人狼ハーレム ――奴隷美少女のハニートラップ

青戸礼二

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一章:人狼チュートリアル

7話:自己紹介 AND 宣戦布告

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まだ自己紹介してない、最後のひとりが口を開く。




「海野小夜里(うみの・さより)。
 わたしは学級委員長を努めているわ。
 皆さんよろしくね」

緑髪をお下げにして、眼鏡を掛けている。
黒セーラーと合わせて、
いかにもな委員長ファッションだ。

ファッションだけでなく、性格も根が真面目そうで、
古里太や湾子が苦手とするタイプのひとりだ。
今の口調も、学級会で聞くようなお堅いものだった。


「さて、自己紹介の場を借りて、
 言っておきたいことがあるの」

なんだろう?

「伊木野クン。あなた、犯罪者の手先なの!?」

小夜里は、きつい口調でそう言って、
古里太の方を刺すような鋭い目つきでにらむ。

「えっ!? それはどういう意味?」

完全に想定外。古里太は、ヤブから棒に、
そんなことを言われるとは、つゆにも思っていなかった。


「どうもも何も、あなたは現に、
 犯罪者の言いなりになっているじゃないの!」

何が気にくわないのか、話が見えてこないが、
反論しておかないと、犯罪者のレッテルを貼られそうだ。

「言いなりって……そうかもしれないけど、
 でも、首つり動画を見なかったの?
 逆らったら殺すと、脅迫されてるんだから、
 言いなりでも仕様がないじゃん!」

まずは常識的な言い分を述べておく。


「……それに、あなたが、
 犯罪者の息の掛かった人でないと、
 必ずしも言い切れないでしょ!」

「はあ?」

小夜里の口撃は止まない。その声はむしろ激しさを増す。
あの委員長が、こんな攻撃的な人間だとは思わなかった。
あるいは、犯罪に巻き込まれた異常事態で興奮したのか?

「犯罪組織から、話を持ちかけられているかもしれない。
 ハーレムが持てるって。大金が稼げるって。
 だから、犯罪集団に素直に従ってるのかもしれない。
 そうでないと証明できる?」

「その……、でもさあ、それを言うなら、
 海野さんも人狼かもしれないでしょ?
 人狼はこれから殺人を犯す予定だから、
 言ってみれば犯罪者も同然でしょ?」

「わたしは人狼じゃないわ」

「じゃあオレも犯罪者の手先じゃないよ」

「……それじゃ、証明になってないわ」

「海野さんのも、証明になってないよ」

「……クッ」

古里太に反論されて、
小夜里は露骨に悔しがった。

こんな感情を隠さない委員長の姿を、
古里太は今までで初めて見た。


「……あなたが犯罪者に荷担するつもりがないというのなら、
 【処刑指名権】とやらを放棄しなさい」

小夜里はいったん落ち着いた口調になったものの、
しかし内容はより厳しい要求を突きつけてきた。

「いやでもホラ、人狼は処刑しないと、
 われわれ人間側が、みんな処刑されちゃうんだし……」

「少なくとも、動画で言ってたような
 【性的誘惑】を求めるのは止める、
 とここでキッパリと約束しなさい!」

「ウッ……」

古里太は、痛いところを突かれた。
こんなゲームの序盤で、いきなりピンチに陥るとは。


性的誘惑を受ける権利は捨てろと、
委員長は古里太に要求を突きつけてきた。

この「人狼ハーレム」のゲームで、
文字通りのハーレムを実現しようとしていた、
その古里太の本音を突かれた形だ。

それにしても、彼女はこんな明確に対立してしまって、
処刑対象として指名されることが怖くないのか?
こんな正面からの反発は、古里太も予想していなかった。


だがもしここで、たとえば「逆らうと、処刑するぞ!」とか、
逆ギレして暴言を吐いても、何の解決にもならない。

建前の場で本音をぶつけても、その本音は「糞」と化す。
たとえば、政治家が秘書に「このハゲー!」と怒鳴れば、
社会的な信用を失ってしまうだろう。

同じように、反論に窮したからといって、
「殺すぞ、ブス!」と怒鳴り散らしても、
ただ露悪的な不快感をまきちらすだけだろう。


キレてしまうと、兎のような豆腐メンタルの娘には、
すっかり怖い印象が根付いてしまって、
もう心を開いてくれなくなるかもしれない。

それだと、後々の人狼裁判で不利になってしまう。
その不利さが、たとえ一パーセントのマイナスだとしても、
命が掛かっているのだから、大きな打撃なのだ。

昔の戦争中には、「石油の一滴は血の一滴」と言われていたが、
「デスゲーム(勝利確率)の一パーセントは、血の一パーセント」だ。


ピンチだがキレるわけにもいかず、策に窮した古里太は、
自分が政治家になったつもりで、
全力で見逃してもらうよう、煙に巻く方針にした。

「まぁ、その~、なにぶん、今は自己紹介の時間なので、
 本格的な議論は、明日以降に持ち越しということで……」

「あなた、逃げるつもり!?」

小夜里が目を細く険しくして、逃がさないぞと追ってくる。
しかし、古里太は相手にせず、徹底的にはぐらかす。


「あと、みんなに伝えたいのは、今後のスケジュールとして、
 今日はこれから、各自に各部屋で休んでもらって、
 明日は各自との『個別面談』を実施したいと思います。
 つまり、ボクがみんなの部屋に行って、ひとりずつお話する」

「ちょっと! 勝手に決めないでよ! 女子とふたりきりで話って、
 もしかしてセクハラや性犯罪をする気じゃないの!?」

小夜里がまたもやまくしたてる。
委員長だから自分が仕切りたいのか、
男が嫌いなのか、古里太が嫌いなのか、
とにかく気にくわないことだけは伝わる。

性犯罪者扱いされた古里太は、内心イラついていたが、
「犯すぞ! クソアマ!」などといえば、悪役になり、
メガネ委員長の方が正しい印象を与えてしまう。
そこで、あえて相手にせず、他の女子にたずねた。


「女子全員に聞きたいのだけど、
 個別面談やってもいいかな?」

「いいとも~!」

湾子が手をあげる。シャキッと迷いなく。
そして、手で丸く円を作って、OKのサインを出す。
ガニ股でニコっと笑って愛嬌がある。
場を和ませるために、彼女はやっているのだろう。

そもそも、古里太が湾子に、
無理やり何かイタズラするのは無理だろう。
湾子の方が力があるからだ。


「ワタシも別にいいわ。ワタシの方も、
 古里太クンと『お話』したいし。
 男の子はひとりだけなんだから、仲良くしましょ」

小音子が、釣られるように手を挙げた。
しかし、嫌々ではなく、元から自分もしたかったようだ。
彼女が微笑んで、ウィンクを送ったから。

「わたくしも、別に構いませんわ。
 もちろん、下心があるなら、感心しませんことよ。
 でも、最初からそう決めつけて、話を聞かない態度を、
 今のこの危険な状況で、はたして取るべきかしら?」

貴常も、冷静な口調でそう告げた。
言っていることも、わりと正論だろう。

「み、みんながそう言うなら、アタシも~!
 寂しいからうさピョンとお話しましょ?」

周囲をチラチラ様子見しながら、
兎も空気を読んで同調した。
ピョンピョンと、可愛らしく飛び跳ねている。


「クッ……認めたくないものね、若さゆえの過ちを」

小夜里も震えながら手を挙げた。
ついに委員長までが折れるとは。

彼女は男子には厳しいが、
女子には甘いのではないか?


経緯はともかく、これで女子全員が、
個別面談に賛成してくれたことになる。

「じゃあ、明日は個別面談で決まりだね!」

古里太は、パンと手を打って、話をまとめた。
もちろん、個別面談を提案したからには、
いろいろな狙いを秘めている。
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