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第一章
13 空襲
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──教練対空戦闘の訓練から二日経ち、翌日時刻は13:00過ぎ。
晴天の下、穏やかな海原を進む重巡洋艦『アマネ』の艦橋上の対空見張り所で、望遠鏡を覗きこんでいた航海科員が、その視界にその姿を捉えた。
「?──て、敵機発見!」
すぐさま伝声管に向かって大声で叫び、艦橋に連絡する。
「二時の方向より敵機!数、三十!!」
──カンカンカン!
すぐさま艦全体に緊急事態を知らせる警鐘が鳴り響く。
「対空戦闘用意!これは訓練ではない。繰り返す。これは訓練ではない!!」
艦内の全ての乗組員が慌ただしく動き出す。
「急げ急げ急げ!」
艦上歩兵科守備隊の兵士らも、一斉に兵員室に集まり、各々装備を身につけて、甲板に上がった。
「第二分隊用意よし!」
右舷甲板に、カウルたち第二分隊が集合する。
(嘘だろ……)
整列したカウルの呼吸はすでに乱れていた。
──戦いに……戦いになる……!!
いずれはこうなることはわかっていた。しかし、突然直面した現実に、カウルの頭が真っ白になる。
(死ぬ……死ぬ……)
もうすぐ死んでしまうかもしれないという恐怖に、全身が血の気を失い、手足の先の感覚がなくなる。
「各員、対空戦闘用意!!」
分隊の前に立つセーグネルが、大声で号令する。彼女の声も緊張で強ばっていた。
──敵の空襲が来るなんて。
まさかの事態に、セーグネルは唇を噛む。
会敵が予想される敵部隊は、駆逐艦を中心とする掃海部隊であったはず。
艦上歩兵科の小隊長及び分隊長が集まった事前打ち合わせではそのように伝達されていた。
(航空戦力を有しているなら、敵は空母機動部隊……でも敵機の数は多くない)
敵機が三十機ほどなら、敵の母艦は正規空母ではなく、軽空母あたり。
敵の掃海部隊の護衛役として付随している空母の艦載機だろうか。
しかし、数がそんなに多くないとはいえ、航空戦力を有しない自軍艦隊にとっては十分脅威である。
また、敵は自分たちの存在を先に把握していた。それなら、どこかで敵の偵察機が飛来していたはずである。それにも気がつかなかったなんて──
完全に虚を突かれた敵の先制攻撃に、自分たちは浮き足立とうとしている。
(落ち着いて。訓練通りに──)
士官学校でも、艦に乗艦したあとも、訓練してきたことだ。
セーグネルは冷静を保ちながら、隊員たちに指示を出す。
「右舷、対空戦闘用意!」
敵の航空機部隊は、二時の方向──ちょうど自分たちのいるところに向けて真っ直ぐ突っ込んでくる。
分隊の各員が、それぞれの持ち場──各々の掩体に入り、迎撃の準備にかかった。
晴天の下、穏やかな海原を進む重巡洋艦『アマネ』の艦橋上の対空見張り所で、望遠鏡を覗きこんでいた航海科員が、その視界にその姿を捉えた。
「?──て、敵機発見!」
すぐさま伝声管に向かって大声で叫び、艦橋に連絡する。
「二時の方向より敵機!数、三十!!」
──カンカンカン!
すぐさま艦全体に緊急事態を知らせる警鐘が鳴り響く。
「対空戦闘用意!これは訓練ではない。繰り返す。これは訓練ではない!!」
艦内の全ての乗組員が慌ただしく動き出す。
「急げ急げ急げ!」
艦上歩兵科守備隊の兵士らも、一斉に兵員室に集まり、各々装備を身につけて、甲板に上がった。
「第二分隊用意よし!」
右舷甲板に、カウルたち第二分隊が集合する。
(嘘だろ……)
整列したカウルの呼吸はすでに乱れていた。
──戦いに……戦いになる……!!
いずれはこうなることはわかっていた。しかし、突然直面した現実に、カウルの頭が真っ白になる。
(死ぬ……死ぬ……)
もうすぐ死んでしまうかもしれないという恐怖に、全身が血の気を失い、手足の先の感覚がなくなる。
「各員、対空戦闘用意!!」
分隊の前に立つセーグネルが、大声で号令する。彼女の声も緊張で強ばっていた。
──敵の空襲が来るなんて。
まさかの事態に、セーグネルは唇を噛む。
会敵が予想される敵部隊は、駆逐艦を中心とする掃海部隊であったはず。
艦上歩兵科の小隊長及び分隊長が集まった事前打ち合わせではそのように伝達されていた。
(航空戦力を有しているなら、敵は空母機動部隊……でも敵機の数は多くない)
敵機が三十機ほどなら、敵の母艦は正規空母ではなく、軽空母あたり。
敵の掃海部隊の護衛役として付随している空母の艦載機だろうか。
しかし、数がそんなに多くないとはいえ、航空戦力を有しない自軍艦隊にとっては十分脅威である。
また、敵は自分たちの存在を先に把握していた。それなら、どこかで敵の偵察機が飛来していたはずである。それにも気がつかなかったなんて──
完全に虚を突かれた敵の先制攻撃に、自分たちは浮き足立とうとしている。
(落ち着いて。訓練通りに──)
士官学校でも、艦に乗艦したあとも、訓練してきたことだ。
セーグネルは冷静を保ちながら、隊員たちに指示を出す。
「右舷、対空戦闘用意!」
敵の航空機部隊は、二時の方向──ちょうど自分たちのいるところに向けて真っ直ぐ突っ込んでくる。
分隊の各員が、それぞれの持ち場──各々の掩体に入り、迎撃の準備にかかった。
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