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第一章
9 消耗
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「おい!さっさとしろ!!」
『心』の注入に手間取るカウルに、シーナが容赦ない怒号を飛ばす。
(くそっ……)
──こっちの気も知らないで、ばかすか撃ちやがって。
湯水のごとく弾薬を消費するシーナに、内心恨み言を言いながら、カウルはなけなしの『心』を弾倉に込め、シーナに渡す。
「──もっと『心』込めろ、ボケ!!」
弾倉を掴むやいなや、シーナが疲労困憊しているカウルに追撃の罵声を浴びせる。
シーナは弾倉に込められたカウルの『心』の質と量を感じ取っていた。
これはある程度『鼓動』を操れる者なら備わっている『感覚』である。
『鼓動』という『心』を操る術は、その者の心の感覚を常人より敏感にする。
そのため、対象にどれだけの『心』が込められたかを感じとることができる。
また、『感覚』自体もより精度を増す。そのため、感覚的に──いわば勘で──物事を行うときのその精度も、常人のそれをはるかに上回る。
実際、シーナは高速で飛来し目の前を通過していく曳航標的に、目で照準をつけて射撃しているわけではない。
動く対象に射撃するとき──これは『未来位置予測射撃』と呼ばれるが──、射撃を行う者は、対象までの距離と、発射した弾丸が対象に届くまでの時間、そしてその時間のうちに対象が移動しているであろう未来の位置、これらすべてを踏まえなければ射撃を命中させることはできない。
シーナはこの複雑な射撃を頭で計算して行っているのではない。
ここでこう撃ったら当たるだろうという『感覚』で射撃しているのである。
このような当てずっぽうな射撃は常人では本来命中しようがない。
しかし、『鼓動』を操り、類い稀な『感性』を持つ特別な者──シーナたち『対空迎撃要員』はこれを可能としていた。
「ちっ!!」
弾薬に込められた『心』が不十分であると感じたシーナは、狙撃銃に挿入した弾倉に、自身の左手を当てた。
シーナの左手から力強く輝く光の粒子が発せられ、弾倉に吸い込まれていく。
自身の『鼓動』の術により、弾薬に『心』を充填したシーナは、銃のボルトを苛ついた様子で乱暴に引き、引き金に指をかける。
「はあ……はあ……」
体のほうは一切動かしていないカウルであったが、『心』を消耗した疲労から、甲板に手をつき荒く息をする。
ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!
そんなカウルをよそに射撃を続けるシーナ。
銃の爆発的な銃声が、カウルの頭を殴りつける。
「撃ち方やめ!!」
甲板各所の分隊に、一斉に号令がかかる。
訓練が終わった頃、カウルはまともに立つことすらできなくなっていた。
『心』の注入に手間取るカウルに、シーナが容赦ない怒号を飛ばす。
(くそっ……)
──こっちの気も知らないで、ばかすか撃ちやがって。
湯水のごとく弾薬を消費するシーナに、内心恨み言を言いながら、カウルはなけなしの『心』を弾倉に込め、シーナに渡す。
「──もっと『心』込めろ、ボケ!!」
弾倉を掴むやいなや、シーナが疲労困憊しているカウルに追撃の罵声を浴びせる。
シーナは弾倉に込められたカウルの『心』の質と量を感じ取っていた。
これはある程度『鼓動』を操れる者なら備わっている『感覚』である。
『鼓動』という『心』を操る術は、その者の心の感覚を常人より敏感にする。
そのため、対象にどれだけの『心』が込められたかを感じとることができる。
また、『感覚』自体もより精度を増す。そのため、感覚的に──いわば勘で──物事を行うときのその精度も、常人のそれをはるかに上回る。
実際、シーナは高速で飛来し目の前を通過していく曳航標的に、目で照準をつけて射撃しているわけではない。
動く対象に射撃するとき──これは『未来位置予測射撃』と呼ばれるが──、射撃を行う者は、対象までの距離と、発射した弾丸が対象に届くまでの時間、そしてその時間のうちに対象が移動しているであろう未来の位置、これらすべてを踏まえなければ射撃を命中させることはできない。
シーナはこの複雑な射撃を頭で計算して行っているのではない。
ここでこう撃ったら当たるだろうという『感覚』で射撃しているのである。
このような当てずっぽうな射撃は常人では本来命中しようがない。
しかし、『鼓動』を操り、類い稀な『感性』を持つ特別な者──シーナたち『対空迎撃要員』はこれを可能としていた。
「ちっ!!」
弾薬に込められた『心』が不十分であると感じたシーナは、狙撃銃に挿入した弾倉に、自身の左手を当てた。
シーナの左手から力強く輝く光の粒子が発せられ、弾倉に吸い込まれていく。
自身の『鼓動』の術により、弾薬に『心』を充填したシーナは、銃のボルトを苛ついた様子で乱暴に引き、引き金に指をかける。
「はあ……はあ……」
体のほうは一切動かしていないカウルであったが、『心』を消耗した疲労から、甲板に手をつき荒く息をする。
ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!
そんなカウルをよそに射撃を続けるシーナ。
銃の爆発的な銃声が、カウルの頭を殴りつける。
「撃ち方やめ!!」
甲板各所の分隊に、一斉に号令がかかる。
訓練が終わった頃、カウルはまともに立つことすらできなくなっていた。
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