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一章:人狼チュートリアル

6話:自己紹介 BY 愉快な仲間たち

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「お次は誰ッスか? うさピョンいく?」
「うん……」

湾子の次に自己紹介をしたのは、
この中で一番、背が小さな女の子だった。

もちろん、古里太たちと同年代だが、
それよりも見た目は幼く見える。

ピンク色のツインテールが、いかにも少女らしい。
その根本は赤いリボンで結び、
髪先は黒のセーラー服に掛かる。
黒と赤とピンク、色彩の対比が目に鮮やかだ。




「アタシは、山野兎(やまの・うさぎ)ですぅ」

湾子の友達だから、古里太にとっては、
「トモダチのトモダチ」で、前から知っていた。

しかし、兎は人見知りする方で、
しかも男子と話すのはもっと尻込みするので、
そんなに仲良く話した機会はほとんどない。

「えっと……、こんなことになってしまってぇ、
 心細いのでぇ、イジメないでくださいぃ!
 アタシは寂しいと死んじゃうのでぇ、
 みんな、ウサギとトモダチになってねぇ~?」

髪の毛を兎の耳のように、頭の上にかざして、
不安そうに少し震えた声で、兎はそう言った。


彼女は以前、林間学校で、倒れたことがある。
彼女の話では、なんでも霊感に反応したとか言っていたが、
保健の先生は、たんなる貧血だと言っていた。

いかにも女子っぽいエピソードで、
男子からすると違和感があるが、
しかし心の感受性が違うのだろう。

むしろ、湾子のような頑丈な女の方が珍しいかもしれないし、
兎のか弱さが庇護欲をそそると、一部の男子からは人気だった。

彼女に人狼のイメージはまったく湧かないのだが、
イメージで人狼役が決まっているわけでもないだろう。
いくら可愛らしいからといって、油断は禁物だ。


次に自己紹介する番が回ってきたのは、青髪の少女だった。
ロングのストレートで前髪をそろえている。
いわゆる「姫カット」や「パッツン」という髪型か。
黒のセーラー服によく似合っている。




「ワタシは、岸田小音子(きしだ・こねこ)。
 狼の森に迷い込んだ、かわいそうな子猫ちゃんよ。
 みんな仲良くして欲しいわ。オオカミさん以外はね……」

兎と違って、心の余裕を感じさせる、
ちょっと芝居がかったしゃべり方だ。


彼女は、約一年前に転校生として、
古里太や湾子たちの学園に入学してきた。

だから、積極的に深く交流したことはないが、
おっとりした大和撫子な感じと、小悪魔的な魅力が同居していて、
やはり男子に隠れファンが大勢いた。

「一週間……あるかどうか分からないけれど、
 男女問わずたっぷり可愛がって欲しいわね」

小音子は、古里太の方をちらりと見て微笑む。
彼女の言葉は柔らかく耳に心地良かった。

しかし、人狼が人狼らしく、凶暴に振る舞う訳がない。
彼女は、猫をかぶっているのかもしれない。やはり油断は禁物。


小音子の次に自己紹介するのは、金髪の少女。
その髪はウェーブが掛かり、先端は縦ロール。

彼女は、サラサラと流れる自慢の髪を、
手で掻き分けたり、指でいじったりしている。




「わたくしは谷唐貴常(たにから・きつね)。
 皆様お見知りおき、よろしくて?」
 
こんな状況でも、話し方は自信にあふれ、堂々としたものだ。

彼女は、日本人離れした、整ったルックスをしている。
やはり転校生で、海外からの帰国子女だ。
といっても、日本語は流暢(りゅうちょう)だ。


「庶民の暮らしにうとい所はあるけれど、
 このピンチにあたっては、
 わたくしも尽力するつもりですわ」

実家が金持ちで、彼女はお嬢様らしい。
なにかと目立つ人間なので、うわさ話で伝わってくる。

もっとも、本人にそれを直接確かめたことはなかった。
近寄りがたい雰囲気なので、なかなか話しかけられない。

お嬢様はプライドが高いものと相場が決まっているが、
それだけでなく、内に秘められた意志の強さを感じる。

どの少女も人狼の可能性はあるが、
もし彼女が人狼だったら、強敵になりそうな予感がした。
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