵航空機の機銃掃射は、上空から鋭角の角度で降り注ぐが、
しっかり掩体に身を寄せ、その陰に入れば機銃掃射に身を晒さずにすむ。
──来やがれ!!
掩体に体を寄せたカウルに対し、シーナは掩体から上半身を出して対装甲狙撃銃を空に向けた。
──ダダダダダッ!!
『アマネ』の二十五ミリ機銃が火を吹き、接近する敵戦闘機を迎撃する。
その砲火にさらされた敵機の一部はそれを回避しようと機体を旋回させるも、他の敵戦闘機は変わらず『アマネ』の右舷に向けて突っ込んでくる。
(敵機との距離は──)
セーグネルが敵機との距離を目視で測る。
分隊の対空火器──銃座に据えられた重機関銃と対空迎撃要員の持つ対装甲狙撃銃はともに大型の弾薬──十二・七ミリ弾を使用するが、その有効射程は二キロ程度である。
この射程は陸上の戦闘では長距離のように思えるが、対空戦闘ではそうとは言えない。
仮に敵機との距離が二キロあったとしても、時速五百五十キロ以上で飛行する戦闘機は、その距離を十数秒で詰めてくる。
加えて、敵の戦闘機も搭載する機銃が射程に入ればすぐに攻撃を開始する。
敵の攻撃に晒されながらの迎撃は困難で、ほとんど体裁をなさない。
つまり、こちらの射程に入ったらすぐに撃たなければならなかった。
迎撃に許される時間はものの数秒──
(航空機の横幅はおよそ十二メートル……)
セーグネルが対象の大きさをもとに、それが今どれぐらいの大きさに見えるかによって目視による測距を行う。
「……」
目を見開き、敵戦闘機を見つめるセーグネル。
セーグネルの視界のなかで、敵戦闘機が、数ミリの大きさの点になった。
(──今!)
「撃ち方、始め!!」
セーグネルの合図とともに、分隊の火器が火を吹いた。
シーナとカウルは、土嚢製の掩体のなかで、セーグネルの号令を聞いていた。
「おい!」
シーナがカウルに怒鳴る。
はっと顔をシーナに向けたカウルにシーナは、
「目一杯込めろ!!」と命令した。
「りょ、了解!!」
上ずった声でカウルが返事をし、震える手で背嚢から大型弾倉を取り出す。
──戦いが、本当に戦いが始まってしまった。
(くそっ──)
死にたくない。必死な思いで、カウルは目をぎゅっと瞑り、両手で握りしめた大型弾倉に『心』を込めた。
カウルの両の手のひらがぱあっと光り、手から弾倉へ『心』が注入される。
「寄越せ!!」
弾倉が準備できるやいなや、すぐさまシーナが弾倉をカウルの手から奪い取る。
「てめえはそこに隠れてろ!!」
弾倉を対装甲狙撃銃に挿入しながら、シーナがカウルに叫ぶ。
「は、はい!」
掩体に身を隠すよう言われたカウルは、シーナの弾薬が入った背嚢と、自分の小銃を抱え、掩体に体を寄せる。
分厚く土嚢が積まれてできた半円形の掩体は、カウルらの半身ほどの高さである。
敵航空機の機銃掃射は、上空から鋭角の角度で降り注ぐが、
しっかり掩体に身を寄せ、その陰に入れば機銃掃射に身を晒さずにすむ。
──来やがれ!!
掩体に体を寄せたカウルに対し、シーナは掩体から上半身を出して対装甲狙撃銃を空に向けた。
──ダダダダダッ!!
『アマネ』の二十五ミリ機銃が火を吹き、接近する敵戦闘機を迎撃する。
その砲火にさらされた敵機の一部はそれを回避しようと機体を旋回させるも、他の敵戦闘機は変わらず『アマネ』の右舷に向けて突っ込んでくる。
(敵機との距離は──)
セーグネルが敵機との距離を目視で測る。
分隊の対空火器──銃座に据えられた重機関銃と対空迎撃要員の持つ対装甲狙撃銃はともに大型の弾薬──十二・七ミリ弾を使用するが、その有効射程は二キロ程度である。
この射程は陸上の戦闘では長距離のように思えるが、対空戦闘ではそうとは言えない。
仮に敵機との距離が二キロあったとしても、時速五百五十キロ以上で飛行する戦闘機は、その距離を十数秒で詰めてくる。
加えて、敵の戦闘機も搭載する機銃が射程に入ればすぐに攻撃を開始する。
敵の攻撃に晒されながらの迎撃は困難で、ほとんど体裁をなさない。
つまり、こちらの射程に入ったらすぐに撃たなければならなかった。
迎撃に許される時間はものの数秒──
(航空機の横幅はおよそ十二メートル……)
セーグネルが対象の大きさをもとに、それが今どれぐらいの大きさに見えるかによって目視による測距を行う。
「……」
目を見開き、敵戦闘機を見つめるセーグネル。
セーグネルの視界のなかで、敵戦闘機が、数ミリの大きさの点になった。
(──今!)
「撃ち方、始め!!」
セーグネルの合図とともに、分隊の火器が火を吹いた。
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