セカンドライフ!

みなみ ゆうき

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番外編

その後12.プレゼントしました!【後編】

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結局予定の時間に帰って来ないどころか、連絡も来ないまま後三十分ほどで日付が変わろうとしていた。

十時を過ぎた辺りでもう今日は帰って来ないかもと思い始めた俺は、適当に夕食を済ませ、東條のために作った料理を冷蔵庫にしまった。

東條がいないんじゃここにいる意味もないし、今からでもタクシーを呼んで光里ちゃんちに行こうかな……。

そう思ってはみたものの、せっかく来たのにそれもどうかと思い直し、とりあえず今日はここに泊まることに決めた。


たとえ日付が過ぎても帰って来るんなら『おめでとう』って言えるしな。
直接言えなくてもメールで先に伝えてもいいかも。


早速メッセージを打ち込もうとスマホを手に取ったところで。

いつの間にか充電切れになっていたことに初めて気付き、愕然とした。


もしかして東條から連絡が来ないんじゃなくて、来てたけどわからなかっただけじゃ……。

充電しようにも同じ機種を使ってる東條に借りればいいやと思ったから充電器なんて持ってきていない。

コンビニに充電器って売ってたっけ?

慌てて玄関に向かったところで、カチャッという音と共に玄関のドア開き、あまりのタイミングの良さに俺はビックリし過ぎて固まった。

東條にしても、まさかドアを開けたすぐ目の前に俺がいるとは思わなかったのか、結構驚いた顔をしている。


「──おかえりなさい。誕生日おめでとう」


先に我に返った俺が平静を装って声を掛けると、東條もすぐに笑顔で俺の方へと歩み寄りそっと抱き締めてくれた。


「ただいま。色々トラブって遅くなった。一応こっちに着いてすぐに光希のとこに連絡したけど繋がらなかったぞ。充電切れてんじゃないのか? お前のことだから充電器を持ち歩くなんてしてないだろうし」


俺のほうの状況を的確に言い当てられ、俺はとりあえず返事の代わりに東條の背中に腕を回して誤魔化しておいた。

俺の行動パターンがバレバレなのが何となく癪に障るけど、実際にそういう事になってたんだから文句も言えない。


俺は色んな言葉を飲み込んでから顔をあげると、自分から東條の唇にキスをした。

珍し過ぎる俺の行動に東條が目を丸くしてるっぽいのがわかって面白い。

俺もまさか自分がこんな真似をする日がくるとは思っていなかっただけに、内心苦笑いしながらもたまにはサービスするのもいいかな、なんて悠長なことを考えていた。

ところが。

段々とキスが深くなり、主導権が東條に移ると、今度はあっという間に俺の余裕なんて無くなっていく。


「誕生日プレゼントもらってもいいか?」


そんなタイミングで視線を合わせた東條にそう囁かれ、俺は黙って頷くことしか出来なかった。


◇◆◇◆


軽くシャワーを浴びた後、俺達はすぐにお互いの感触を確かめあった。

今日こそは俺が全部するつもりだったのに、やっぱり東條に翻弄された俺は、心の中で次こそはと誓いながらも散々喘がされ、イカされる羽目になり正直ヘロヘロになっていた。

まさか『誕生日プレゼントは俺』なんていうベタな真似を自分が経験することになろうとは……。


とりあえずギリギリだったとはいえ、日付が変わる前におめでとうって言えたんだし、東條はセックスの最中ずっと滅茶苦茶嬉しそうに俺を攻め立てていたから良かったと思うことにしよう。

すっかり雰囲気に流されてしまった事に気恥ずかしさを感じつつも、忘れていた本当のプレゼントの存在を思い出した俺はのろのろと身体を起こしベッドから抜け出した。


「眠いとこ悪いけど、忘れないうちに。はい、これプレゼント。大したものじゃないけど」


リビングに置いてあったプレゼントを持って再びベッドへと戻ると、珍しく眠そうにしている東條の目の前に差し出した。

途端に東條がパッチリと目を覚ます。

俺からプレゼントがあるとは思っていなかったのか、ちょっとだけ戸惑った様子で身体を起こすと、プレゼントが入った某有名ブランドの紙袋を受け取ってくれた。


喜んでくれてはいるみたいだけど、なんか微妙な反応。

もしかして俺に無理させたとか思ってんのかな?

あの学校の関係者ってみんな金銭感覚おかしいから、正直このくらい普通っていうか大したことじゃないって思われるのかと思ってたからなんか意外。

俺の時には明らかに高校生向けとは言い難い物をくれたくせに、案外まともな感覚も持っているらしい東條のギャップがおかしくて、つい笑ってしまった。


「あのさ、もし俺がまだ高校生だっていうの気にしてるんなら、そんなのこうして付き合ってる時点で今更だから気にせず受け取ってよ。実は俺小学生の頃から投資やってて、それなりの成果出してるからさ。まあ、アンタ達からしてみれば微々たるもんだとは思うけど」


俺の説明に納得したらしく、東條の表情が和らいだことにホッとする。


「ありがとう。光希。嬉しいよ」


改めてそう言われ、俺の表情も自然と和らいだ。


結構ギリギリだったけど誕生日を一緒に過ごすことも出来たし、無事にプレゼントも渡すことも出来て、なんか普通のお付き合いってやつをしてる感じがするよな……。

なんてのんびり考えていると。


「あ……」


すっかり忘れていた事を思い出し、ちょっとだけ憂鬱な気分になった。

そう言えば、光里ちゃんから東條に挨拶させて欲しいって言われてたんだった。


「どうした?」


不自然に固まった俺に、東條が心配そうに問い掛ける。

仕方ない。正直に話しておくか。


「あー、実はさ。成り行きで姉に先生と付き合ってるってのを話したら、先生に挨拶させて欲しいって言いだしてさ。時間作ってもらえないか聞いてきてって言われたんだけど……」

「お姉さんって前に病院で会った?」

「ああ……、うん」


あの時の気まず過ぎる状況を思い出し、口ごもってしまう。
東條はそれに気付いているのかいないのか、俺に噛みつくようなキスを仕掛けてきた。


「ちょ……、なに!」


覆い被さってきた東條の身体を押し返し、空気を読まない東條を咎めるように睨み付ける。

すると。


「承知しましたって伝えてくれ。詳しいことはまた後で」


東條は少しの逡巡の後にそう答え、明らかに何か企んでるような感じで軽く口の端をあげた。


え? 何この表情。なんか怖いんだけど……。

そう言えば光里ちゃんも笑顔なのになんか怖かった……。


俺はこの二人が会う様子を想像して、何となく背筋が寒くなる。

──俺、その場にいなくていいかな?


そうは思っても言える筈などない俺は、二人に挟まれ気まずい思いをしているであろう自分が容易に想像出来てしまい、思わずため息を吐きそうになったのだった。
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