15 / 23
二章:人狼ゲームスタート
11話:牙王 ON 二日目
しおりを挟む
昨日と同じ、玄関ホールの液晶モニタ前。
朝会の時間になると、画面に牙王が出現した。
「さあ、始まるザマスお!?
イクでガンスお!
ふんガオー!」
「「マトモに始めなさいよっ!」」
牙王が叫んだ後に、少年合唱団のハモり。
例によって、よく意味が分からない。
牙王は、まるでオーケストラの指揮者が、
演奏を終えた後のような、
目を閉じた安らかなドヤ顔をしていた。
「オイラも一応、種族としては狼人間なんで、
怪物の仲間ということになるお。
だから、今のあいさつをしたんだお」
説明をされても、なんとも面白くはないが、
とにかく、そんな茶番はどうでもいい。
とつぜん、画面にセーラー服の少女が映る。
やはり頭には、袋がかぶせられていて、顔は見えない。
そして、カメラがスカートの部分をアップする。
と、スカートの内股の部分が濡れているようだ。
「アソコがむずむず、なぁ~んだ?」
「「おしっこ~!」」
また、牙王と合唱団のハモり。
昨日と同じパターンだ。
「ぷ、ぷぷ……、怖くて漏らしちゃったようだお。
漏らすタイミングがちょっと早かったんだお。
女の子なのに早漏とはこれいかにだお。ぷぷぷ」
何が面白いのか、牙王は笑いをこらえている。
そして、少女の足下の床が開き、首が吊られ、
足をバタバタもがいた後、おそらく死亡した。
その画面を見た女子たちは、小さな叫びをあげたが、
その反応は昨日ほど大きくない。
みんな、この異常な状況に慣れてしまったのか。
「さて、だお。こうして処刑風景を見せているのは、
みんなにもっと、危機感を覚えてもらいたいからだお。
処刑と殺人の日は、刻々と迫っているだロウが?」
死の宣告を受けたようで、女子はみんな不快な表情をする。
古里太にも、不快な気持ちはあったが、それよりも、
勝ってハーレムを手に入れたい、という欲望が上回っていた。
「で、だお。あと数日で死ぬかもしれないのに、
ひとりで部屋にヒキこもって、
一日過ごすのは虚しいだロウ?
みんな、もっと積極的に動いて欲しいお。
『命短し、恋せよ乙女』!」
牙王は、演説的というか、演劇的というか、
わざとらしい言い方で、煽るように言う。
たしかに、今日から積極的に動きたい、と古里太は思う。
昨日は、委員長のすごい剣幕に押された。
そのため、考えをまとめる時間も必要とはいえ、
昨日はほぼ様子見で、丸一日消費してしまった。
しかし、あと数日の内に、死んでしまう可能性がある。
だから、たとえ負けたとしても、後悔が残らないよう、
生きている内に、ハーレムだけは実現させておきたい。
さしあたり、今日予定されている個別面談で、
女子たちにひとりずつ、揺さぶりを掛けてみよう。
古里太は、期待と不安に胸を高鳴らせた。
「……それじゃ、昨日言った通り、
朝会の質問タイムを設けるお。
みんな質問を考えてきたかな?」
画面の牙王がそう言うと、
女子たちは互いに顔を見合わせた。
トップバッターにおどり出るには、少し勇気が要る。
そうしている内、ひとりが前に歩み出た。
他の女子も着ている黒セーラー服の上から、
フード付きのパーカーを、ひとりだけ着ていて、顔が見えない。
が、誰だかはすぐに分かった。身長が低いからだ。
兎だ。パーカーをどこから持ってきたのか、
それが古里太は少し気になったが、
すぐに大した問題ではないと思い直す。
まさか、パーカーを着てるかどうかで、
人狼役の犯人かどうか、
見分けられるわけでもないだろうから。
牙王への質問者のトップである、兎が発言した。
「これは誘拐、監禁っていう犯罪だよ!?
警察に捕まるよ! おうちに返して!!」
フード付きのパーカーを着た兎は、
小さな身体を震わせながら、
画面に向かって大きな声で叫んだ。
「は? この娘、馬鹿ですかお?
一日考えた結果がそれですかお?
一日一回しかないチャンスを棒に振ったお?
つーかそもそも、質問になってないだロウが!」
牙王は即座に質問に答える。
古里太たちの声は、リアルタイムで拾えているようだ。
どこかに録音するマイクが隠されているのだろう。
「警察の介入には、一切期待すんなお。
ここは、警察の手の届かない所だお」
牙王は、冷淡に言いはなつ。
兎以外の女子も無言で冷静に見ていた。
「う、嘘よー!!」
兎は、ヒステリックに金切り声をあげた。
子供が発する奇声のような、耳を刺す高音だ。
「やれやれ、小学生みたいで、面倒くさい娘だお。
……古里太クン、キミがどう考えるか、
ちょっと話してみてくれお」
こちらから質問するのだと思っていたので、
急に牙王から話を振られて、困惑した古里太だったが、
以下のようなことを、全員の前で話した。
牙王の言っていることが、ハッタリかどうかは分からない。
しかし、古里太も、警察の発見と救助には期待してなかった。
というのも、二回の首つり動画を見るに、
どうやら過去にも、デスゲームは開催されていたようだ。
すると、殺人が複数回行われていたのだから、
そう簡単に露見するような運営体制だったら、
そもそも、今回のゲームも開かれていないだろう。
いつかは悪事が暴露される日が来るのかもしれないが、
あと数日の内に、たまたま発見される確率は低いはずだ。
というのもだいたい、この人狼館は、二十部屋以上ある豪邸だ。
この規模の豪邸を、所有者にバレずに拝借するのは困難だろう。
だから、自前で建物を建てるか、もしくは、
廃墟のリフォームやリノベーションが必要で、
その建設費や工事費で、億単位の金が掛かってしまう。
すると、その費用から推測するに、このデスゲームは、
そうとう大規模な犯罪組織が仕組んだものだ。
したがって、そう簡単に外部からの救助は期待できない。
「ほう~、古里太クンも、それなりに考えてるんだロウね。
少なくとも、この見た目小学生のロリッ娘ほど、
おバカなオムツ、いやオツムじゃないようだお」
「アタシは、小学生じゃないモン!
オムツもはいてないモン!
ひとりでできるモン!」
古里太の解説を聞いて、それなりに評価した牙王は、
兎の反応を無視して、次の質問者を呼ぶ。
「はい、次の患者さん、ドゾー」
何だか兎をコケにした言い方だったが、
それを聞いた次の質問者は、
まったくひるむことなく前に歩み出てきた。
朝会の時間になると、画面に牙王が出現した。
「さあ、始まるザマスお!?
イクでガンスお!
ふんガオー!」
「「マトモに始めなさいよっ!」」
牙王が叫んだ後に、少年合唱団のハモり。
例によって、よく意味が分からない。
牙王は、まるでオーケストラの指揮者が、
演奏を終えた後のような、
目を閉じた安らかなドヤ顔をしていた。
「オイラも一応、種族としては狼人間なんで、
怪物の仲間ということになるお。
だから、今のあいさつをしたんだお」
説明をされても、なんとも面白くはないが、
とにかく、そんな茶番はどうでもいい。
とつぜん、画面にセーラー服の少女が映る。
やはり頭には、袋がかぶせられていて、顔は見えない。
そして、カメラがスカートの部分をアップする。
と、スカートの内股の部分が濡れているようだ。
「アソコがむずむず、なぁ~んだ?」
「「おしっこ~!」」
また、牙王と合唱団のハモり。
昨日と同じパターンだ。
「ぷ、ぷぷ……、怖くて漏らしちゃったようだお。
漏らすタイミングがちょっと早かったんだお。
女の子なのに早漏とはこれいかにだお。ぷぷぷ」
何が面白いのか、牙王は笑いをこらえている。
そして、少女の足下の床が開き、首が吊られ、
足をバタバタもがいた後、おそらく死亡した。
その画面を見た女子たちは、小さな叫びをあげたが、
その反応は昨日ほど大きくない。
みんな、この異常な状況に慣れてしまったのか。
「さて、だお。こうして処刑風景を見せているのは、
みんなにもっと、危機感を覚えてもらいたいからだお。
処刑と殺人の日は、刻々と迫っているだロウが?」
死の宣告を受けたようで、女子はみんな不快な表情をする。
古里太にも、不快な気持ちはあったが、それよりも、
勝ってハーレムを手に入れたい、という欲望が上回っていた。
「で、だお。あと数日で死ぬかもしれないのに、
ひとりで部屋にヒキこもって、
一日過ごすのは虚しいだロウ?
みんな、もっと積極的に動いて欲しいお。
『命短し、恋せよ乙女』!」
牙王は、演説的というか、演劇的というか、
わざとらしい言い方で、煽るように言う。
たしかに、今日から積極的に動きたい、と古里太は思う。
昨日は、委員長のすごい剣幕に押された。
そのため、考えをまとめる時間も必要とはいえ、
昨日はほぼ様子見で、丸一日消費してしまった。
しかし、あと数日の内に、死んでしまう可能性がある。
だから、たとえ負けたとしても、後悔が残らないよう、
生きている内に、ハーレムだけは実現させておきたい。
さしあたり、今日予定されている個別面談で、
女子たちにひとりずつ、揺さぶりを掛けてみよう。
古里太は、期待と不安に胸を高鳴らせた。
「……それじゃ、昨日言った通り、
朝会の質問タイムを設けるお。
みんな質問を考えてきたかな?」
画面の牙王がそう言うと、
女子たちは互いに顔を見合わせた。
トップバッターにおどり出るには、少し勇気が要る。
そうしている内、ひとりが前に歩み出た。
他の女子も着ている黒セーラー服の上から、
フード付きのパーカーを、ひとりだけ着ていて、顔が見えない。
が、誰だかはすぐに分かった。身長が低いからだ。
兎だ。パーカーをどこから持ってきたのか、
それが古里太は少し気になったが、
すぐに大した問題ではないと思い直す。
まさか、パーカーを着てるかどうかで、
人狼役の犯人かどうか、
見分けられるわけでもないだろうから。
牙王への質問者のトップである、兎が発言した。
「これは誘拐、監禁っていう犯罪だよ!?
警察に捕まるよ! おうちに返して!!」
フード付きのパーカーを着た兎は、
小さな身体を震わせながら、
画面に向かって大きな声で叫んだ。
「は? この娘、馬鹿ですかお?
一日考えた結果がそれですかお?
一日一回しかないチャンスを棒に振ったお?
つーかそもそも、質問になってないだロウが!」
牙王は即座に質問に答える。
古里太たちの声は、リアルタイムで拾えているようだ。
どこかに録音するマイクが隠されているのだろう。
「警察の介入には、一切期待すんなお。
ここは、警察の手の届かない所だお」
牙王は、冷淡に言いはなつ。
兎以外の女子も無言で冷静に見ていた。
「う、嘘よー!!」
兎は、ヒステリックに金切り声をあげた。
子供が発する奇声のような、耳を刺す高音だ。
「やれやれ、小学生みたいで、面倒くさい娘だお。
……古里太クン、キミがどう考えるか、
ちょっと話してみてくれお」
こちらから質問するのだと思っていたので、
急に牙王から話を振られて、困惑した古里太だったが、
以下のようなことを、全員の前で話した。
牙王の言っていることが、ハッタリかどうかは分からない。
しかし、古里太も、警察の発見と救助には期待してなかった。
というのも、二回の首つり動画を見るに、
どうやら過去にも、デスゲームは開催されていたようだ。
すると、殺人が複数回行われていたのだから、
そう簡単に露見するような運営体制だったら、
そもそも、今回のゲームも開かれていないだろう。
いつかは悪事が暴露される日が来るのかもしれないが、
あと数日の内に、たまたま発見される確率は低いはずだ。
というのもだいたい、この人狼館は、二十部屋以上ある豪邸だ。
この規模の豪邸を、所有者にバレずに拝借するのは困難だろう。
だから、自前で建物を建てるか、もしくは、
廃墟のリフォームやリノベーションが必要で、
その建設費や工事費で、億単位の金が掛かってしまう。
すると、その費用から推測するに、このデスゲームは、
そうとう大規模な犯罪組織が仕組んだものだ。
したがって、そう簡単に外部からの救助は期待できない。
「ほう~、古里太クンも、それなりに考えてるんだロウね。
少なくとも、この見た目小学生のロリッ娘ほど、
おバカなオムツ、いやオツムじゃないようだお」
「アタシは、小学生じゃないモン!
オムツもはいてないモン!
ひとりでできるモン!」
古里太の解説を聞いて、それなりに評価した牙王は、
兎の反応を無視して、次の質問者を呼ぶ。
「はい、次の患者さん、ドゾー」
何だか兎をコケにした言い方だったが、
それを聞いた次の質問者は、
まったくひるむことなく前に歩み出てきた。
0
お気に入りに追加
170
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる