本の世界へ強制トリップ~俺がやりたかったのはコレじゃない~

みなみ ゆうき

文字の大きさ
上 下
10 / 22

10.噂ほど当てにならないものはない

しおりを挟む
平安貴族の装いを身に纏った六条は驚きに固まったままの俺の左腕を掴むと、もう片方の手で腰を抱き床へと押し倒した。


「何を!?」


六条の手から逃れようと慌てて身体を起こしてみたものの、マウントポジションというアドバンテージは如何ともし難く、俺の身体を抑え込むその手はビクともしない。


「お静かに。大声を出すと何事かと思い、女房が駆け付けてしまいますよ」


その一言で俺は何も言えなくなる。

だって、いくら初めてじゃないとはいえ、男に押し倒されてんのを誰かに知られんのはさすがに抵抗がある。
それにエロいこと大好きとはいえ、自分がヤられる側で羞恥プレイとか絶対ムリ。


六条は大人しくなった俺を満足そうに見下ろすと、顔を近付け不敵に笑った。

この世界の女の人と同じように結われることなく下ろされたままの六条の長い髪がハラリと落ちて向かい合った俺の頬に触れる。
その感触が、これが現実におこっている事なのだということを嫌でも認識させてくれているようで舌打ちしたくなった。


「今は世捨て人同然に暮らしている私に、若いながらも名うての風流人と言われる源氏の君が近付いてきた本当の理由は?」

「それは……当代一の貴婦人と言われる御息所様のもとで更なる教養を深めたくて……」


未亡人!アタックチャーンス!!って思ったから。なんて絶対言えない。


「それが本当なら貴方は余程の勉強家だね。あれだけの素養をお持ちの源氏の君には今更私の指南など必要だとは思えないのだけれど。でもどんな形にせよ私に興味を持っていただけたのなら満更でもないな。
春宮という地位を捨て、御息所に成り代わりあたかも女人のように振る舞って生きてきた甲斐があるというものだ」


ってことは、この六条のそっくりさんは病気で亡くなったっていう前春宮で。
光源氏の父親で桐山そっくりの桐壺帝の兄貴ってことになる。

え。そんな事ってあり得んの?

しかも誰にも会わず直接喋らず女のふりをして交流するって、これまるっきりネカマのやり口じゃん!
俺、ネカマ詐欺に引っ掛かったってこと!?


「おや?急に顔色が変わったのはやはり疚しいことがあるということなのかな?
素直に教えてくれたら優しくしてあげてもよいのだけれど」


六条は仰向けになった俺の上で片方の口の端を上げるっていう男の色気全開の笑みを浮かべると、俺の着ているものを脱がしにかかった。

その際、六条の指先が俺の乳首に触れてしまい、勝手にビクリと身体が跳ねる。


「ん…ッ……」


ヤベ……。


「おや? この反応……。すでに色々と経験なさっておいでのようだ。さすがは噂に名高い源氏の君」


あっさりと男に抱かれたことがあるのを見抜かれて、俺は羞恥と屈辱がない交ぜになり一瞬にして全身が熱くなるのを感じた。

六条ははだけた着物の間からすかさず手を差し入れると指先でその部分を撫でながら器用に腰紐を解いていく。


「あぁ……、んッ……、はぁ……」

「もうこんなに固く凝り始めるとは。余程私に触れて欲しいとみえる」

「そんなことは……、あぁッ……!」


否定しようにも普段は全く機能してない部分のくせに、こんな時ばかりやたらと自己主張してくる乳首が憎い。

俺がささやかな抵抗とばかりに身を捩ろうとしたところで、図ったかのようなタイミングで指貫《さしぬき》って呼ばれる袴みたいなものが脱がされ、その下に着ていた下着的な役割をしてる白い着物もあっさり袷せ目が開けられていく。

その結果。当然のことながらノーパンだった俺の大事なところは丸見えになった。

ちなみに俺のチンコ。さっきの乳首への刺激でその存在をしっかり主張している。


「月明かりに照らされて、貴方の若く瑞々しい肌がいっそ眩しいくらいだね……。さあ、ここからどうしようか」


そのまま中途半端に腕の部分だけに着物が残った状態で全身をつぶさに観察され、俺の身体は自分の意思とは裏腹に勝手に熱くなっていく。

更に乳首を強く摘ままれながらチンコの先っぽを撫でられると、鋭い痛みがじんじんとした快感に塗り替えられていくような錯覚に陥り気持ちよくなってくるのだから堪らない。


「ふぅん。こうされるのも嫌ではないということか……。口を割らせる手段は苦痛だけではないからね。このまま続けてみるのもまた一興だな」


六条は恐ろしい事を口にすると、さっき解かれた腰紐を使ってあっという間に俺の手を頭上で縛りあげ、更に何かで目隠しまでしてしまった。

え!?まさかの緊縛プレイ!?

自分の状態を認識して何とかしようと腕に力を込めてみたもののガッチリ結ばれた紐は全く緩むことはなく、何度か頭を振ってみても目元を覆った布がずれることもなかった。


こういうの正直嫌いじゃないけど、これはやるより見るほうが絶対いいし、縛られてアンアン言ってるのは断然可愛い女の子がいい!


そんな俺の気持ちなんてお構い無しに、六条は俺のすぐ側でクスリと笑うとツーッと脇腹を撫でてきた。


「やぁ……ッ……」


ちょっと触られただけでも擽ったくて仕方のない部分なのに、視覚が塞がれているとその刺激は倍増って感じ。

しかも次に何されるのか全くわからないから変にドキドキしちゃって、六条の息がかかるだけでもビクビクと身体を震わせてしまう。
たぶんこれが悶えるってことなんだと思う。ヤバい。めっちゃヤバい。


「で?誰に聞いたのかな? 貴方の父君である桐壺帝は私の事情をご存知だけれど、そういった事を軽々しく口になさる方ではないし。──だとすると左大臣かな?確か貴方の奥方は左大臣の姫だったね」

「……左大臣は関係ない。あくまでも自分の意思でここに来た」

「男だって疑っていながら私に会いに?」


疑うどころかその可能性は微塵も考えていなかったけど、今更そんな事も言い出せずに押し黙る。

すると、それを肯定の意味にとったらしい六条が軽く息を吐いた。


「──それは光栄だね」


ちっとも光栄だとは思っていないのがよく分かる皮肉めいた口調が、なんかコイツのSっぷりを物語ってるようで急に恐ろしくなってしまう。


「もしかして怖がらせてしまったかな?先程よりも元気がないようだよ。貴方のココ」

「はぅッ……!」


力を無くしかけてたチンコの先端をそっと撫でられ、予期せぬ衝撃に俺は大きく仰け反った。


「随分敏感な身体だね。源氏の君は左大臣家に通っても妻である姫ではなくご子息とばかり会っているらしいという噂を聞いたけど、まさかこういうことだったとは……」


え……?どういうこと?
俺と頭の中将がなんだって?

聞き捨てならない言葉に動揺を隠しきれずにいると、衣擦れの音がして六条が俺から離れていく気配を感じた。

──もしかして勝手に色々誤解して諦めてくれたとか?

この状態からひと先ず抜け出せるんだったら、ネカマにホモ認定されて頭の中将との仲を誤解されても全然オッケー!!

ホッと一息吐いたのも束の間。


「あぁんッ……!」


再び衣擦れの音がしたと思ったら突然乳首とチンコの先っぽを柔らかい何かで撫でられ、完全に油断していた俺はあられもない声をあげながら身をくねらせた。

何、これ!?
明らかに指や舌で触られるのとは違う未知の感触に嫌な予感しかしない。


「せっかくこのような所まで教養を深めに参られたのだから、このまま手習いの指南といきましょうか」


その一言に、俺はたった今自分の敏感な部分を撫でたものが何かということを察し、勝手に全身が熱くなるのをやめられない。

──あ、もしかしてコレ。アレですか?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

アリスの苦難

浅葱 花
BL
主人公、有栖川 紘(アリスガワ ヒロ) 彼は生徒会の庶務だった。 突然壊れた日常。 全校生徒からの繰り返される”制裁” それでも彼はその事実を受け入れた。 …自分は受けるべき人間だからと。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

王道学園なのに会長だけなんか違くない?

ばなな
BL
※更新遅め この学園。柵野下学園の生徒会はよくある王道的なも のだった。 …だが会長は違ったーー この作品は王道の俺様会長では無い面倒くさがりな主人公とその周りの話です。 ちなみに会長総受け…になる予定?です。

平凡な俺が総受け⁈

雫@更新予定なし
BL
平凡な俺が総攻めになる⁈の逆バージョンです。高校生活一日目で車にひかれ異世界へ転生。顔は変わらず外れくじを引いたかと思ったがイケメンに溺愛され総受けになる物語です。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

陛下の失われしイチモツをみつけた者を妃とする!………え、ヤバいどうしよう!?

ミクリ21
BL
主人公がヤバいことしてしまいました。

処理中です...