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二章:人狼ゲームスタート
13話:面談 TO 小夜里
しおりを挟む牙王への質問タイムを終えた後で、
古里太は、小夜里を筆頭とした女子たちに囲まれて、
彼の質問の真意を、彼女たちに尋ねられた。
つまり、今度は古里太が質問攻めにあった。
彼は、ちょっとした芸能人気分になった。
ただし、不祥事で話題になったような扱われ方だが。
その時に、古里太は、「個別面談で話そう」の一点張りで、
その場で真意を話すことはしなかった。なぜ、そうしたか?
古里太の考えとしては、二日目にも入り、
そろそろ女子たちに揺さぶりを掛けたかったので、
周囲の空気を読んで安心感を与える、
安全牌の選択肢だけを選びたくなかったのだ。
処刑、殺人、裁判までの残り時間が圧倒的に足りないから。
だから、不穏当な質問をしたのだ。
「混浴」、「裸」、「レイプ」といった性的な内容の。
そして、女子との個人面談。まず、小夜里からだ。
もちろん、古里太にとっては、
何かと突っ掛かってくる、委員長が一番苦手だった。
が、苦手な相手から、先に済ましておきたい。
古里太は、軽くノックしてから、小夜里の部屋に入る。
部屋の中は、古里太の部屋と大差ない。
それはそうだろう。個室は八部屋もあるのだから、
一部屋ずつ個性をつけていたら使いにくいだろう。
室内には、窓があり、ベッドがあり、
テーブルとイスがあり、棚とクローゼットがある。
その他、室内灯や観葉植物などのインテリアもある。
やや無個性ではあるが、そこはかとない高級感が漂う。
古里太の人生経験の中で想像できる範囲では、
ちょっとしたホテルのような感じだった。
「古里太クン。まず、さっきの質問の件だけど、
あんな非常識なルールを決めるつもりなの?
あなた正気?」
「自分に都合の良いルールを決めるのは、当たり前だろう。
政治家や官僚や大企業の社長だって、そうしてるんだから」
メガネ委員長は、開口一番に、またも噛みついてきた。
「正気」か、という言い方が、人をイラつかせる。
一方の古里太は、自分が政治家や官僚になったつもりで、
開き直って、自分の特権を最大限守ることにした。
異世界転生して、勇者や賢者に生まれたならともかく、
デスゲームに巻き込まれた時点で、英雄になることを、
古里太は最初から諦めていた。かわりに、欲望に忠実になる。
一日目は様子見ということで、ハーレムを作る欲望は、
最大公約数的な建前の下に、ある程度隠しておいた。
が、残り時間も短いので、生死が掛かったこの期に及んで、
他人に良く見られようと、良い人ぶる時間は残されてない。
だから、二日目からは、少しずつ本音で話すことにした。
そのきっかけが、この各人との個人面談である。
なぜ、個人面談かといえば、さっきの質問攻めのように、
五人の女子全員を同時に相手してしまうと、どうしても、
女子のペースに乗せられてしまうからだ。
そこで、個人面談で、各人の弱みを探り、各個撃破していき、
ハーレムに堕としていこう、というのが古里太の意図だった。
「あなたが、そんな悪人だとは思わなかったわ。
本当に自分の利益しか考えないのね」
「委員長。ここはもう、学校じゃないんだ。
キミを評価してくれる先生もいない。
「だからって、あなた……。
人として許されることと、
許されないことがあるわ!」
「悲しいけど、これ、デスゲームなんだよね」
ふたりの見解は平行線をたどる。
これ自体は予想できていたことだが、
古里太は個人的に聞きたいことがあった。
「でも、委員長。キミは、昨日からずっと、
ボクに歯向かってくるけど、処刑が怖くはないの?」
「たとえ、処刑されようとも、
あなたに従うつもりはないから……」
「なんで、そこまで、強く出れるの?
使命感とか正義感みたいなもの?」
「だって……、もし従ったとしたって……」
「(あっ……)」
小夜里は言葉を濁したが、古里太はすぐにピンと来た。
デスゲームという危機的状況で、勘が冴えているのか、
それとも小夜里が危機的状況で、本音を漏らしたのか、
いずれにしても、はじめて古里太は小夜里の本音を捉えた。
つまり、彼女の考えは、こうなのだろう。
かりに小夜里が、大人しく古里太の意向に従ったとして、
ハーレムで女としての魅力競争をしても、彼女は不利で、
結局のところ、処刑されてしまうのではないか?
だとしたら、古里太に逆らってでも、
ゲームルール自体を変える方向を模索した方が、
死中に活を求めることになるのではないか?
それが彼女の考えだ、古里太はそう推測していた。
「ただね、委員長。これだけは、言っておきたいんだ。
委員長が人間側なら――そう言うしかないだろうけど、
人狼を処刑できなければ、最終的には死亡する。
だから、ボクが嫌いでも、人狼探しには協力してくれ」
「もちろん、それは分かっているわ。一蓮托生だもの」
もっとヒステリックな反応をするのかと思ったが、
委員長は意外と冷静に会話している。
ところどころ、イラつかせる部分もあるが、
少なくとも、昨日ほど、声の調子はキツくない。
昨日は、ほかの女子たちの前ということがあって、
場を仕切りたいとか、または面子やプライドから、
古里太に対して、強い態度に出たのかもしれない。
「それでね、古里太くん。あなたに提案があるんだけど」
「なんだい? 委員長」
「あなた、さっきの質問時間で、ローカルルールを作る、
ということを考えていたようね」
「うん」
「なら、人狼の処刑指名方法は、
『投票制』を採用してよ」
「え、委員長は、初日の説明を聞いてなかったの?」
「もちろん、知っているわ。
でも、君主制と議会制や投票制は、両立できるわ」
「なるほど……、そうか!」
たとえば、第二次大戦前の「大日本帝国」は、
「立憲君主制」の国だったが、議会や選挙もあった。
君主制だから、投票システムが成立しないわけではない。
古里太が、ローカルルールを自由に作れるなら、
投票による選挙を導入しても、別に問題ないはずだ。
最終的に処刑指名権は古里太が持っていて、
その参考になる情報を投票で集める、という形になる。
ゲームルール自体を変えている訳ではない。
「――でも、アイディアとしては面白いんだけど、
とりあえず、採用は見送りかな」
「なんでよ! 投票が一番民主的で、公正で平等な……」
「ボクは、まずもってハーレムが作りたいのであって、
ハーレムは民主的に作れない。
だから採用のメリットがない」
「……」
発想は面白いが、古里太にメリットが感じられなかった。
そもそも、共和制ではなく君主制にしたため、
ハーレムを作りやすいゲームルールなのだから、
投票制の導入は、ハーレムを捨てるようなものではないか。
古里太は、小夜里に頭の良さは感じたものの、
「相手の立場に立つ」という、交渉の基礎的な考え方が、
スッポリと抜け落ちているように感じた。
もし、学校での学級会のような、建前の場でなら、
彼女は評価されるのだろうが、ここは学校ではない。
「人狼ハーレム」という、デスゲームの場所なのだ。
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