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あらためまして。
僕の名前はローレンス・クレイストン。
ベルク王国という国にあるクレイストン伯爵家の子息である。
僕が生まれたベルク王国は海も山も平原もある豊かな国で、クレイストン伯爵家は海に面した領地を管理し、他国との貿易や海運などを取り仕切る裕福な貴族だ。
僕の父であるクレイストン伯爵は商才に恵まれる一方で、子宝にも恵まれ僕のほかに三人の子供がいる。
兄二人、姉一人で、僕は一番末っ子。
僕以外の兄妹はすべて成人(この国の貴族社会では15歳が成人)しており、一番上の兄は現在23歳。近い将来、父の爵位と事業を継ぐべく、公私ともに忙しくしている。
太陽のような温かみを感じる朗らかな印象を与える見た目からは想像も出来ないほど、仕事はできる男。やさしそうなイケメンだから騙されがちだが、交渉、外交容赦なし!笑顔で相手の心をぶった切る腹黒人間だ。
ある意味貴族らしいといえば貴族らしいのかもしれないけど。
二番目の兄は21歳。現在王宮で近衛騎士として勤務しており、次期王となられる王太子殿下の側近として日々忙しくしているらしく滅多に邸に戻ってこない。こちらの兄の見た目は長兄とは真逆の印象でクールビューティーという言葉がよく似合う。
本気で怒った時の背筋が凍るような笑顔がとても恐い。
僕のすぐ上の姉は19歳。儚げな見た目と穏やかな性格で、つい護ってあげたくなるタイプの美人だ。現在、幼馴染で優秀な近衛騎士となった隣の領地の伯爵子息と婚約中である。
兄弟全員母親譲りの艶やかな金髪に緑色の瞳を持ち、各々与える印象こそ違うものの、揃いも揃って美男美女。
父も母も多少歳はとってるとはいえ、若い頃は社交界の華と言われた美男美女だけに、全員揃うと華やかというものを通り越して、お伽噺の世界かと思うほどのきらびやかさになる。
──で、僕はというと。
見た目。
銀色に近い淡い金髪に紫色の瞳。
顔の造作、体型共に普通。むしろ薄っぺらい(筋肉がつきにくい体質なのだ)。持ってる雰囲気も普通なので、この国でも滅多にお目にかかれない紫色の瞳を持って生まれたにも関わらず、少しも持て囃されることなく15年間を過ごしてきた、ちょっと残念な人間だ。
ひとりだけ見た目の色彩が違うのは、数代前のクレイストン伯爵家の当主に降嫁された王女様からの隔世遺伝らしいのだが、絶世の美女と謳われた彼女の遺伝子は残念ながら色彩のみに発揮されてしまったらしく、他に恩恵を受けたと思われるところは見当たらない。
なので無駄にきらびやかな家族の中にいると、どうしても影が薄くなりがちなのだが、自分を卑下したり家族と比べて卑屈になったりということは一切なく、のほほんと暮らしていた。
目立つのが得意でない僕としては、これはこれで良かったと思っている。
中身はというと、たぶん貴族らしくないという一言に尽きるだろう。
……よく変わってると言われる。
僕は幼い頃から本を読むのが大好きだった。
どのくらい好きかと言われれば、とにかく現実世界の自分のことなど全く興味がなくなるほどで。デビュタントを控えた年頃でありながら、来る日に向けて自分磨きに精を出すなんてことは一切せず、寸暇を惜しむように読書三昧の日々を送っていたほどだ。
家にある本だけでは厭きたらず、足繁く街の図書館まででかける始末。貴族の令息なら絶対にしない独り歩きもお手のものになっている。
最近は文字を読むのが好きすぎて、誰も読まないような古い文献を見つけては、取り憑かれたかのように読み漁るほどの活字中毒にまで発展していた。
家族はそんな僕を厳しくも温かい目で見守ってくれており、貴族の家に生まれた者としての務め(貴族としての知識やマナーを身に付けるということなど)さえ果たしていれば、普通の未成年の貴族令息なら絶対許されないであろう行動も多少多目にみてもらいながら、自分なりに充実した日々を送っていたのだ。
それこそ僕みたいな年頃で健康な男子なら誰でもが興味を持つ女性にさえも欠片も関心を持たないままで……。
──しかしそんな僕にも神様が用意してくれた運命の出会いのようなものが訪れたのだ。
僕の名前はローレンス・クレイストン。
ベルク王国という国にあるクレイストン伯爵家の子息である。
僕が生まれたベルク王国は海も山も平原もある豊かな国で、クレイストン伯爵家は海に面した領地を管理し、他国との貿易や海運などを取り仕切る裕福な貴族だ。
僕の父であるクレイストン伯爵は商才に恵まれる一方で、子宝にも恵まれ僕のほかに三人の子供がいる。
兄二人、姉一人で、僕は一番末っ子。
僕以外の兄妹はすべて成人(この国の貴族社会では15歳が成人)しており、一番上の兄は現在23歳。近い将来、父の爵位と事業を継ぐべく、公私ともに忙しくしている。
太陽のような温かみを感じる朗らかな印象を与える見た目からは想像も出来ないほど、仕事はできる男。やさしそうなイケメンだから騙されがちだが、交渉、外交容赦なし!笑顔で相手の心をぶった切る腹黒人間だ。
ある意味貴族らしいといえば貴族らしいのかもしれないけど。
二番目の兄は21歳。現在王宮で近衛騎士として勤務しており、次期王となられる王太子殿下の側近として日々忙しくしているらしく滅多に邸に戻ってこない。こちらの兄の見た目は長兄とは真逆の印象でクールビューティーという言葉がよく似合う。
本気で怒った時の背筋が凍るような笑顔がとても恐い。
僕のすぐ上の姉は19歳。儚げな見た目と穏やかな性格で、つい護ってあげたくなるタイプの美人だ。現在、幼馴染で優秀な近衛騎士となった隣の領地の伯爵子息と婚約中である。
兄弟全員母親譲りの艶やかな金髪に緑色の瞳を持ち、各々与える印象こそ違うものの、揃いも揃って美男美女。
父も母も多少歳はとってるとはいえ、若い頃は社交界の華と言われた美男美女だけに、全員揃うと華やかというものを通り越して、お伽噺の世界かと思うほどのきらびやかさになる。
──で、僕はというと。
見た目。
銀色に近い淡い金髪に紫色の瞳。
顔の造作、体型共に普通。むしろ薄っぺらい(筋肉がつきにくい体質なのだ)。持ってる雰囲気も普通なので、この国でも滅多にお目にかかれない紫色の瞳を持って生まれたにも関わらず、少しも持て囃されることなく15年間を過ごしてきた、ちょっと残念な人間だ。
ひとりだけ見た目の色彩が違うのは、数代前のクレイストン伯爵家の当主に降嫁された王女様からの隔世遺伝らしいのだが、絶世の美女と謳われた彼女の遺伝子は残念ながら色彩のみに発揮されてしまったらしく、他に恩恵を受けたと思われるところは見当たらない。
なので無駄にきらびやかな家族の中にいると、どうしても影が薄くなりがちなのだが、自分を卑下したり家族と比べて卑屈になったりということは一切なく、のほほんと暮らしていた。
目立つのが得意でない僕としては、これはこれで良かったと思っている。
中身はというと、たぶん貴族らしくないという一言に尽きるだろう。
……よく変わってると言われる。
僕は幼い頃から本を読むのが大好きだった。
どのくらい好きかと言われれば、とにかく現実世界の自分のことなど全く興味がなくなるほどで。デビュタントを控えた年頃でありながら、来る日に向けて自分磨きに精を出すなんてことは一切せず、寸暇を惜しむように読書三昧の日々を送っていたほどだ。
家にある本だけでは厭きたらず、足繁く街の図書館まででかける始末。貴族の令息なら絶対にしない独り歩きもお手のものになっている。
最近は文字を読むのが好きすぎて、誰も読まないような古い文献を見つけては、取り憑かれたかのように読み漁るほどの活字中毒にまで発展していた。
家族はそんな僕を厳しくも温かい目で見守ってくれており、貴族の家に生まれた者としての務め(貴族としての知識やマナーを身に付けるということなど)さえ果たしていれば、普通の未成年の貴族令息なら絶対許されないであろう行動も多少多目にみてもらいながら、自分なりに充実した日々を送っていたのだ。
それこそ僕みたいな年頃で健康な男子なら誰でもが興味を持つ女性にさえも欠片も関心を持たないままで……。
──しかしそんな僕にも神様が用意してくれた運命の出会いのようなものが訪れたのだ。
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