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二章:人狼ゲームスタート
16話:面談 TO 小音子
しおりを挟む兎の次は、小音子との個人面談だ。
部屋に入って彼女に会ったとき、
香水の良い匂いに、鼻孔をくすぐられた。
「やあ、岸田さん」
「名前でいいわよ。ワタシもそう呼ぶんだから」
「じゃあ、小音子ちゃん」
「なあに? 古里太クン」
「その香水、どこで見つけたの?」
「古里太クンが個人面談をしている間、
そのお相手でない女子は、この人狼館の探索をする。
というお話だったわよねえ?」
「うん、そうだよ」
「二階の北西に、まず大浴場があるの。その隣が洗面所で、
化粧品や香水なんかも、ちょっと置いてあるのよ。
お化粧するのに鏡が要るから、丁度良いんでしょうね」
小音子の説明は自然なものだったが、今はデスゲームの最中だ。
たとえば、化粧品にまぎれて、殺人に使う毒のビンが隠してある、
といった可能性まで、古里太は考えていた。
そこで彼は、やはり自分自身の目で、
人狼館の全体を視察する必要があると感じた。
今日の館の探索は、小音子が二階の西側、貴常が二階東側、
湾子が一階西、小夜里が一階東、
兎が一階と二階の中央、という分担だった。
それぞれの個室の位置に応じて、割り振られている。
明日は、それぞれの分担の女子に案内してもらいながら、
人狼館全体を自ら視察しよう、と古里太は考えていた。
「小音子ちゃんが一番女らしいから聞きたいんだけど、
どうすればハーレムを作れると思う?
ボクには女心が分からない」
「……ずいぶん、直球の質問ねえ。
ハーレムってつまり、女が欲しいってことでしょ?」
「そうだよ。デスゲームの期間が一週間しかないから、
日常的な腹の探り合いをしているうちに、
ヘタをすると人生が終わってしまう。
だからもう、他人の空気を読まないで、
自分の欲望に正直になると決めたんだ」
「……そうねえ、女はブランド物のファッションが好きだけど、
どうしてそれが好きかというと、女は仲間を作るのが好きで、
逆に、仲間外れになりたくないという心が、男より強いの。
そこを上手く突けば、女心をつかめるんじゃないかしら」
「ふーむ。女心をつかむには、『仲間』と『仲間外れ』か。
シンプルな見方だけど、そういうところはあるかもね」
女が、ブランド物の服やアクセサリーを好むのは分かる。
高いステータスの集団に自分も加わりたいので、
高価な商品であっても買う、という現象はたしかにある。
ではそれを、今のデスゲームにどう応用するか?
そこで、古里太はひらめいた。
投票権を、ブランド商品的なものにできないか……?
小音子はベッドに座っていたが、
古里太にイスを勧めたので、
彼はテーブルのソバのイスに座る。
小音子は脚を組んで座っている。
そして、彼女が脚を組み替えるたびに、
黒セーラー服のスカートの下で、
黒パンストの美脚が艶めかしく踊る。
(誘っているのか……?)
古里太は、彼女に魅了されると同時に、
油断させるハニートラップを警戒した。
だがかりに、彼女が人狼で、
だから誘惑してきたのだとしても、
直接殺されるようなリスクは、ゲームルール上ない。
逆に、彼女が人狼でないのだとしても、
自分が処刑されるかもしれない、という不安から逃れるために、
古里太の印象を良くしようと、誘惑してくる動機は大いにある。
兎をレイプする妄想をしていた時は、さすがに踏みとどまったが、
今この誘惑には、流されてしまっても良いのでは、と古里太は思う。
そもそも、ハーレムを作ろうとしているのだから、
女の誘惑には一切乗らない、という方針でもない。
人狼を当てて生き残りたい、という動機はまずあるが、
もし負けたとしても、生きている内にハーレムを経験したい、
という動機も、古里太には根強くあった。
デスゲームは一週間しかない。負けたらそこで終わりだから、
「しない後悔より、する後悔」という気持ちが強かった。
「小音子ちゃん、誘ってるの?」
「……さあ、どうかしら?
でも、このデスゲームで、ひとりしかいない男の子って、
ブランドみたいな何かね。ブランドって言葉がおかしいなら、
『アイドル』とでも言った方がいいかしら?」
小音子は、あいまいな笑顔を浮かべた。
女子たちの中では、湾子についで、好感触だ。
少なくとも、委員長や貴常のような敵対心や、
兎のような警戒心がないだけでも、ずいぶん快適だ。
「捨てる神あれば、拾う神あり」。
生死を争うこの心細い状況下では、
彼女が女神のように見えてしまう。
たとえもし、それが罠だとしても。
古里太は、良い雰囲気ではないかと感じ、
ベッドに座っている彼女の隣に腰かける。
彼女の身体から良い匂いがする。
彼も気分が高まり、そっと肩を抱き寄せる。
身体が密着して、セーラー服ごしに、体温が伝わってきた。
彼女の髪をなでてみる。その柔らかい感触に、ドキドキする。
小音子がまぶたを閉じたので、そっとキスをする。
接している唇からの暖かい感触が、性的興奮を煽った。
古里太は、そのままの流れで、小音子をベッドに押し倒す。
しかし、彼女に腕で押し止められ、流れをせき止められる。
「ねえ、ちょっと待って! ワタシを抱きたいなら、
ここでハッキリ約束して。ワタシを処刑しないって」
小音子の要求に古里太は、少しためらってから、こう返す。
「小音子。キミはすごく魅力的だ。
でも、今は命がけのデスゲームをしている。
だから、そう簡単に約束はできない。
夕食でみんなに発表があるから、
その時になれば、ボクが示す条件が分かるよ」
「んもう、じらしプレイ?
いいわよ、ワタシは逃げないから。ウフフ……」
小音子は妖しく笑う。
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