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目の前に迫りくる変質者を殴り飛ばそうとした正にその時。
室内の空気がぐにゃりと歪み、見慣れたシルエットが浮かび上がる。
と同時に変質者の身体が勢いよく吹き飛び、壁へと叩きつけられた。
「穢らわしい手で私のものに触れるな。下衆が」
「カーク! ……ッ!!」
思いがけず現れた人物の名前を呼んではみたものの、気を失っているグリーンを睥睨するその瞳が絶対零度の冷気を纏っていることに気付いた俺は慌てて口を噤んだ。
俺の方へとゆっくり歩み寄るカーク。
口元は弧を描いてはいるものの、その瞳の温度は変質者に向けていたものと変わりないように思える。
「で?貴方はここで何をしていらっしゃるのです?」
「……何って。訓練生との手合わせが終わったから、ちょっと話を……」
「それはわかっています。私が聞いているのは、『今』、『ここで』、何をしてたのかということなのですがね?」
あれ? 俺、何してたっけ?
「えっと、ソイツにワケわかんないこと言われたり、言いがかりつけられたり……? 頭にきたからぶっ飛ばそうかと思ったところにカークが現れてビックリみたいな?」
「何ですか、その頭の悪そうな説明は?」
カークの視線が冷たいっていうより、もう殺人ビーム的なものになっている。
さっきの話の通じない変質者も恐いと思ったけど、静かに怒ってるカークのほうが遥かに恐い!!
「そもそも何故そんなことになったのかということを、是非とも最初から順序だてて、この私にもわかるように教えていただきたいと申し上げているのですがね」
「え……?」
最初の原因? はて?なんだっけ?
「思い出せないのなら思い出せるようにして差し上げましょう」
その言葉とほぼ同時に魔法の波動を感じてギョッとする。
「捕縛魔法」
「は!?」
カークの詠唱と同時に、魔法で作り出された無数の鎖が一斉に俺に襲いかかる。
すぐにソファーから飛びすさり、愛剣に魔力を纏わせその鎖を斬り刻んでいく。
しかし、あまりの数の多さと新たな鎖の出現スピードの早さに、逃げ切るのは正直ギリギリ。長期戦になったら確実に不利だと確信した。
でも、普段はカークに良いようにばかりされてはいるが、こっちは世界最強の勇者だ。捕縛される理由もわからない、原因も思い出せない状態で、大人しく捕まってやるわけにもいかない。
「なんでカークがそんなに怒ってんだよ!怒りたいのはこっちだっての!」
鎖に捕まらないよう懸命に剣を振るいながら、ちょっとくらい油断してくれないかなという淡い期待を込めて、一応カークの説得を試みる。
すると。
「それ、本気で言ってるんですか?」
転移魔法で俺のすぐ前に現れたカークが、少しだけ傷付いた表情を見せた。
そして。
「え……?」
唇が重なったと思った瞬間。
「ぐあッ……!」
油断した俺はあっさりと魔法の鎖に捕まった。
そうだった……。コイツはそういうヤツだった……。
途端にカークの顔に黒い笑みが浮かぶ。
「さて、洗いざらい吐いてもらいましょうか。
訓練生との手合わせで、恥ずかしい状態の乳首に木刀の先端が掠めて気持ち良さそうな声を他人に聞かせたことや、それを見た周りの男達からいやらしい目で見られたこと。そんな目で貴方を見ていた相手にのこのこ着いていった挙げ句、密室に二人きりになってその身体に触れさせたことについてどうお考えなのかって事を、じっくりと」
バ レ て る 。
室内の空気がぐにゃりと歪み、見慣れたシルエットが浮かび上がる。
と同時に変質者の身体が勢いよく吹き飛び、壁へと叩きつけられた。
「穢らわしい手で私のものに触れるな。下衆が」
「カーク! ……ッ!!」
思いがけず現れた人物の名前を呼んではみたものの、気を失っているグリーンを睥睨するその瞳が絶対零度の冷気を纏っていることに気付いた俺は慌てて口を噤んだ。
俺の方へとゆっくり歩み寄るカーク。
口元は弧を描いてはいるものの、その瞳の温度は変質者に向けていたものと変わりないように思える。
「で?貴方はここで何をしていらっしゃるのです?」
「……何って。訓練生との手合わせが終わったから、ちょっと話を……」
「それはわかっています。私が聞いているのは、『今』、『ここで』、何をしてたのかということなのですがね?」
あれ? 俺、何してたっけ?
「えっと、ソイツにワケわかんないこと言われたり、言いがかりつけられたり……? 頭にきたからぶっ飛ばそうかと思ったところにカークが現れてビックリみたいな?」
「何ですか、その頭の悪そうな説明は?」
カークの視線が冷たいっていうより、もう殺人ビーム的なものになっている。
さっきの話の通じない変質者も恐いと思ったけど、静かに怒ってるカークのほうが遥かに恐い!!
「そもそも何故そんなことになったのかということを、是非とも最初から順序だてて、この私にもわかるように教えていただきたいと申し上げているのですがね」
「え……?」
最初の原因? はて?なんだっけ?
「思い出せないのなら思い出せるようにして差し上げましょう」
その言葉とほぼ同時に魔法の波動を感じてギョッとする。
「捕縛魔法」
「は!?」
カークの詠唱と同時に、魔法で作り出された無数の鎖が一斉に俺に襲いかかる。
すぐにソファーから飛びすさり、愛剣に魔力を纏わせその鎖を斬り刻んでいく。
しかし、あまりの数の多さと新たな鎖の出現スピードの早さに、逃げ切るのは正直ギリギリ。長期戦になったら確実に不利だと確信した。
でも、普段はカークに良いようにばかりされてはいるが、こっちは世界最強の勇者だ。捕縛される理由もわからない、原因も思い出せない状態で、大人しく捕まってやるわけにもいかない。
「なんでカークがそんなに怒ってんだよ!怒りたいのはこっちだっての!」
鎖に捕まらないよう懸命に剣を振るいながら、ちょっとくらい油断してくれないかなという淡い期待を込めて、一応カークの説得を試みる。
すると。
「それ、本気で言ってるんですか?」
転移魔法で俺のすぐ前に現れたカークが、少しだけ傷付いた表情を見せた。
そして。
「え……?」
唇が重なったと思った瞬間。
「ぐあッ……!」
油断した俺はあっさりと魔法の鎖に捕まった。
そうだった……。コイツはそういうヤツだった……。
途端にカークの顔に黒い笑みが浮かぶ。
「さて、洗いざらい吐いてもらいましょうか。
訓練生との手合わせで、恥ずかしい状態の乳首に木刀の先端が掠めて気持ち良さそうな声を他人に聞かせたことや、それを見た周りの男達からいやらしい目で見られたこと。そんな目で貴方を見ていた相手にのこのこ着いていった挙げ句、密室に二人きりになってその身体に触れさせたことについてどうお考えなのかって事を、じっくりと」
バ レ て る 。
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