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【1-7】巨人vsドラゴン
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「おおっ! 頭に矢、刺さっとった」
リュウは刺さっていた矢と剣を引き抜いた。
……嘘だろ、今気づいたのかよ。てか、大丈夫なのか?
俺の心配を他所に、リュウは巨人の方へ体を向けて俺たちより数歩前に出た。
「見ておけよカルハ、こがな奴なぞ必要ないことをリュウが証明してやる」
そう言い終わると、彼女は巨人に向かって一直線に突進していった。
しめ縄の拘束から解放された巨人は、リュウを迎え撃つように右の拳を振り下ろす。
リュウはその攻撃を難なく避け、巨人の右腕に飛び乗った。
そして、掴もうとする大きな左手もするりとかわて跳躍し、奴の顔面を思いっきり蹴り飛ばした。
ドスンッと巨人の倒れる音が周りに響き渡り、しばらく経っても奴は起き上がらなかった。
マジかよ。あの巨人をいとも簡単に倒してしまった。
俺って本当に必要なのか?
「どうじゃ、リュウさえおれば問題なかろう」
リュウは倒した巨人を背にして俺たちに笑いかけてくる。
「少し手荒だったけど、流石はリュウね」
「す、すげぇー、一発で……」
圧倒的体格差の巨人を一撃で倒すという目の前の光景に、自然と賞賛の声が漏れる。
「ほう、リュウの凄さがわかるとは見込みがあるのう。これがドラゴンの力じゃ。ハーハッハッハー」
俺の感想を聞き、リュウは自慢げに腕を組んで高笑いをする。
ドラゴンの力、口だけではなく彼女の強さは本物だ。
いくら火が噴けなくても、飛べなくても、ドラゴンである以上フィジカルの強さは凄まじいものなのだと思い知らされた。
そんな風に俺がドラゴンの強さに感心していると、高笑いしているリュウの全身を大きな黒い影が覆った。
どうやらリュウ本人は、その影に気づいていないらしい。
「ハーハッハッハーはっ? ――ふぎゃっ」
リュウが自分を覆う影に気づいて空を見上げた時には、影の正体である巨人の拳が目前に迫っており、彼女は間抜けな表情のまま潰されてしまった。
ズドーンという大きな音が響き、辺りに砂埃が舞い上がる。
その後、砂埃が消えるまでの少しの間、その場は静寂に包まれた。
「えっ……、あれ大丈夫なのか?」
彼女の召喚師に聞いてみる。
「心配しないで、彼女は大丈夫だから」
召喚師の判断では大丈夫らしい。
潰される瞬間、『ふぎゃっ』とか言っていたけど大丈夫という判定らしい。
「そうか、ドラゴンだし鱗でダメージを防ぐとか――」
「いえ、そんなものないわ。多分あれは致命傷ね。でも彼女はゾンビだから、私がやられない限りは死ぬこともないし、少し経てば復活するわ」
カルハは至極冷静に言った。
「そっか、あいつがゾンビなのか」
言われてみれば、カルハはネクロマンサーというゾンビを操る能力者だ。
その召喚獣のリュウがゾンビというのは、当然のことかもしれない。
ルーリアが言っていた『元気に徘徊していたゾンビ』というのは、リュウのことか。
「でも困ったわね。死なないけど、回復には少し時間がかかるんじゃないかしら」
「……ということは?」
「スベテ、ハイジョスル」
「まあ、襲ってくるわよね」
「カルハさんっ?」
焦る俺の声をかき消すように、巨人が音を立て再び立ち上がる。
拘束用のしめ縄はもうないし、最後の手段である召喚獣は巨人を止められなかった。
絶体絶命のピンチが襲ってきた。
リュウは刺さっていた矢と剣を引き抜いた。
……嘘だろ、今気づいたのかよ。てか、大丈夫なのか?
俺の心配を他所に、リュウは巨人の方へ体を向けて俺たちより数歩前に出た。
「見ておけよカルハ、こがな奴なぞ必要ないことをリュウが証明してやる」
そう言い終わると、彼女は巨人に向かって一直線に突進していった。
しめ縄の拘束から解放された巨人は、リュウを迎え撃つように右の拳を振り下ろす。
リュウはその攻撃を難なく避け、巨人の右腕に飛び乗った。
そして、掴もうとする大きな左手もするりとかわて跳躍し、奴の顔面を思いっきり蹴り飛ばした。
ドスンッと巨人の倒れる音が周りに響き渡り、しばらく経っても奴は起き上がらなかった。
マジかよ。あの巨人をいとも簡単に倒してしまった。
俺って本当に必要なのか?
「どうじゃ、リュウさえおれば問題なかろう」
リュウは倒した巨人を背にして俺たちに笑いかけてくる。
「少し手荒だったけど、流石はリュウね」
「す、すげぇー、一発で……」
圧倒的体格差の巨人を一撃で倒すという目の前の光景に、自然と賞賛の声が漏れる。
「ほう、リュウの凄さがわかるとは見込みがあるのう。これがドラゴンの力じゃ。ハーハッハッハー」
俺の感想を聞き、リュウは自慢げに腕を組んで高笑いをする。
ドラゴンの力、口だけではなく彼女の強さは本物だ。
いくら火が噴けなくても、飛べなくても、ドラゴンである以上フィジカルの強さは凄まじいものなのだと思い知らされた。
そんな風に俺がドラゴンの強さに感心していると、高笑いしているリュウの全身を大きな黒い影が覆った。
どうやらリュウ本人は、その影に気づいていないらしい。
「ハーハッハッハーはっ? ――ふぎゃっ」
リュウが自分を覆う影に気づいて空を見上げた時には、影の正体である巨人の拳が目前に迫っており、彼女は間抜けな表情のまま潰されてしまった。
ズドーンという大きな音が響き、辺りに砂埃が舞い上がる。
その後、砂埃が消えるまでの少しの間、その場は静寂に包まれた。
「えっ……、あれ大丈夫なのか?」
彼女の召喚師に聞いてみる。
「心配しないで、彼女は大丈夫だから」
召喚師の判断では大丈夫らしい。
潰される瞬間、『ふぎゃっ』とか言っていたけど大丈夫という判定らしい。
「そうか、ドラゴンだし鱗でダメージを防ぐとか――」
「いえ、そんなものないわ。多分あれは致命傷ね。でも彼女はゾンビだから、私がやられない限りは死ぬこともないし、少し経てば復活するわ」
カルハは至極冷静に言った。
「そっか、あいつがゾンビなのか」
言われてみれば、カルハはネクロマンサーというゾンビを操る能力者だ。
その召喚獣のリュウがゾンビというのは、当然のことかもしれない。
ルーリアが言っていた『元気に徘徊していたゾンビ』というのは、リュウのことか。
「でも困ったわね。死なないけど、回復には少し時間がかかるんじゃないかしら」
「……ということは?」
「スベテ、ハイジョスル」
「まあ、襲ってくるわよね」
「カルハさんっ?」
焦る俺の声をかき消すように、巨人が音を立て再び立ち上がる。
拘束用のしめ縄はもうないし、最後の手段である召喚獣は巨人を止められなかった。
絶体絶命のピンチが襲ってきた。
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