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二章:人狼ゲームスタート
17話:面談 TO 湾子
しおりを挟む小音子の次、女子五人の最後に、湾子との個人面談が控えていた。
湾子の部屋の前まで来た古里太は、昨日の湾子とのキスを思いだす。
昨日は、キスだけで終わってしまったが、
今日は、その先まで進みたいと思う。
一週間しかないデスゲーム。もし負ければ死ぬかもしれない。
死の恐怖をやわらげる性の享楽を、今の彼は強く求めていた。
「ワンちゃん、おひさ」
「コリくん、おかえりー」
古里太が部屋に入るなり、
湾子が軽く抱きついてきた。
キスをしたのだから、恋人気分でもおかしくはない。
が、恋人というより、新妻のような気分なのだろうか。
幼なじみから恋人になった女性は、
妻っぽく振る舞うものなのかもしれない。
しかし、古里太は自分たち以外にサンプルを知らないので、
そこまで一般化して考えることも難しかった。
湾子がとくにそういう性格なのかもしれない。
抱きついてきたときに揺れた、
湾子のポニーテールは、犬のシッポのようだった。
とくにこの状況下で、シッポを振ってくれると、素直に嬉しい。
しかし、今のわれわれは「人狼ハーレム」という、
デスゲームに強制参加させられていることを忘れてはいけない。
古里太には悲しいが、湾子が人狼の疑いも捨てきれなかった。
人狼だから好意的に振る舞っている可能性は十分ある。
だがそれじゃあ、一番好意的な湾子を処刑して、
一番敵対的な委員長を生き残らせればいいのか?
それは古里太にとって、選びがたい選択肢であった。
幼なじみの湾子に対する、感情的な愛着がまずある。
しかしさらに、非情かつ打算的に考えたとしても、
古里太は湾子を残しておきたい事情があったのだ。
なぜなら、ゲームの本番は、二回目の処刑だと考えていた。
殺人が起きる前の一回目の処刑は、単純に情報量が足りない。
だから、殺人の捜査や推理に協力してくれる人物が必要だ。
一回目の処刑で、好意的なプレイヤーを選ぶことで、
人狼を仕留める確率がアップするよりも、
好意的なプレイヤーを残しておき、協力を得られることで、
二回目の処刑で人狼を当てる確率がアップする方が大きい。
だからたとえ、好意的なプレイヤーが人狼だとしても、
露骨に敵対できない、というだけでもプラスになる。
そう、彼は考えた。
また、人狼が勝利しても、古里太を処刑しない選択肢もある、
という牙王の言葉も、彼はけっして忘れていなかった。
もし、委員長が人狼だと、あっさり処刑されてしまいそうだが、
もし、湾子が人狼なら、幼なじみのよしみで、
命を助けてくれる結果が、ワンチャンありそうな気がする。
いろいろ考えても、やはり湾子は残しておきたい。
それが、古里太の今の考えだ。
彼の心の中の処刑ランキングのトップが小夜里で、
最下位、つまり処刑したくないトップが湾子だった。
「コリくん……。これ、どゆこと?」
「なに、なにが?」
抱きついてきた湾子が、古里太の身体を押し離す。
彼女は、悲しそうな顔をしている。
彼には、その原因がまったく分からない。
「コリくんの体から、他の女の子の良い匂いがするよ?」
(しまった……)
おそらく、小音子の香水の匂いを、かがれてしまったのだろう。
古里太は、浮気がバレた男の気持ちが、
生まれて初めて理解できた。何と言い訳するかで、苦しむ。
「そうだよ。他の女子の匂いだよ」
「その娘と、体をくっつけてたってことでしょ?」
「ああ、そうさ。キスしてたんだ」
「そんな、ひどい……、ひどいよ!」
古里太は、堂々と開き直ってしまうことにした。
彼女に見放されてしまうリスクはある。
どうしても、ハーレムは諦められない。
「うわーん!」
しかし、湾子は、顔をくしゃっとゆがめたかと思うと、
とつぜんワンワン泣き始めた。
昔から彼女は、そんな泣き虫ではなかったはずだ。
むしろ、子供の頃は、古里太の方が泣き虫だった。
だから、そんな経験がほとんどない古里太は、アセってしまう。
しかし、苦しいながらも、なんとか説得に努めた。
「でも、『人狼ハーレム』という名前のゲームだから、
ハーレムを作ることは、最初から決まっているんだ」
「じゃあ、ぼくはどうすればいいの? ……ひっく」
「他の女から、ボクを奪うことを考えればいいんだ」
「奪う……」
こんな特殊な状況でなければ、
言う機会がないセリフだろう。
しかし、このデスゲームの場だからこそ、
恋愛経験に乏しい彼にも、言えてしまうセリフだった。
「ぼく、コリくんをもらうためなら、何でもするから……」
「……ん? 今、何でもするって言った?」
古里太は、チャンスとばかりに、湾子の身体をまさぐった。
「えっ、それは……」
いつまでも、草食系男子のように、受け身ではいられない。
肉食、というより、たとえ鬼畜だと思われようとも、
古里太は、積極的な攻めに転じることにした。
「いやん……あはん。おっぱい好きなの?」
ボリュームがあって、弾けそうな胸を揉む。
すると、彼は、乳房の柔らかさに感激する。
彼女とは長年幼なじみだが、その感触までは知らなかった。
「ちゅぱ、ちゅぷ……」
古里太は、湾子の乳首に口を付けて吸う。
「そんな……赤ちゃんみたいに吸わないで」
さらに彼は、彼女の下半身に手を伸ばした。
「……ちょ、そこは、そこだけはダメ!」
黒セーラー服のスカートをたくし上げ、
パンティの上から敏感な部分を触る。
それから、パンティの中へと指を滑り込ませる。
「あ、ああっ! そこ、いや、ダメ……」
指で割れ目をなぞる。しばらくさすっていると、
ネットリした液体が指に絡みついていた。
その液を彼女の目の前で見せる。
「もう、こんなに濡れているじゃん」
「いや、言わないで……恥ずかしい」
「もう、いいだろ?」
「ダメ! まだ、心の準備が……」
湾子に突き飛ばされて、拒否されてしまった。
彼女を力ずくで押し倒すことはできない。
「仕様がない。じゃあ、夕食の後にしようか。
それまで、たっぷり想像を楽しんでおいてよ。
夕食後に食べる夜のデザートの味を……」
「……」
湾子は、顔を赤くして、黙っている。
古里太の頭の中は、彼女の頭で一杯だった。
しかし、「急いては事をし損じる」とも思い、
もてあましていて荒ぶる性欲を、何とか押さえ込む。
「じゃあまた、夕食後に会おう」
そう言って彼は、彼女の部屋を後にした。
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