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12.エセルバート公爵の噂
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私がエセルバート公爵の名前を聞いて驚いたのには訳がある。
エセルバート公爵家といえば、貴族として生まれた人間なら誰でも知っている言っても過言ではないほどの名門貴族だ。
今私の目の前にいらっしゃる王妃様はエセルバート公爵家のご出身で、先代のエセルバート公爵の妹であり、当代エセルバート公爵であるカイル様の叔母に当たる方なのだ。
今日の夜会がエセルバート公爵家主催の夜会であることを考えれば、最も身分の高いゲストである王妃様と一緒にいたカイル様がどういった身分の方か少し考えればわかったことなのだが、生憎色んなセンサーが鈍い私ではその考えにまで至ることは出来なかった。
王妃様と親しげな様子から、カイル様が高位の貴族じゃないかという予想は立てていたのだが、まさかエセルバート公爵本人だとは思わなかったのだ。
私がカイル様とエセルバート公爵を結びつけられなかった理由は他にもある。
噂に聞こえてきたエセルバート公爵は、若くして爵位を継いだ実力者というだけではなく、稀代の天才魔術師との呼び声が高い人物なのだ。
そのイメージと目の前のカイル様の印象があまりにもかけ離れていた。
この世界には魔法がある。
しかしそれは誰でもが使えるものではなく、限られた人間だけに備わった生まれ持った資質だ。
このベルク王国の国民は12歳になると全員が魔力持ちかどうかの検査を受ける義務があり、ほんの僅かでも魔力を持っていることがわかれば、身分に関係なく国から保護と管理の対象とされ、特殊な教育を受けることになっている。
使い方を誤ると大変なことになるのが魔法というものらしいので、魔力持ちは無知でいることが許されないためだ。
しかしその教育期間さえ無事に終えれば、そこからどんな道に進むかは本人次第。
勝手に国外に出ることさえしなければ、国のために働こうが、個人で何かしようが、結婚しようが文句は言われないらしい。
一般人にとって魔法は未知で特殊なものだが、案外身近なものでもある。
魔力のない一般人は、魔力持ちの人間が作り出した術式が込められた魔石というものを用いることで、特殊な道具を通して魔法の恩恵を受けることができるようになったのだ。
魔石の用途は込められた術式によって多種多様だが、他人に害を及ぼす可能性のあるものの流通は認められていないので、魔力のない人間も安心して使える。
少し前までの私は、魔力など欠片も持ち合わせていないせいか、その恩恵に与っているという認識はあっても、便利になったなーくらいにしか感じていなかった。
しかしエセルバート公爵が開発したという術式を体感した時、あらためて魔法の凄さを実感したのだ。
エセルバート公爵は近年稀にみる高い魔力を持ち、魔獣の討伐や他国との小競り合いなど軍事的な場でも圧倒的な活躍を見せる一方、便利な術式を次々と生み出している天才魔術師でもある。
その公爵が生み出した『灯り』の術式は実に革命的だった。
その術式が開発される前は、ろうそくに火打石で種火を作った火を灯すというのが一般的な夜の灯りだったのだが、エセルバート公爵が開発した術式が籠められた魔石が流通した今では、それに対応した道具に魔石をセットするだけで、ろうそくの灯りよりも格段に明るい灯りで夜を過ごすことができるようになったのだ。
本の虫である私にとって夜間の灯りは命綱。
ろうそくのように燃え尽きて新しいものに交換しなければならないなどということもない上、薄暗いろうそくとは比べ物にならないほど明るい。
これが流通し始めてから私は密かにエセルバート公爵という人物を勝手に神のように崇め奉っていたものだ。
まさか実際のエセルバート公爵が、今目の前にいるようないけ好かない人物であるとは知りもせず。
エセルバート公爵家といえば、貴族として生まれた人間なら誰でも知っている言っても過言ではないほどの名門貴族だ。
今私の目の前にいらっしゃる王妃様はエセルバート公爵家のご出身で、先代のエセルバート公爵の妹であり、当代エセルバート公爵であるカイル様の叔母に当たる方なのだ。
今日の夜会がエセルバート公爵家主催の夜会であることを考えれば、最も身分の高いゲストである王妃様と一緒にいたカイル様がどういった身分の方か少し考えればわかったことなのだが、生憎色んなセンサーが鈍い私ではその考えにまで至ることは出来なかった。
王妃様と親しげな様子から、カイル様が高位の貴族じゃないかという予想は立てていたのだが、まさかエセルバート公爵本人だとは思わなかったのだ。
私がカイル様とエセルバート公爵を結びつけられなかった理由は他にもある。
噂に聞こえてきたエセルバート公爵は、若くして爵位を継いだ実力者というだけではなく、稀代の天才魔術師との呼び声が高い人物なのだ。
そのイメージと目の前のカイル様の印象があまりにもかけ離れていた。
この世界には魔法がある。
しかしそれは誰でもが使えるものではなく、限られた人間だけに備わった生まれ持った資質だ。
このベルク王国の国民は12歳になると全員が魔力持ちかどうかの検査を受ける義務があり、ほんの僅かでも魔力を持っていることがわかれば、身分に関係なく国から保護と管理の対象とされ、特殊な教育を受けることになっている。
使い方を誤ると大変なことになるのが魔法というものらしいので、魔力持ちは無知でいることが許されないためだ。
しかしその教育期間さえ無事に終えれば、そこからどんな道に進むかは本人次第。
勝手に国外に出ることさえしなければ、国のために働こうが、個人で何かしようが、結婚しようが文句は言われないらしい。
一般人にとって魔法は未知で特殊なものだが、案外身近なものでもある。
魔力のない一般人は、魔力持ちの人間が作り出した術式が込められた魔石というものを用いることで、特殊な道具を通して魔法の恩恵を受けることができるようになったのだ。
魔石の用途は込められた術式によって多種多様だが、他人に害を及ぼす可能性のあるものの流通は認められていないので、魔力のない人間も安心して使える。
少し前までの私は、魔力など欠片も持ち合わせていないせいか、その恩恵に与っているという認識はあっても、便利になったなーくらいにしか感じていなかった。
しかしエセルバート公爵が開発したという術式を体感した時、あらためて魔法の凄さを実感したのだ。
エセルバート公爵は近年稀にみる高い魔力を持ち、魔獣の討伐や他国との小競り合いなど軍事的な場でも圧倒的な活躍を見せる一方、便利な術式を次々と生み出している天才魔術師でもある。
その公爵が生み出した『灯り』の術式は実に革命的だった。
その術式が開発される前は、ろうそくに火打石で種火を作った火を灯すというのが一般的な夜の灯りだったのだが、エセルバート公爵が開発した術式が籠められた魔石が流通した今では、それに対応した道具に魔石をセットするだけで、ろうそくの灯りよりも格段に明るい灯りで夜を過ごすことができるようになったのだ。
本の虫である私にとって夜間の灯りは命綱。
ろうそくのように燃え尽きて新しいものに交換しなければならないなどということもない上、薄暗いろうそくとは比べ物にならないほど明るい。
これが流通し始めてから私は密かにエセルバート公爵という人物を勝手に神のように崇め奉っていたものだ。
まさか実際のエセルバート公爵が、今目の前にいるようないけ好かない人物であるとは知りもせず。
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