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一章:人狼チュートリアル
4話:規則 OF 人狼館
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「……んんんー、では! 話を続けるお」
液晶画面に映っている牙王は、
ポンと手(肉球)を叩き、説明を再開した。
ざわめいていた女子たちも、再び沈黙する。
「今までの話は、『人狼ハーレム』のルール説明だったけど、
これからは、この『人狼館』のルール説明を始めますお」
ゲームに興味が出てきた古里太も、
一言たりとも聞き逃すまいと、牙王の話に集中した。
「まず基本的なことですお。
この牙王が人狼ハーレムのゲームマスター。
つまり人狼審判であり、同時にこの人狼館の主人でもあるお」
牙王が本当に公平に審判するかどうかは疑問だが、
だからといって強制的に交代させるのは不可能だ。
「もし、ルールブックに書いてない部分で、
ゲーム進行が不可能なほどの混乱が起きた場合、
その事態には牙王が判断、対処しますお。
たとえば、人狼以外が殺人を犯した場合」
「殺人」と聞いて、古里太はギクッとした。
殺人するのは人狼だけだと思いこんでいたが、
何かの揉め事から人間側が内輪もめして、
不測の事態が起こることもありうるのか。
「そうでないケンカみたいな細かいトラブルは、
ハーレムマスター、つまり古里太クンが判断、対処するお。
処刑の指名権を持っているから、強制力も持ってるだロウ?」
古里太は、自分が少女の立場になった反実仮想を想定して、
命を握られてるから逆らわないだろう、と結論した。
「処刑指名権は命を左右するから、警察や司法に相当する権力ですお。
もちろん、この館内だけで通用する話だけど、
いわばハーレムマスターは、小さな国の王様や領主ですお」
いささか誇大表現な気はしたが、「王様」という言葉の響きが、
古里太は気に入って、ひとりほくそ笑んだ。
「それからこれは、人狼ハーレムにもちょっと関係するけど、
人狼の殺人は、館の中で確認できる物だけで、
実行しなければならない、というのがルールだお」
それはそうだろう、と古里太は思う。
手がかりがなかったら、推理できない。
「たとえば、矢が発射されるような隠しトラップだとか、
未知の毒物、秘密の隠し部屋や隠し通路など、
そういったモノを殺人のトリックに使うことを禁止するお」
ミステリーでの「ノックスの十戒」を、
意識したような推理のルールだ。
「当然のことだけど、プレイヤーはここにいるのが全員。
欠員の補充以外で、途中で外部から加わることはないお。
『外部犯が犯人』でした、じゃつまんないだロウ?」
これもミステリでよく出てくる、
「クローズド・サークル」という奴だろう。
「欠員の補充」は少し気になるが、
仲間割れでの殺人とか、非常事態を想定したものだろう。
「逆に、プレイヤーの途中離脱も許されないお。
敵前逃亡は死刑! ……に値するので、人間も人狼も、
ゲーム終了前に館外に逃げたら、即処刑するお」
「処刑」という言葉に、少女たちの身体が、一瞬ビクッとした。
「出入り口は封鎖してあるけど、それはキミらの逃げよう、
という出来心を押さえるもので、どのみち外に出ても、
ドーベルマンやウルフドッグとか、わんわんおが待ってるお」
それでは、普通の学生が脱出するのは、まず無理だろう。
そもそも逃げる気も、古里太にはぜんぜんなかった。
正面から勝負すれば、ハーレムが手に入るチャンスがあるのだから。
「人狼館の施設――台所や風呂、トイレなどや、
備品――日用品、消耗品、衣料品、食料品などは、
常識的な範囲で自由に使用してよいですお」
これは、ごく普通のことを言っている。
「もちろん、施設の破壊は禁止だお。施設は大事に使ってお。
ただし、人狼が殺人する場合に限り、許可することもあるお。
だからそういう場合、人狼は牙王に相談するといいお」
施設を破壊するような殺人というのは、
たとえば、爆弾でも爆発させることだろうか?
自分に被害が及ばないか、古里太は少し不安になった。
「説明の最後に、これからのスケジュールについて話すお。
人狼館へのキミたちの滞在期間は七日間。今日が一日目」
ゲーム期間は、一週間しかない。とすると、もし敗北した場合、
自分の命はあと一週間以内ということだ。古里太はゾッとする。
「一日目の朝、つまり今、ゲームの説明が行われたロウ?
二日目以降も毎朝ここで、牙王が朝会を開くので、
プレイヤー諸君はなるべく参加するのがいいお」
今までの説明も重要なものだったが、明日以降も、
何か情報が得られるなら、出るに越したことはない。
「四日目の夕、処刑対象を決定。
四日目の夜、殺人が起こる予定。
六日目の昼、裁判が開かれる予定。
七日目の夕、勝利者は館から去る予定」
牙王は事務的な口調で、ポンポンと予定を述べた。
古里太は四日目までに、処刑対象を考えておく必要がある。
「一日内のスケジュールは、
消灯時間は午後10時。
点灯時間は午前8時。
毎朝の朝会は午前10時」
常識の範囲内のことだが、朝会がわりと朝遅めなのは、
寝坊しがちな古里太には地味に嬉しい。
「消灯は電灯を消すだけで、館の中を移動するのは自由だお。
ただし、最後の最後に大事なことだけど、
四日目の夜、人狼が殺人を犯す時だけは、
極力、自分の部屋にいる方がオススメだお!」
牙王が「大事」とわざわざ言うのだから、注意が必要だろう。
「なぜなら、殺人を妨害または、目撃された相手に対しては、
無差別に殺して構わないという、例外的なルールがあるからね。
殺すのを諦めたら、そこで試合終了だから、必要な規則だお」
殺人関連のルールは、最重要の部類だろう。古里太は心に刻む。
「なお、館の部屋割りは、キミらで勝手に決めていいお。
食事の用意や風呂の順番とかも、キミらでご自由にどうぞだお」
古里太は、後で女子たちと相談しようと思った。
もしかしたら、殺人と推理に関係してくるかもしれない。
「最後の最後に、大事な大事なことがまだひとつ。
殺人が起こる部屋は、こちらで指定する。
というか当然、前述のルールとの関係上、
処刑対象がいる部屋に決まってるだロウが。
でも、部屋がどこかは、後ほど発表だお」
やはり殺人に関わる最重要な事項だが、
部屋まで指定するとは、処刑場のようなものか。
「この館での殺人は、鑑識のような情報がないので、
その分、別の情報を与えることで、推理バランスを取ってるお」
やはり牙王は、殺人をイベントとして捉えているようだ。
「さて、人狼館に関する説明はこれで終わりだお。
明日の朝会は質問タイムを設けるので、質問を考えておくといいお。
ただし、質問はひとりひとつだけ。明日以降の朝会で毎回答えるお」
女子たちは、ヒソヒソつぶやく。
古里太も、頭の中で質問を考えていた。
もしかしたら、有効な質問が、
ゲームの結果を左右するかもしれない。
液晶画面に映っている牙王は、
ポンと手(肉球)を叩き、説明を再開した。
ざわめいていた女子たちも、再び沈黙する。
「今までの話は、『人狼ハーレム』のルール説明だったけど、
これからは、この『人狼館』のルール説明を始めますお」
ゲームに興味が出てきた古里太も、
一言たりとも聞き逃すまいと、牙王の話に集中した。
「まず基本的なことですお。
この牙王が人狼ハーレムのゲームマスター。
つまり人狼審判であり、同時にこの人狼館の主人でもあるお」
牙王が本当に公平に審判するかどうかは疑問だが、
だからといって強制的に交代させるのは不可能だ。
「もし、ルールブックに書いてない部分で、
ゲーム進行が不可能なほどの混乱が起きた場合、
その事態には牙王が判断、対処しますお。
たとえば、人狼以外が殺人を犯した場合」
「殺人」と聞いて、古里太はギクッとした。
殺人するのは人狼だけだと思いこんでいたが、
何かの揉め事から人間側が内輪もめして、
不測の事態が起こることもありうるのか。
「そうでないケンカみたいな細かいトラブルは、
ハーレムマスター、つまり古里太クンが判断、対処するお。
処刑の指名権を持っているから、強制力も持ってるだロウ?」
古里太は、自分が少女の立場になった反実仮想を想定して、
命を握られてるから逆らわないだろう、と結論した。
「処刑指名権は命を左右するから、警察や司法に相当する権力ですお。
もちろん、この館内だけで通用する話だけど、
いわばハーレムマスターは、小さな国の王様や領主ですお」
いささか誇大表現な気はしたが、「王様」という言葉の響きが、
古里太は気に入って、ひとりほくそ笑んだ。
「それからこれは、人狼ハーレムにもちょっと関係するけど、
人狼の殺人は、館の中で確認できる物だけで、
実行しなければならない、というのがルールだお」
それはそうだろう、と古里太は思う。
手がかりがなかったら、推理できない。
「たとえば、矢が発射されるような隠しトラップだとか、
未知の毒物、秘密の隠し部屋や隠し通路など、
そういったモノを殺人のトリックに使うことを禁止するお」
ミステリーでの「ノックスの十戒」を、
意識したような推理のルールだ。
「当然のことだけど、プレイヤーはここにいるのが全員。
欠員の補充以外で、途中で外部から加わることはないお。
『外部犯が犯人』でした、じゃつまんないだロウ?」
これもミステリでよく出てくる、
「クローズド・サークル」という奴だろう。
「欠員の補充」は少し気になるが、
仲間割れでの殺人とか、非常事態を想定したものだろう。
「逆に、プレイヤーの途中離脱も許されないお。
敵前逃亡は死刑! ……に値するので、人間も人狼も、
ゲーム終了前に館外に逃げたら、即処刑するお」
「処刑」という言葉に、少女たちの身体が、一瞬ビクッとした。
「出入り口は封鎖してあるけど、それはキミらの逃げよう、
という出来心を押さえるもので、どのみち外に出ても、
ドーベルマンやウルフドッグとか、わんわんおが待ってるお」
それでは、普通の学生が脱出するのは、まず無理だろう。
そもそも逃げる気も、古里太にはぜんぜんなかった。
正面から勝負すれば、ハーレムが手に入るチャンスがあるのだから。
「人狼館の施設――台所や風呂、トイレなどや、
備品――日用品、消耗品、衣料品、食料品などは、
常識的な範囲で自由に使用してよいですお」
これは、ごく普通のことを言っている。
「もちろん、施設の破壊は禁止だお。施設は大事に使ってお。
ただし、人狼が殺人する場合に限り、許可することもあるお。
だからそういう場合、人狼は牙王に相談するといいお」
施設を破壊するような殺人というのは、
たとえば、爆弾でも爆発させることだろうか?
自分に被害が及ばないか、古里太は少し不安になった。
「説明の最後に、これからのスケジュールについて話すお。
人狼館へのキミたちの滞在期間は七日間。今日が一日目」
ゲーム期間は、一週間しかない。とすると、もし敗北した場合、
自分の命はあと一週間以内ということだ。古里太はゾッとする。
「一日目の朝、つまり今、ゲームの説明が行われたロウ?
二日目以降も毎朝ここで、牙王が朝会を開くので、
プレイヤー諸君はなるべく参加するのがいいお」
今までの説明も重要なものだったが、明日以降も、
何か情報が得られるなら、出るに越したことはない。
「四日目の夕、処刑対象を決定。
四日目の夜、殺人が起こる予定。
六日目の昼、裁判が開かれる予定。
七日目の夕、勝利者は館から去る予定」
牙王は事務的な口調で、ポンポンと予定を述べた。
古里太は四日目までに、処刑対象を考えておく必要がある。
「一日内のスケジュールは、
消灯時間は午後10時。
点灯時間は午前8時。
毎朝の朝会は午前10時」
常識の範囲内のことだが、朝会がわりと朝遅めなのは、
寝坊しがちな古里太には地味に嬉しい。
「消灯は電灯を消すだけで、館の中を移動するのは自由だお。
ただし、最後の最後に大事なことだけど、
四日目の夜、人狼が殺人を犯す時だけは、
極力、自分の部屋にいる方がオススメだお!」
牙王が「大事」とわざわざ言うのだから、注意が必要だろう。
「なぜなら、殺人を妨害または、目撃された相手に対しては、
無差別に殺して構わないという、例外的なルールがあるからね。
殺すのを諦めたら、そこで試合終了だから、必要な規則だお」
殺人関連のルールは、最重要の部類だろう。古里太は心に刻む。
「なお、館の部屋割りは、キミらで勝手に決めていいお。
食事の用意や風呂の順番とかも、キミらでご自由にどうぞだお」
古里太は、後で女子たちと相談しようと思った。
もしかしたら、殺人と推理に関係してくるかもしれない。
「最後の最後に、大事な大事なことがまだひとつ。
殺人が起こる部屋は、こちらで指定する。
というか当然、前述のルールとの関係上、
処刑対象がいる部屋に決まってるだロウが。
でも、部屋がどこかは、後ほど発表だお」
やはり殺人に関わる最重要な事項だが、
部屋まで指定するとは、処刑場のようなものか。
「この館での殺人は、鑑識のような情報がないので、
その分、別の情報を与えることで、推理バランスを取ってるお」
やはり牙王は、殺人をイベントとして捉えているようだ。
「さて、人狼館に関する説明はこれで終わりだお。
明日の朝会は質問タイムを設けるので、質問を考えておくといいお。
ただし、質問はひとりひとつだけ。明日以降の朝会で毎回答えるお」
女子たちは、ヒソヒソつぶやく。
古里太も、頭の中で質問を考えていた。
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