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僕を悩ませてる壁の名は『術式の構築』と『剣術の実践』。
術式の構築とは、こういう魔法があったらいいな、というものを自分で術式を考えて作り出したり、既存の術式を組合わせたりして作っていくことなのだが、僕はこの術式を作り出すという作業がものすごーく苦手なのだ。
なんと僕には『聖魔の書』の呪いのお陰で、こういう魔法があったらいいなと考えた時点で、呪文が勝手に頭の中に浮かんでくるというとんでもない仕様が備わっている。
しかし、残念なことにその呪文の言語は古代魔法語。術式が出来たところで、他人の前で使うことも出来ないし、自分で過程を考えてる訳ではないので原理を説明するということも難しい。
その上、その効果と同じ術式を現代魔法語を使って新たに自力で構築していこうにも、初心者の僕には難易度が高過ぎて上手くいかない。
自分で使うのならば何の問題もない素晴らしい能力だが、魔法学校で優秀さが認められるような使い方はできていないのが現状だ。
剣術については、貴族の子息としてそれなりに嗜んできたつもりだし、スタミナと筋力の不足は身体強化の魔法と治癒魔法でどうにかなっている。しかし、いざ実践となると相手の予想外の動きに対して臨機応変に対応出来ていないとうのが現実で。
──僕は日々自分の能力値の低さを実感させられるばかりだ。
こういう問題が出てくる前までは、高い魔力さえあれば何でも万能に出来ると思い込んでいただけに、自分の応用力とセンスの無さがネックとなってその魔力を活かすことができないなんてことは思ってもみなかった。
こういう感覚的な問題も、『聖魔の書』の呪いの力でどうにかならないものかと考えてはみたのだが、今のところそんな都合の良いことにはなりそうにもない。
ちょくちょく様子を見に来てくれるカイル様も最初は苦笑い程度済んでいたのが、ここ最近は明らかに顔色が変わってきているだけに、そろそろ本気でどうにかしないととは思っているんだけど……。
カイル様にはもうひとつ迷惑をかけまくっていることがあるから尚更だ。
「あ…んッ…、カイルさま……、もうイッちゃう……」
「お前のタイミングで好きにイッていいぞ」
カイル様の言葉に大きく頷きながら、僕はいつものようにカイル様の手の中に白濁を吐き出した。
どういう条件で対価が発動するのかは全く以て不明だが、『聖魔の書』と契約してからというもの、僕の身体は時々女の子の身体になっている。そんな時はカイル様の手を借りて元に戻り、更に男の身体になってからも火照りが治まらない身体を慰めてもらったりしているのだ。
最初は自分で対処できるよう頑張ってみたのだが、なかなか上手く出来ずに元に戻れなかった事から、結局見るに見かねたカイル様が手伝ってくれることになり、それからずっとお世話になっている。……国一番の天才魔術師にこんな真似させて本当に申し訳ない。
「よく頑張ったな」
「……ありがとうございました」
小さな子を褒める時のように優しく頭を撫でてくれるカイル様に、僕は真っ赤になりながら消え入りそうな声で礼を言った。
事後の気恥ずかしさは何回やっても慣れることなんてない。
脱いでいた服を拾い集め急いで身に付けていくと、いつもはすぐに部屋から出ていくカイル様が、先程まで他人には絶対に言えないことをしていたソファーに座ってじっと僕のやることを見つめていた。
「ローレンス。ちょっといいか」
「はい」
身支度を整えカイル様の前に立つと一枚の封筒を渡された。それ自体には何も書かれていないものの、封印を見れば薔薇と剣をあしらった王家の紋章。王家から僕に手紙だなんて嫌な予感しかしない。
開けるの怖いな……。
チラリとカイル様のほうに視線を向けると、その内容を予め聞いているのか複雑な表情で僕の顔を見上げている。
気が進まないまま封を開け書かれていた文面に目を通した僕は、王太子殿下からの善意という名の嫌がらせとしか思えない内容に思わず叫び出しそうになっていた。
どうしてこういうことするかな!?
そう口に出して言えたらどんなにスッキリするだろう……。
『全く進歩のないキミのために、もう一人天才と名高い叔父上に特別講師をお願いしておいたよ!これからはもっと死ぬ気で頑張ってね~。』
僕は不満を口に出せない代わりに、そう書き記されていた王太子殿下直々のありがたい手紙を、渾身の力で握りしめてしまったのだった。
術式の構築とは、こういう魔法があったらいいな、というものを自分で術式を考えて作り出したり、既存の術式を組合わせたりして作っていくことなのだが、僕はこの術式を作り出すという作業がものすごーく苦手なのだ。
なんと僕には『聖魔の書』の呪いのお陰で、こういう魔法があったらいいなと考えた時点で、呪文が勝手に頭の中に浮かんでくるというとんでもない仕様が備わっている。
しかし、残念なことにその呪文の言語は古代魔法語。術式が出来たところで、他人の前で使うことも出来ないし、自分で過程を考えてる訳ではないので原理を説明するということも難しい。
その上、その効果と同じ術式を現代魔法語を使って新たに自力で構築していこうにも、初心者の僕には難易度が高過ぎて上手くいかない。
自分で使うのならば何の問題もない素晴らしい能力だが、魔法学校で優秀さが認められるような使い方はできていないのが現状だ。
剣術については、貴族の子息としてそれなりに嗜んできたつもりだし、スタミナと筋力の不足は身体強化の魔法と治癒魔法でどうにかなっている。しかし、いざ実践となると相手の予想外の動きに対して臨機応変に対応出来ていないとうのが現実で。
──僕は日々自分の能力値の低さを実感させられるばかりだ。
こういう問題が出てくる前までは、高い魔力さえあれば何でも万能に出来ると思い込んでいただけに、自分の応用力とセンスの無さがネックとなってその魔力を活かすことができないなんてことは思ってもみなかった。
こういう感覚的な問題も、『聖魔の書』の呪いの力でどうにかならないものかと考えてはみたのだが、今のところそんな都合の良いことにはなりそうにもない。
ちょくちょく様子を見に来てくれるカイル様も最初は苦笑い程度済んでいたのが、ここ最近は明らかに顔色が変わってきているだけに、そろそろ本気でどうにかしないととは思っているんだけど……。
カイル様にはもうひとつ迷惑をかけまくっていることがあるから尚更だ。
「あ…んッ…、カイルさま……、もうイッちゃう……」
「お前のタイミングで好きにイッていいぞ」
カイル様の言葉に大きく頷きながら、僕はいつものようにカイル様の手の中に白濁を吐き出した。
どういう条件で対価が発動するのかは全く以て不明だが、『聖魔の書』と契約してからというもの、僕の身体は時々女の子の身体になっている。そんな時はカイル様の手を借りて元に戻り、更に男の身体になってからも火照りが治まらない身体を慰めてもらったりしているのだ。
最初は自分で対処できるよう頑張ってみたのだが、なかなか上手く出来ずに元に戻れなかった事から、結局見るに見かねたカイル様が手伝ってくれることになり、それからずっとお世話になっている。……国一番の天才魔術師にこんな真似させて本当に申し訳ない。
「よく頑張ったな」
「……ありがとうございました」
小さな子を褒める時のように優しく頭を撫でてくれるカイル様に、僕は真っ赤になりながら消え入りそうな声で礼を言った。
事後の気恥ずかしさは何回やっても慣れることなんてない。
脱いでいた服を拾い集め急いで身に付けていくと、いつもはすぐに部屋から出ていくカイル様が、先程まで他人には絶対に言えないことをしていたソファーに座ってじっと僕のやることを見つめていた。
「ローレンス。ちょっといいか」
「はい」
身支度を整えカイル様の前に立つと一枚の封筒を渡された。それ自体には何も書かれていないものの、封印を見れば薔薇と剣をあしらった王家の紋章。王家から僕に手紙だなんて嫌な予感しかしない。
開けるの怖いな……。
チラリとカイル様のほうに視線を向けると、その内容を予め聞いているのか複雑な表情で僕の顔を見上げている。
気が進まないまま封を開け書かれていた文面に目を通した僕は、王太子殿下からの善意という名の嫌がらせとしか思えない内容に思わず叫び出しそうになっていた。
どうしてこういうことするかな!?
そう口に出して言えたらどんなにスッキリするだろう……。
『全く進歩のないキミのために、もう一人天才と名高い叔父上に特別講師をお願いしておいたよ!これからはもっと死ぬ気で頑張ってね~。』
僕は不満を口に出せない代わりに、そう書き記されていた王太子殿下直々のありがたい手紙を、渾身の力で握りしめてしまったのだった。
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