エバーラスティング・ネバーエンド──第三人類史

悠木サキ

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第一章

3 シーナ=スレヴィアス

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「すみません!」
いきなりの怒鳴り声に、カウルが反射的に萎縮する。
「ちっ!」
これみよがしの大きな舌打ちをして、シーナ=スレヴィアスが鬱屈そうに伸びた前髪の陰から覗く三白眼の大きな眼でじろりとカウルを睨む。
 その背には、カウルが持つのと同じ小銃が掛けられている。
 だが特に目を引くのは、この少年の腕にかかえられている、長大な銃器であった。
 対装甲狙撃銃と呼ばれるその銃器は、全長140センチほど。シーナの半身よりずっと長いその銃は、重機関銃で使われるのと同じ大型の弾薬を使用する。
 そのため、携帯できる火器でありながら、その射程と威力は小銃を遥かにしのぎ、装甲で守られた対象すら破壊する性能を有している。
「……」
 自分より小柄なシーナだったが、その鋭い剣幕にカウルは目を伏せ、その隣に立った。
 決してカウルは、一番遅かったわけではない。カウルが並んでいる間も、同じ配置場所の他の隊員が後からやってきた。
 重巡『アマネ』に乗艦して以来、カウルはこの隣の少年──シーナ=スレヴィアスに目の敵にされているのである。
 シーナの階級は上等兵で、新兵訓練を終えて配属されたばかりの二等兵のカウルより二つ上のカウルの上官であった。
 また、カウルの任務はシーナの補佐であり、そのためカウルとシーナは二人一組のタッグを組まされている。
「このノロマが」
整列してもなお、シーナはカウルに毒を吐く。
 シーナは、実戦経験のない未熟な二等兵であるカウルが気に入らない様子であった。

「第二分隊、整列!」
 全員が揃い、整列する隊員たちの前にセーグネル=ハートクレア准尉が出た。
 分隊──カウルたち艦上歩兵科は六つの分隊で一個小隊を構成する。その内訳は、一番二番主砲のある艦の正面を守備する第一分隊、右舷前方の第二分隊、右舷後方の第三分隊、左舷前方を守る第四分隊、左舷後方の第五分隊、そして三番四番主砲のある艦の後方を守る第六分隊である。
 カウルたち第二分隊を率いるのが、このセーグネル=ハートクレア准尉である。
 階級は少尉の一歩手前の准尉で、士官学校を出た士官──カウルたち『兵』を指揮する上級職である。
「教練対空戦闘用意!」
 セーグネルがよく通る声で隊員たちに号令する。 
 艶やかな銀の髪を鉄帽のなかにまとめているが、こぼれた数条が風になびく。澄んだ水色の瞳をした美しい顔立ちの少女だが、訓練である今はキリッと表情を引き締めていた。
 重厚な防弾装具に身を包んでいるが、その上からでもその体の華奢さが覗く。
 一見、小柄な少女に過ぎない彼女が分隊の指揮官を務めるにはそのがある。
そしてそれは、近年になって作られたばかりのである『艦上歩兵科』も同様だった。
 
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