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16.わかった気がする
しおりを挟むどう答えるのが正解か必死に考えを巡らせていた私は、余程酷い顔色をしてたんだろう。
笑顔で威圧的なオーラを醸し出していたライオネルが少しだけ同情するような素振りを見せる。
「もしかして知らなかったの? 王族のそっち系の教育係って機密事項でガッチガチだってこと」
そういえばそういう設定、前世の小説とかゲームとかで見た気がする。そもそも普通の人は公にされてること以外で王族に関する情報を知る機会なんて無いに等しいから、そんな極々個人的な情報は最重要機密事項になっててもおかしくはない。
まあ、普通の人でも他人様の夜の事情をおおっぴらに知ることも話すこともないから当たり前だけど。
「王族との間にあった事、しかも密室で見聞きしたことを、おいそれと外部に漏らされたら困るからな。だからそういう役割の者が訳ありの者ならば、しっかりと契約を結んだ上で口止め代わりに援助という形をとる事で一生縛るし、いなくなっても困らない者ならば、後顧の憂いがないように存在ごと消し去るという手もある。それが暗黙のルールだってこと、普通は承知してから来るんだけどな」
そんな事も知らないのかと小馬鹿にしたような感じで王太子殿下が説明してくれたけど。
えぇ、全く承知してませんとも。
でもバカ正直にそう言う訳にもいかないので、とりあえずはさっきライオネルに聞かれたことにだけ答えておくことにする。
「たぶんどちらにも当てはまります。私は訳ありですし、夫亡き今、帰る場所も待っててくれる人もおりません」
「じゃあ、やっぱりここで消えてもらっても問題ないってことだな」
ライオネルに答えたはずなのに、王太子殿下から物騒な言葉が返ってきた。
何が何でも私を排除したいらしい。
「ちょっと待ちなって。大事なこと忘れてる」
「何?」
「彼女が誰の差し金で送られてきたかってこと」
二人の視線が私に向けられる。
そんなに注目されても知らないことには答えようがない。
「彼女が条件に最適な人物だってことはわかった。でも普通に考えて、夫を亡くして一ヶ月しか経ってない女性をわざわざ教育係に指名するかな? しかもエドヴァルドだってすぐに結婚するわけじゃないし、本人がこんなに嫌がってるのに、急ぐ意味は何?」
言われてみればそうかも。私の場合は、アーネストから一ヶ月以内にバンフィールド辺境伯家を出ていくように言われてたってこともあるから何とも思ってなかったけど、よく考えてみたら、旦那さんを亡くしてまだ一ヶ月しか経ってない奥さんを王宮に呼び出してこういう仕事させるって、ちょっとおかしいよね?
いくら女性側にのっぴきならない事情があっても、教育される本人も乗り気じゃない以上、もうちょっと様子見てもよかったんじゃないかな、とも思わなくはない。
ゲームの設定上必要な役割、つまりは物語の盛り上げ要員であるらしいメリンダならそんな扱いも納得だけど、これがいざ現実となると違和感があるようにも感じる。
まあ、私は今ライオネルに言われて初めてその違和感に気付いただけだから、ゲームの設定だって言われれば、そうなのかなとも思ってしまうんだけど。
でもさ。これがゲームの設定じゃなく、現実にいる誰かの指示で行われた事だったとしたら、私の役割って一体何?
そこまで考えたところでふと嫌な答えが頭を過ぎった。
「それにさぁ、実は今日俺がここで予め待機してたのは、本人には内緒で寝室に教育係を呼んだらしいっていう情報を掴んでたからなんだよね。エドヴァルドは本当にそっち方面のことに対して潔癖すぎるきらいがあるし、そういう相手に対して容赦しないし。それがわかってるはずなのに強引にこの場をセッティングする意味を考えたらさ、何かキナ臭い感じがするなとか思ったわけ。しかも今回陛下に教育係の件を奏上したのは、エドヴァルドを支持してる派閥じゃないみたいだし。一体何が目的なのか知りたいって思うのは当たり前でしょ?」
説明を聞けば聞くほど、私がさっき思いついてしまった答えが真実味を増す。
でも、その為に王太子殿下まで巻き込むなんてこと、本当にするかな?
──でも王太子殿下が本命で、私のほうがついでだとしたら?
私をここに送り込んだ人と、度々私に危害を加えようとした人は同一人物。王太子殿下に何らかのダメージを与えたい人も同じだとしたら、なんとなくだけど線が一本に繋がるような気がするんだけど……。
たぶんこの二人はその人が誰かってことの見当がついていて、私のことはその人物から送られてきた間者じゃないかと疑っている。
だったらまず、私がその人の手先じゃないことをわかってもらわないと、メリンダとしての人生は即座にゲームオーバーっていう可能性もあるってことか……。
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