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5.気まずい空気
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ほぼ成り行きで桐山に処女を捧げることになってしまった俺は、確実にここに運ばれてきた時よりも保健室のベッドが似合う状態になっていた。
ヤバい……。なんか身体がガクガクする……。
家に帰ろうにも下半身に上手く力が入らずまるで生まれたての子馬のように足がプルプルしちゃってるし、何よりもさっきまで桐山のモノに占領されていた後ろの穴が、あまりに開かれっぱなしだった影響か違和感半端ない状態になっている。
たぶん桐山は相当上手いんだと思う。
でなきゃ初めて男とした俺があそこまでアンアン言わされる筈がない。
これはあくまでも夢の中の桐山と現実の桐山のテクニックが優れていたせいであって、俺にこっちの素質があった訳じゃないことを全力で主張したい案件だ。
その証拠にあんなに感じてよがりまくってたとしても、やっぱり相手は女の子がいいし、断然抱く側がいい……筈。
きっぱりと言い切れないのは成り行きで開いちゃった扉が思いの外気持ち良くて、そのせいで未だに思考回路が上手く作動してないからだと思うんだけど。
あ~、ダル……。このままもう一回寝てぇ……。
俺の意思とは関係なく休息を欲した身体が勝手に睡眠モードに入り、うとうとしかけたその時。
「源川、起きてるか? 入るぞ」
閉じられたカーテンの隙間から滑り込むように入ってきたのは、俺の担任で英語教師の六条。
一見人当たりが良さそうだが意外と神経質そうな桐山とも仲が良い爽やかイケメンで、桐山同様女子にも人気のある先生だ。
「桐山先生に聞いたけど、起き上がるのもしんどいんだって?」
「……はい。まあ……」
その桐山が主な原因だとはとても言えない。
苦笑いしつつ言葉を濁すと、一瞬だけ六条の視線が鋭くなった気がした。
え?
いつもの六条からは想像もつかない表情に、俺は自分が見たものが信じられず思わず二度見する。
あれ?やっぱり見間違い?
「どうした?」
心配そうに俺を見つめる六条はいつもの印象と変わらないもので、俺はさっきの表情を見間違いだと思うことにした。
「いえ、何でもありません。ちょっと休んだら帰れると思うんで」
「そうか。一応ご両親に連絡しておいたんだけど、お二人ともすぐに迎えに来れるところにいないと言われて」
「あ、はい。両親は今留守なんで」
俺の両親は共働きで、父親は地方に単身赴任。母親は昨日から一週間の予定で出張中。
一人っ子のため家には誰もおらず、悠々自適にひとりの生活を満喫しつつも、一週間女の子連れ込み放題で、思う存分楽しむ予定だったのだ。それなのに……。
──確かにセックスはした。気持ち良かった。
でも気持ち的にはこれじゃない感満載でちっとも満たされた気がしない。
さすがに今日は無理だけど、このダメージが回復したら仕切り直しするしかないな。
密かに決意を固めていると。
「良かったら俺が車で送ろうか?」
思わぬ提案をされ、ちょっとだけ考えてしまった。
「……大丈夫です。自分で帰れる思うんで」
今の状態の俺には魅力的提案だが、何となく気が乗らない。
「そうか?無理しなくていいんだぞ」
その上、にこやかな笑みを浮かべた六条が一歩俺に近付き腕を伸ばしてきたところで、何となくそれを避けなきゃいけない気にさせられた。
今日の六条はどことなく様子が違う気がしてならないんだけど、これって俺に疚しいことがあるせいなのかな?
その時。
ガラッ!
勢いよく保健室の扉が開けられる音がして思わずビクッとしてしまう。
そんな俺を見て六条が何とも言えない微妙な表情をしてるのがいたたまれない。
言っとくけど俺、別にビビりとかじゃない。
ちょっと油断している時に聞こえる大きな物音とか、理由が説明出来ない不可思議現象が苦手なだけだから!
ちなみに鬼は大丈夫。絶対いないのわかってるから。
「耀《よう》、荷物持ってきたから帰ろうぜー。
──ってあれ? 先生、いたんだ」
「中頭《なかず》か……。その言い種だと俺がいたら何かマズい事でもあるみたいだな」
「いーえ。とんでもない。ただの担任教師と男子生徒の間でマズいことなんてあるわけないですよね」
将平の言葉に俺は内心ギクリとさせられる。
六条との間にはマズい事などありはしないが、その前に桐山とだいぶマズい事やっちゃったからな……。
「それからな、扉は静かに開け閉めしろ」
「はーい。すいませんでしたー」
ちっとも悪いと思ってないのが丸わかりな言い方に、六条は大袈裟にため息を吐いた。
「はぁ……。そういえば中頭は源川と家が近いんだったな」
「はい。コイツんちの親が留守の時は、何かあったらうちが面倒見ることになってるんで。だからコイツは俺が責任持って連れて帰るんで大丈夫です」
「そうか。でも源川は立つのもしんどいらしいから歩いて帰るのは無理そうだぞ? だから俺が車で送ろうかって話してたとこなんだ」
「そうですか。そこまで……」
「ああ、かなり具合が悪いらしい」
表面上は穏やかに会話しているように聞こえるが、心なしか二人の表情が徐々に剣呑な感じに変わっていってる気がする。
「チッ、全く油断も隙もねぇな」
「ああ、全くだ」
「……アンタもな」
「先生に向かってアンタ呼ばわりはいただけないな。まあ、苛立つ気持ちもわからなくはないが。
──とりあえず今日のところは二人まとめて俺が送ってやる。正面玄関で待ってろ」
「わかった」
俺の存在はほとんどスルー状態であっという間に話が纏まり、六条は保健室から出ていった。
将平と二人になった俺はどこか気詰まりな空気が薄まったことにホッとため息を吐く。
すると。
「……耀はもうちょっと色々気をつけたほうがいいと思う」
何を指してそう言ってるのかはわからないが、今まで見たことのないほど険しい表情をした将平に、俺の中に急激に罪悪感に似た気持ちが沸いてきた。
何だろう……。今までほとんど隠し事とかしてこなかったせいでこんな気持ちになるのかな……?
──でもこれは将平にも絶対言えねぇ。
桐山にそっくりな人とエッチする夢を見ちゃった挙げ句、現実では最後までやっちゃったなんて墓の中まで持っていきたい秘密だ。
「そういえば!将平昨日合コンだったんだろ?どうだった?」
何となく気まずくなった俺は、無理矢理話題転換を図ることにした。
この話題なら話も逸れる上に会話も弾むこと間違いなしだ。
しかし。
「んー。まあ、普通。いつもと同じ」
なんだかテンションの低い将平に拍子抜けさせられる。
いつもだったらどんな感じのコでどういう事したのかとか軽いノリで教えてくれるのに。
まさかの惨敗だったとか?
でも将平に限ってそれはないな。
将平は見るからに優しそうで、性格も見た目どおり。
優しくて頼りになるお兄ちゃんって感じのイケメンだ。
女に対するフットワークの軽さとサイクルの早さは俺と変わんないんだけど、ちょっとタレ目なとことかが甘い印象を与えるのか、綺麗だけどキツい顔立ちだと言われる俺より遥かに女受けがいい。
「当然お持ち帰りしたんだろ?」
俺が彼女にフラれ浮気相手にも逃げられて悶々としていた時に楽しみやがって、なんて自虐ネタを交えながら絡んでいたら。
「昨日は顔だけ出してすぐ帰った。俺もうそういうのやめようかと思って」
「え~。またまた~。お前も俺と一緒で女の子切らしたことなかったじゃん。
あ!まさかとは思うけど、ついに本命出来ちゃったとか?」
冗談めかして聞いたつもりが、思いの外真面目な表情の将平に見つめられ、俺はそれ以上何も言えなくなった。
「俺ホントは女の子と付き合うとかどうでもいいんだ。最低な話だけど本気で好きなコ以外誰でも良かったから適当に相手してただけ。でももうそれもやめる」
「何で……?」
「このままじゃ一生俺の気持ちに気付いてもらえそうにないし、モタモタしてたせいでせっかくのチャンスを逃しちゃったからね。これ以上遅れをとらないように全力で奪いにいくよ」
将平にここまで言わせる本命とやらがちょっと気になったものの、それは何となく聞いちゃいけないような気がして。
俺は一言、頑張れよとしか言えなかった。
ヤバい……。なんか身体がガクガクする……。
家に帰ろうにも下半身に上手く力が入らずまるで生まれたての子馬のように足がプルプルしちゃってるし、何よりもさっきまで桐山のモノに占領されていた後ろの穴が、あまりに開かれっぱなしだった影響か違和感半端ない状態になっている。
たぶん桐山は相当上手いんだと思う。
でなきゃ初めて男とした俺があそこまでアンアン言わされる筈がない。
これはあくまでも夢の中の桐山と現実の桐山のテクニックが優れていたせいであって、俺にこっちの素質があった訳じゃないことを全力で主張したい案件だ。
その証拠にあんなに感じてよがりまくってたとしても、やっぱり相手は女の子がいいし、断然抱く側がいい……筈。
きっぱりと言い切れないのは成り行きで開いちゃった扉が思いの外気持ち良くて、そのせいで未だに思考回路が上手く作動してないからだと思うんだけど。
あ~、ダル……。このままもう一回寝てぇ……。
俺の意思とは関係なく休息を欲した身体が勝手に睡眠モードに入り、うとうとしかけたその時。
「源川、起きてるか? 入るぞ」
閉じられたカーテンの隙間から滑り込むように入ってきたのは、俺の担任で英語教師の六条。
一見人当たりが良さそうだが意外と神経質そうな桐山とも仲が良い爽やかイケメンで、桐山同様女子にも人気のある先生だ。
「桐山先生に聞いたけど、起き上がるのもしんどいんだって?」
「……はい。まあ……」
その桐山が主な原因だとはとても言えない。
苦笑いしつつ言葉を濁すと、一瞬だけ六条の視線が鋭くなった気がした。
え?
いつもの六条からは想像もつかない表情に、俺は自分が見たものが信じられず思わず二度見する。
あれ?やっぱり見間違い?
「どうした?」
心配そうに俺を見つめる六条はいつもの印象と変わらないもので、俺はさっきの表情を見間違いだと思うことにした。
「いえ、何でもありません。ちょっと休んだら帰れると思うんで」
「そうか。一応ご両親に連絡しておいたんだけど、お二人ともすぐに迎えに来れるところにいないと言われて」
「あ、はい。両親は今留守なんで」
俺の両親は共働きで、父親は地方に単身赴任。母親は昨日から一週間の予定で出張中。
一人っ子のため家には誰もおらず、悠々自適にひとりの生活を満喫しつつも、一週間女の子連れ込み放題で、思う存分楽しむ予定だったのだ。それなのに……。
──確かにセックスはした。気持ち良かった。
でも気持ち的にはこれじゃない感満載でちっとも満たされた気がしない。
さすがに今日は無理だけど、このダメージが回復したら仕切り直しするしかないな。
密かに決意を固めていると。
「良かったら俺が車で送ろうか?」
思わぬ提案をされ、ちょっとだけ考えてしまった。
「……大丈夫です。自分で帰れる思うんで」
今の状態の俺には魅力的提案だが、何となく気が乗らない。
「そうか?無理しなくていいんだぞ」
その上、にこやかな笑みを浮かべた六条が一歩俺に近付き腕を伸ばしてきたところで、何となくそれを避けなきゃいけない気にさせられた。
今日の六条はどことなく様子が違う気がしてならないんだけど、これって俺に疚しいことがあるせいなのかな?
その時。
ガラッ!
勢いよく保健室の扉が開けられる音がして思わずビクッとしてしまう。
そんな俺を見て六条が何とも言えない微妙な表情をしてるのがいたたまれない。
言っとくけど俺、別にビビりとかじゃない。
ちょっと油断している時に聞こえる大きな物音とか、理由が説明出来ない不可思議現象が苦手なだけだから!
ちなみに鬼は大丈夫。絶対いないのわかってるから。
「耀《よう》、荷物持ってきたから帰ろうぜー。
──ってあれ? 先生、いたんだ」
「中頭《なかず》か……。その言い種だと俺がいたら何かマズい事でもあるみたいだな」
「いーえ。とんでもない。ただの担任教師と男子生徒の間でマズいことなんてあるわけないですよね」
将平の言葉に俺は内心ギクリとさせられる。
六条との間にはマズい事などありはしないが、その前に桐山とだいぶマズい事やっちゃったからな……。
「それからな、扉は静かに開け閉めしろ」
「はーい。すいませんでしたー」
ちっとも悪いと思ってないのが丸わかりな言い方に、六条は大袈裟にため息を吐いた。
「はぁ……。そういえば中頭は源川と家が近いんだったな」
「はい。コイツんちの親が留守の時は、何かあったらうちが面倒見ることになってるんで。だからコイツは俺が責任持って連れて帰るんで大丈夫です」
「そうか。でも源川は立つのもしんどいらしいから歩いて帰るのは無理そうだぞ? だから俺が車で送ろうかって話してたとこなんだ」
「そうですか。そこまで……」
「ああ、かなり具合が悪いらしい」
表面上は穏やかに会話しているように聞こえるが、心なしか二人の表情が徐々に剣呑な感じに変わっていってる気がする。
「チッ、全く油断も隙もねぇな」
「ああ、全くだ」
「……アンタもな」
「先生に向かってアンタ呼ばわりはいただけないな。まあ、苛立つ気持ちもわからなくはないが。
──とりあえず今日のところは二人まとめて俺が送ってやる。正面玄関で待ってろ」
「わかった」
俺の存在はほとんどスルー状態であっという間に話が纏まり、六条は保健室から出ていった。
将平と二人になった俺はどこか気詰まりな空気が薄まったことにホッとため息を吐く。
すると。
「……耀はもうちょっと色々気をつけたほうがいいと思う」
何を指してそう言ってるのかはわからないが、今まで見たことのないほど険しい表情をした将平に、俺の中に急激に罪悪感に似た気持ちが沸いてきた。
何だろう……。今までほとんど隠し事とかしてこなかったせいでこんな気持ちになるのかな……?
──でもこれは将平にも絶対言えねぇ。
桐山にそっくりな人とエッチする夢を見ちゃった挙げ句、現実では最後までやっちゃったなんて墓の中まで持っていきたい秘密だ。
「そういえば!将平昨日合コンだったんだろ?どうだった?」
何となく気まずくなった俺は、無理矢理話題転換を図ることにした。
この話題なら話も逸れる上に会話も弾むこと間違いなしだ。
しかし。
「んー。まあ、普通。いつもと同じ」
なんだかテンションの低い将平に拍子抜けさせられる。
いつもだったらどんな感じのコでどういう事したのかとか軽いノリで教えてくれるのに。
まさかの惨敗だったとか?
でも将平に限ってそれはないな。
将平は見るからに優しそうで、性格も見た目どおり。
優しくて頼りになるお兄ちゃんって感じのイケメンだ。
女に対するフットワークの軽さとサイクルの早さは俺と変わんないんだけど、ちょっとタレ目なとことかが甘い印象を与えるのか、綺麗だけどキツい顔立ちだと言われる俺より遥かに女受けがいい。
「当然お持ち帰りしたんだろ?」
俺が彼女にフラれ浮気相手にも逃げられて悶々としていた時に楽しみやがって、なんて自虐ネタを交えながら絡んでいたら。
「昨日は顔だけ出してすぐ帰った。俺もうそういうのやめようかと思って」
「え~。またまた~。お前も俺と一緒で女の子切らしたことなかったじゃん。
あ!まさかとは思うけど、ついに本命出来ちゃったとか?」
冗談めかして聞いたつもりが、思いの外真面目な表情の将平に見つめられ、俺はそれ以上何も言えなくなった。
「俺ホントは女の子と付き合うとかどうでもいいんだ。最低な話だけど本気で好きなコ以外誰でも良かったから適当に相手してただけ。でももうそれもやめる」
「何で……?」
「このままじゃ一生俺の気持ちに気付いてもらえそうにないし、モタモタしてたせいでせっかくのチャンスを逃しちゃったからね。これ以上遅れをとらないように全力で奪いにいくよ」
将平にここまで言わせる本命とやらがちょっと気になったものの、それは何となく聞いちゃいけないような気がして。
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