俺の都合通りになる世界の主人公になった話

みなみ ゆうき

文字の大きさ
上 下
15 / 15

感謝SS 『アラン君の不遇な一日』

しおりを挟む
俺の名前はアラン・プロシード。

最高峰の魔導師にして魔術師団を束ねるカーク・ジルベルト師団長の一番弟子にして、補佐官も務める優秀な魔術師だ。


実は俺には前世の記憶というものがある。

前世の俺は深淵の闇から生み出された魔物で、気の遠くなるような年月を地の底で過ごし、ある時たまたま魔王様の目に留まり気紛れに地上へと引きずり出された。

その日俺は魔王様と契約し、魔王様の使い魔となった。


それからまたかなりの年月を過ごし、いい加減この生活にも飽きてきたな、なんて思ってた頃。

突然魔王様が『神と取り引きした』と言い出したのだ。

その内容は今度魔王討伐にやってくる勇者を自分の生け贄おもちゃとする代わりに、その生け贄おもちゃに飽きるまでの間、大人しくするというものだった。


見た目普通。中身は童貞を拗らせたゲスとしか言い様のないレオン・バートの何が気に入ったのか俺にはさっぱりわからなかったけど、魔王様が決めたというのなら使い魔でしかない俺に否やはない。


こうして魔王様は表面上勇者の手により消滅し、新しく生まれ変わる世界へと旅立たれたのでした。

めでたしめでたし。



……って思ってたんだけど。



輪廻の輪の中に組み込まれ、漸く気の遠くなるようなこの生に終わりが来るんだと思った瞬間。

俺はアラン・プロシードという人間として生まれ変わっていた。
よりにもよって魔王様ことカーク・ジルベルト様の側近という役処で。


使い魔って主人と魂レベルで契約されてんの忘れてたよ……。



◇◆◇◆




今日も朝から遠慮もへったくれもない魔王様からの呼び出しがくる。

いつでもどこでも何をしてても念話魔法ひとつで呼びつける上司。
前世と違って今はやることがいっぱいあるっていうのに、たまにはこっちの都合も考えて欲しいと思いながらも、そんなことを言おうものなら大変なことになりかねないのはわかっているので、大人しく転移魔法を発動させる。

そして勇者が住んでいる部屋の前まで跳ぶと、これから目の当たりにするであろう光景に少しだけ憂鬱な気持ちになりながら控え目にノックをした。


中に入ると案の定。

この間造らせたばかりの乳首責めの淫具をつけてカーク様の極太の剣で串刺しにされた勇者のあられもない姿が目に飛び込んできてビビる。


「お呼びでしょうか。ジルベルト師団長」


努めて平静にそう言ってはみるが、心情的には何つーとこに呼んでくれてんだコノヤロウって感じだ。

でもって。


「アラン。暫くそこに立ってレオン・バート閣下の素晴らしいお姿をしっかりと見ていろ」


やっぱりって感じの命令に、俺はひきつりそうになる表情を必死に取り繕いながら「かしこまりました」と答えた。


「あぁッ……!これ嫌ぁ……!はずかしい……、見ないで……、ダメぇ……」

「見られてさっきより明らかに興奮してるくせに何がダメなんだ? もっと恥ずかしい目にあわせて欲しいのか?」


カーク様は勇者の痴態がよく見えるようわざわざ体勢を変えてガツガツと攻め立て、勇者は口では恥ずかしがってても悦んでるのが丸わかりなほどだらしない表情で喘いでいる。

それを見ていると、自分の意思とは関係なしに俺の身体にも少しだけ変化が起こる。

魔物だった時には無かった性欲というものが、人間の身体には当たり前のものとして備わっているのだから仕方ない。

今日のカーク様の予定の調整することを考えながら何とか目を逸らすことなくやり過ごすと。
やがて盛大に勇者が精を噴き出したところをたっぷりと見せつけられたところで、カーク様が俺を一瞥し、ここでの任務が終了した。



◇◆◇◆



やっと通常業務が始まったと思ったら、執務室の自分の席で目を閉じ、難しい顔で考え込んでいる様子のカーク様。

他の人間が見たらきっと、何か崇高な事を考えているに違いないとでも思うのだろうが、俺は知っている。
カーク様が遠視魔法で勇者の行動を覗き見してるだけだってことを。

暫くその状態が続いたと思ったら、突然立ち上がり転移魔法でどこかに消えた。

何かあったんだな……。

俺は仕方なしにカーク様の机に積まれたまま手もつけられていない書類に目を通していった。

今度は呼ばれませんように、と祈りつつ仕事に励んでいると。俺の願いも虚しく、念話魔法で呼び出しがかかる。


指定の場所へと跳ぶと、そこには何かあったんだとひと目でわかるような荒れた室内と、満身創痍の気絶状態で床に転がっている男。
よく見ると、男の顔面は怪しげな液体で濡れていた。

全てを察した俺は手早く清浄魔法クリーン回復魔法ヒールを発動させると、魔法で部屋の状態を元に戻し、ついでに男の記憶も操作しておいた。

これでよし。


しかし、この日結局カーク様が執務室に戻ってくることはなく、俺は深夜まで仕事に励むことになったのだった。



それにしても。

いくら平和のためとはいえ、勇者を生け贄に魔王様の都合通りの世界を造るなんて神も思いきったことしてくれる。

しかも勝手に生け贄にしちゃったお詫びにと、なるべく勇者の希望に沿えるようにもした結果がこれだっていうんだからビックリだ。


イケメンになりたいとか、金持ちになりたいとか、名声が欲しいとか、そういうのはまだいい。


『羞恥、乳輪でクパクパのハレンチライフが送りたい』って何だよ!?


俺は神から勇者がそういう条件を出したと聞いて、あまりの俗物ぶりに呆れ果てた。

魔王様はそういう薄汚い欲望にまみれた勇者が好ましいらしいけど、はっきり言って理解不能だ。


本人達は大満足だろうけど、周りの迷惑度ハンパないんですけど!!


一日一回はハプニング的なハレンチイベントが起こるというとんでもスキルを持った勇者と、それを理由に嬉々としてお仕置きエッチに励む魔王様。

そのツケが全て回ってくる俺。


不遇な日々はまだまだ続く。



*******************


お読みいただきありがとうございました!

『酒池肉林でウハウハのハーレムライフ』ある意味達成ということで……。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

大魔法使いに生まれ変わったので森に引きこもります

かとらり。
BL
 前世でやっていたRPGの中ボスの大魔法使いに生まれ変わった僕。  勇者に倒されるのは嫌なので、大人しくアイテムを渡して帰ってもらい、塔に引きこもってセカンドライフを楽しむことにした。  風の噂で勇者が魔王を倒したことを聞いて安心していたら、森の中に小さな男の子が転がり込んでくる。  どうやらその子どもは勇者の子供らしく…

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき
BL
 族の総長と副総長の恋の話。  アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。  その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。 「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」  学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。  族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。  何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。

俺がイケメン皇子に溺愛されるまでの物語 ~ただし勘違い中~

空兎
BL
大国の第一皇子と結婚する予定だった姉ちゃんが失踪したせいで俺が身代わりに嫁ぐ羽目になった。ええええっ、俺自国でハーレム作るつもりだったのに何でこんな目に!?しかもなんかよくわからんが皇子にめっちゃ嫌われているんですけど!?このままだと自国の存続が危なそうなので仕方なしにチートスキル使いながらラザール帝国で自分の有用性アピールして人間関係を築いているんだけどその度に皇子が不機嫌になります。なにこれめんどい。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

処理中です...