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二章:人狼ゲームスタート

18話:晩餐 OF 最初

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もうすぐ夕食の時間だ。古里太は、台所に来ていた。
館の一階北東に食堂があり、その隣が台所だ。

台所では、女子たちが料理をしていた。
ここに来てから、殺伐とした雰囲気の時が多かったが、
今は家庭科の授業のように、
わりと和んだ空気で料理を作っている。

あの委員長も、女子たちに対しては、
あんなツンツンした態度は取っていない。
自分に対しても同じように接してくれればいいのに、
と古里太は不満な印象を彼女に抱く。

大きな鍋がコンロの火に掛けられているが、
何かの麺類をゆでているようだ。

まあ、急な寄せ集めのメンバーで、
そんな複雑な料理は作れないだろうし、
麺類にしたのは無難な判断だろう。


ところでもし、いつ襲撃しても構わないルールだったら、
こんな平和な空気ではないだろう。
安全な期間が決まっていると、
安心して過ごせるメリットがプレイヤーにある。

しかし、デスゲームの運営側としては、
どんなメリットがあるのだろうか?
殺人だけでなく、ハーレムやこうした生活の風景まで、
見せ物にするためだろうか?

戦闘パートと会話パートがある、
エロゲやギャルゲのようなイベントに
しようとしているのだろうか?
もしそうなら、まさに「リアル美少女ゲーム」だ。


とくに料理で手伝えることもないようなので、
なんとなく古里太は冷蔵庫を開けてみた。
飲食店にあるような大型冷蔵庫だ。

中には、いろいろな食材が入っていた。
この状況下なので、毒が気になったが、
おそらく人を殺すような強力な毒は、
入っていないのではないかと考えた。

なぜなら、プレイヤーが全員死亡しては、
ゲームが成立しなくなってしまう。

あるいはもし、特定の人物に毒を食べさせようとしても、
人狼はふたり以上を殺せないルールなのだし、
自分も食事を取る、というより取らせられる。
だから、全員が同じ食材の食事を食べるよう注意すれば、
ルールを守る限り、毒で死ぬことはないはずだ。

そもそも、だからこうして、一同で集まって食事を取るのだ。
昨日は缶詰などを適当に取って各自の部屋で食べていたが、
「晩さん会」にするのはどうかと、古里太が提案したのだった。

また、夕食以外の朝食、昼食は、料理が面倒なので、
結局、インスタントやレトルトや缶詰などになるが、
なるべく同じ種類のものを全員に分けるようにした。

ただし、注射で皮下に直接注入するような毒なら、
食料とまた別に、使用される可能性があるだろう。


冷蔵庫には冷凍庫もついている。
そちらには、今回のメンバーが使うかどうかともかく、
何かを冷やすためなのか、一枚の巨大な氷が作られていた。

氷の上側にも、容器がかぶせられていて、
それによって、氷の上側にデコボコが形作られている。

これは何のためだろうかと、古里太は疑問に思ったが、
氷が溶けやすいよう、エンジンのラジエーターのように、
表面積を増やしているのではないか、と彼は推測した。


「「いただきまーす」」

全員が食堂の大きなテーブルの周囲に座り、
いよいよ食べ始めることとなった。

夕食はスパゲッティとシチューとサラダ、
それにコーヒーとアイスクリームだった。

食材が良いのか、調理が良いのか、
それなりに美味しい食事になっていた。

高級レストランなどとは言わないまでも、
ファミレスくらいの味にはなっているだろう。

あるいはもしかしたら、こんな危機的な状況だから、
美味しく食べられる、というのもあるかもしれない。


個室でひとりで食べていた昨日と違って、
会話しながら食べると、やはりにぎやかだ。

しかし、古里太は湾子と、お互いを意識するあまり、
ややギクシャクした会話になってしまう。

「こ、古里太くん、お、おいしいっスね……」
「う、うん。湾子さん。おいしいよね」

まるで、お見合いのようだ。

「はい、あーんしてぇ?」

とつぜん、隣の小音子がスプーンを差し出してきた。
魚が釣りざおのエサに食いつくように、
パクッとスプーンをくわえる。
アイスの冷たく甘い食感が口内に広がる。

小音子は、そのスプーンをペロリと舐める。
もちろん、間接キスだが、そんなことお構いなしだ。

その様子を見た湾子も負けじと、
スプーンをシュビっと突き出す。

「コリくん、あーん!」

彼はまた、パクッとくわえる。やはり冷たく甘い。
そのスプーンを、彼女は犬のように、
ペロペロと舐めている。

(おっ、ちょっとハーレムっぽくなってきたかな?)

古里太は、少し嬉しくなってきた。
マンガ・アニメ・ゲームくらいでしか見たことのない
ハーレムが実現しそうなことに感動を覚えていた。

しかし、デレデレしているわけにもいかない。
夕食で、新ルール発表の予定があったのだ。


「えー、みなさん。人狼館に来て最初の晩さん、
 ご歓談中のところ、非常に恐縮ですが、
 『新ローカルルール』の発表があります」

「「……」」

女子たちは静まりかえった。
古里太は、ローカルルールを宣言する。

「まず、二階の『大浴場は混浴』にします。
 混浴が嫌な人は、一階のシャワー室を使って下さい」

女子たちはざわめいた。
古里太はお構いなしに、
次のルールを宣言する。


「また、消灯時間の午後十時から、点灯時間の午前八時までの、
 自分の個室外へ外出している女子に対して、
 ハーレムマスターがレイプすることを可能にします」

女子たちは、本気で騒ぎ出した。

「みなさま、静粛に、静粛に!」

法廷ドラマのような芝居がかったセリフを
大まじめに言った古里太は、少し深呼吸をしてから、
本命のローカルルールを全員に宣言した。


「人狼と予想されるプレイヤーの処刑に、選挙制を導入します。
 すなわち、選挙結果に従って、ボクの処刑指名権を行使します」

これを聞いた女子たちは、さっきのように騒ぎ出さない。
自分にとって有利なのか、不利なのか、
とっさに判断できないからだろう。

騒ぐかと思われた委員長も、必死にメモを取っている。
メモを携帯してきたのは、さすが準備が良い。

「ただし、導入に際しては条件があります。
 ひとつは、投票数が上位同数になった場合、
 ハーレムマスターが処刑対象を決定します」

これを聞いて、委員長がまたもや、ブツブツ言い始めた。

「みなさま、静粛に! まだ、発表の続きがあります」

しばらく間を取ってから、古里太は続けた。


「もうひとつ、ハーレムマスターは、
 投票権を最初から一票持っています。
 それ以外の者は、ハーレムマスターとセックスすることで、
 はじめて投票権が与えられます」

「握手券付きCD」ならぬ、
「投票権付きセックス」というのが、
古里太のアイディアだった。

人狼探しのゲームと、
ハーレムづくりとを両立させるための
アイディアだった。

だが、委員長を筆頭に、いよいよ女子たちが騒ぎ出し、
その後の晩さん会は、大荒れとなるのだった。
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