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12.アイドルってすごいです!
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元気いっぱい挨拶してくれた水森歩夢は、金髪で耳には複数ピアス、ちょっとつり目のいかにもヤンチャ系といった感じの人だった。
だけど、その屈託のない笑顔はすごく好感が持てる感じでホッとする。
確か水森歩夢は八代葉月と同じ十七歳。
深緑色のブレザーに臙脂色のネクタイ。そしてグレンチェックのズボンを身につけている水森歩夢は八代葉月と違い、いかにも高校生って感じで年相応に見えた。
これ制服だよな? ってことは今日は学校だったってことか?
同じ学校に通っている筈の八代が家にいたってことは、授業があったわけじゃないんだろう。
そもそも今春休みだから学校自体行く必要ないか。
ま、どっちにしろ俺はちゃんと仕事するだけだから関係ないよな。
ちょっとだけ芽生えた疑問をすぐにシャットアウトして気持ちを切り替えると、見た目ちょっとヤンキーっぽいけど良い人そうな水森歩夢に笑顔で挨拶した。
「はじめまして。今日からここの管理をさせていただくことになった是枝凛です。よろしくお願いします」
ところが、そう言って軽く頭を下げようとしたところで、水森歩夢はすごい勢いで俺との距離を縮めながら、両手でがっちり俺の手を握ってきたのだ。
「よろしくね!凛さん! 俺の事は歩夢って呼んで!」
俺はキラッキラのアイドルスマイルに圧倒されてしまった。
スゲーな。アイドル。醸し出すオーラが半端ない。
それにこの距離感。普通の人がやったら警戒レベルだと思うのに、アイドルがやると親しみやすいってことになるんだからすごいよな。
俺は愛想笑いを浮かべながら、「……うん、よろしくね。歩夢君」とだけ答えておいた。
管理人として住人達とは上手くやっていきたいが、正直仲良くはなれなさそう……。
そもそも仲良くなりたいわけじゃないけどさ。
ぶっちゃけアイドルが近くにいるってだけで何となくトラブルの臭いがするから、仕事以外ではあんまり関わりあいになりたくない。
さっき会った碧さんは大人だから『何かあったら力になる』って言ってくれたけど、節度ある距離で付き合っていきたいと思ってるし、第一印象から最悪な八代葉月は言わずもがな。
そしてこの水森歩夢はどうやら他人と接する距離が近い人みたいなので、ちょっと気を付けたほうがいいのかもしれない。
「歩夢君今帰って来たばかりだろ? 手洗いうがいした? アイドルは身体が資本なんだから気をつけないとダメだよ?」
べつに世話を焼きたいわけじゃないが、とりあえずこの状態から離れられるなら理由は何でもいい。
「あ!そうだった!嬉しくて、つい!! ゴメン。すぐに行ってくる!」
どうやら素直な性格らしい歩夢君は、ハッとした表情をするとすぐに手を離してくれた。
しかしそのまま慌ててキッチンを飛び出していこうとしたところで、何故かすぐに足を止める。
──何か気になることでもあったかな?
「? ご飯できたら呼ぶから」
「俺も手伝う!」
「え?」
思いがけない申し出に喜ぶべきなのか、ひとりのほうがありがたいと素直に言うべきかちょっと迷う。
すると。
「今日は凛さんの歓迎会だよ? 本人だけが準備するのおかしいじゃん。だからお手伝いさせて!俺、野菜の皮剥きとか洗い物するくらいは出来るから。じゃあすぐに着替えてくるね!」
歩夢君はごく自然な仕草で軽くウィンクしながら出ていった。
ホントにアイドルってすごいな……。
今までの俺の人生で去り際にウィンクする人間なんていなかったぞ……。
俺はおかしなところで妙に感心しながらも、せっかくの善意を無駄にしないよう(あまり期待してないけど)、ありがたくその気持ちだけ受け取っておくことにした。
だけど、その屈託のない笑顔はすごく好感が持てる感じでホッとする。
確か水森歩夢は八代葉月と同じ十七歳。
深緑色のブレザーに臙脂色のネクタイ。そしてグレンチェックのズボンを身につけている水森歩夢は八代葉月と違い、いかにも高校生って感じで年相応に見えた。
これ制服だよな? ってことは今日は学校だったってことか?
同じ学校に通っている筈の八代が家にいたってことは、授業があったわけじゃないんだろう。
そもそも今春休みだから学校自体行く必要ないか。
ま、どっちにしろ俺はちゃんと仕事するだけだから関係ないよな。
ちょっとだけ芽生えた疑問をすぐにシャットアウトして気持ちを切り替えると、見た目ちょっとヤンキーっぽいけど良い人そうな水森歩夢に笑顔で挨拶した。
「はじめまして。今日からここの管理をさせていただくことになった是枝凛です。よろしくお願いします」
ところが、そう言って軽く頭を下げようとしたところで、水森歩夢はすごい勢いで俺との距離を縮めながら、両手でがっちり俺の手を握ってきたのだ。
「よろしくね!凛さん! 俺の事は歩夢って呼んで!」
俺はキラッキラのアイドルスマイルに圧倒されてしまった。
スゲーな。アイドル。醸し出すオーラが半端ない。
それにこの距離感。普通の人がやったら警戒レベルだと思うのに、アイドルがやると親しみやすいってことになるんだからすごいよな。
俺は愛想笑いを浮かべながら、「……うん、よろしくね。歩夢君」とだけ答えておいた。
管理人として住人達とは上手くやっていきたいが、正直仲良くはなれなさそう……。
そもそも仲良くなりたいわけじゃないけどさ。
ぶっちゃけアイドルが近くにいるってだけで何となくトラブルの臭いがするから、仕事以外ではあんまり関わりあいになりたくない。
さっき会った碧さんは大人だから『何かあったら力になる』って言ってくれたけど、節度ある距離で付き合っていきたいと思ってるし、第一印象から最悪な八代葉月は言わずもがな。
そしてこの水森歩夢はどうやら他人と接する距離が近い人みたいなので、ちょっと気を付けたほうがいいのかもしれない。
「歩夢君今帰って来たばかりだろ? 手洗いうがいした? アイドルは身体が資本なんだから気をつけないとダメだよ?」
べつに世話を焼きたいわけじゃないが、とりあえずこの状態から離れられるなら理由は何でもいい。
「あ!そうだった!嬉しくて、つい!! ゴメン。すぐに行ってくる!」
どうやら素直な性格らしい歩夢君は、ハッとした表情をするとすぐに手を離してくれた。
しかしそのまま慌ててキッチンを飛び出していこうとしたところで、何故かすぐに足を止める。
──何か気になることでもあったかな?
「? ご飯できたら呼ぶから」
「俺も手伝う!」
「え?」
思いがけない申し出に喜ぶべきなのか、ひとりのほうがありがたいと素直に言うべきかちょっと迷う。
すると。
「今日は凛さんの歓迎会だよ? 本人だけが準備するのおかしいじゃん。だからお手伝いさせて!俺、野菜の皮剥きとか洗い物するくらいは出来るから。じゃあすぐに着替えてくるね!」
歩夢君はごく自然な仕草で軽くウィンクしながら出ていった。
ホントにアイドルってすごいな……。
今までの俺の人生で去り際にウィンクする人間なんていなかったぞ……。
俺はおかしなところで妙に感心しながらも、せっかくの善意を無駄にしないよう(あまり期待してないけど)、ありがたくその気持ちだけ受け取っておくことにした。
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