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二章:人狼ゲームスタート

15話:面談 TO 兎

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貴常の次は、兎の個人面談だ。

兎の個室に入ると、彼女の背が小さいため、
シックな室内と不釣り合いだった。

ただ一方で、そのミスマッチさが、
なにかジュニア・アイドルの写真集のようで、
彼女の可愛さを引き立てていた。

兎は、黒セーラーの上に、
灰色のフード付きパーカーを羽織っていた。

前のポケットが、左右つながっているタイプで、
彼女はそこに手を入れている。
もしかして、寒いのだろうか?


「兎ちゃん、そのパーカーはどこにあったの?」

古里太は、そのパーカーが気になって質問した。

「二階のウォークイン・クローゼットだよ」

兎は幼い声、いわゆるロリボイスで答えた。
首をかしげるようなしぐさもまた、幼く可愛らしい。
まるで、女の子の人形がしゃべっているようだ。


古里太は、まだクローゼットに行っておらず、
今言われるまで、その存在を知らなかった。

今日は個別面談で個室を訪問しているが、
明日は部屋を一通り、軽く確認しておきたい。

殺人にも関係してくるかもしれないので、
どこの部屋に何があるか、知っておく必要がある。


「パーカーを着てるのは、寒いから?」

「……うん」

女子たちが着ている黒セーラーは、学園の冬の制服だ。
まだ冬服なのだから、ここに来るまでは寒い日もあった。

しかし、この人狼館では、どの部屋も空調が効いている。
古里太は肌寒いとは感じないし、湾子もそうは言っていない。

ただしもちろん、寒さの感じ方に、個人差はあるだろう。
体育会系の湾子は、運動で身体に筋肉が付いているので、
男子の古里太もそうだが、筋肉が発熱して身体を温める。
身体が小さく筋肉のない兎とは、感じ方が違うのだろう。

それに、湾子が食事をバクバク大食いするのに対して、
兎は、まるでリスのような小動物が木の実を食べるように、
基本的に少食である。だから、代謝が違いそうだ。

じっさい、寒がりの女子というのは、よく見かける。
彼女もまた、そのひとりなのかもしれない。


「棚に液晶モニタがあるね」

「これは、どっかから持ってきたんじゃないよ。
 兎の部屋に最初からあったんだよ。
 ほかの女子の部屋にも、たぶんあると思うよ」

兎の服や部屋が気になってしまう。
なぜ、兎に対しては、そうなのか?

それは、先ほどまで面談をしていた
小夜里や貴常と違い、
彼女の押しが強くないからかもしれない。

小夜里や貴常は、強く口撃してくるので、
その対応に集中しなければならない。

しかし、兎は大人しい性格なので、
雑談のような平和な会話が、面談の中心だった。

しかし、雑談だけで終わらせるのはもったいない。
今のわれわれは、命を賭けたデスゲームの最中なのだ。


「ところで、処刑の話なんだけど……」

「……い、いやー! ウサギ、怖いお話いやー!」

このように、古里太がデスゲームの話を振ろうとしても、
兎に拒否されてしまう。現実逃避しているのだろうか。

彼女は、見ている分には可愛らしいが、
実際に話してみると、少々もてあます。

委員長のように、理詰めで口撃してくる相手には、
古里太の方も、それなりに批判を返すことができる。

しかし、兎のように、か弱さをアピールされると、
古里太もかえってやりにくい。

「のれんに腕押し」というのか、
押しても押し返して来ないので、手ごたえがない。
なかなか話が噛み合わず、苦戦していた。


だが、そこでふと、古里太は想像した。

もしここで、兎をレイプしたら、どうなるのか?

犯罪組織に誘拐監禁されている今、
警察がいない特殊な状況なので、
レイプしたとしても罰せられない。

もし、今すぐでは問題があるとしても、明日また牙王に質問して、
処刑権を元にした、新ローカルルールを作ればよいのではないか?

古里太は、兎に襲いかかって、
衣服をはぎとるところを妄想した。
幼い裸体を脳内に描いて興奮する。


「イエス、ロリコン。イエス、タッチ」

古里太は、相手に聞こえないよう、小声でつぶやく。
ロリッ娘を犯せるとは、夢のような世界ではないか。

いやもちろん、ロリと言っても、見た目だけの話で、
兎は他の女子と同年代だから、本当のロリではないが。

しかし、その白昼夢を、彼は実行に移そうとはしない。
それは、モラルからではなく、リスクの考慮からだった。

古里太は、後先考えないで、流される性格ではない。
もし、レイプした後に、何が起きるかを考えていた。


もしレイプしたら、レイプされたことを彼女が恨みに持ち、
後で復讐されるかもしれない。
極端なケースでは、殺されることも想定できる。

小柄な兎と腕力を比較すれば、古里太にかなわないだろう。
しかし、寝ている間に刃物で襲うなど、
スキをつけば殺すことは十分可能ではないか?

もし、ひとりしかいないハーレムマスターを殺したら、
牙王から処刑などの処罰が下るかもしれない。

しかし、古里太は、朝会での兎の質問を思いだしていた。
非常事態が起きた時には意外と感情的で、
損得で割り切って考えられないのかもしれない。

もし、殺される確率が一パーセントだとしても、
死ぬ確率の一パーセントは、血の一パーセントだ。

古里太は、そのように考えて、レイプすることを自重した。
脳内で犯す妄想はしていても、現実には指一本触れてない。


今、われわれは、デスゲームの状況下にある。
しかし、直接的な暴力に訴えるタイプのゲームではない。

せっかくルールを作る権利を古里太が持っているのだから、
やはり女たちを上手くハーレムに誘導するのが良いだろう。

古里太は、この後の夕食に全員の前で、
新ローカルルールを発表することを考えていた。

だが、まだどんなルールにするか、ハッキリと固まってはいない。
投票制を導入できないかという、ばく然とした方向性はあった。

しかし、それをどうすれば、ハーレムにつなげられるのかが、
まだ自分でもよく分かっていなかった。

今日の夕食が早くもひとつの正念場を迎える予感をしていた。
後で処刑と殺人、裁判とイベントが予定されているのだから、
今日中にゲームの方向性を決めないと、チャンスを逃しそうだ。

「性か、死か。セックス、オア、ダイ」

古里太は、絶対死にたくないし、ハーレムも絶対欲しい。

死から性の方向へと、船の舵を切り替えるような名案を、
兎と話しながらも、彼は一生懸命に模索していた。
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