告白ごっこ

みなみ ゆうき

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49.リセット⑥(瑠衣視点)

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あれから数日経っても姉から連絡がくることはなく。かといって俺の方から聞くのもやぶ蛇っぽい感じがして。

最初に連絡が来た時に一度は覚悟は決めたものの、仕切り直しってことになるとやっぱり勇気が出なかった俺は、散々色んなパターンを想像してモヤモヤした後、最終的にはバレたらその時だと、ある意味開き直ることにした。


あった事を無かった事には出来ないし、バレてる事を下手に隠し立てするような往生際の悪い真似はしたくない。
何よりもう終わってる事に対して言い訳とかしたくないから、話を切り出されたら、縁を切られる覚悟で両親や姉には誠心誠意謝ろう。

自分から言い出さなかったのは卑怯だって言われるかもしれないし、謝って済むことじゃないけど、謝る以外に俺に出来ることなんてないと思うから。


そういう結論に達した時、わざわざ俺を探してまで謝りにきた岡野の事を思い出した。

岡野も俺に許してもらいたかった訳じゃなくて、自分のしたことにちゃんと向き合った結果、自分に出来る事をしただけだったのかもしれないと、ふと思う。

なのに俺は、『望んでない謝罪は自己満足だ』なんて言い方をして、アイツの言葉を聞こうともしなかったんだよな。

俺が偉そうに言えることなんて、何もなかったのに……。

許されたいなんて思ってない。それでも謝りたい。
今ならその気持ちがよくわかる。

たぶん岡野と話すことなんてもうないと思うけど、これから先、岡野の姿を見る度にこの気持ちを思い出すんだろうなって思ったら、益々アイツらと関わり合いになりたくないと思ってしまった。


なのに。

そんな事を考えた時に限って顔を合わせてしまうのが俺らしいっていうか、何て言うか。

普段は全く会わないのにどうしてこんな時だけ?

そう思わずにはいられないほど絶妙なタイミングでの遭遇に、帰るために教室から出たばかりの俺は一瞬足を止めてしまった。

それは友達と並んで廊下を歩いていた岡野も同じだったようで、俺を見つけてビックリした顔をしてる。

なんとなく気不味いものを感じつつ素知らぬ振りで歩き出すと、ちょうど進行方向にいた岡野は何か言いたそうな顔で俺をガン見していた。

あんな風に俺に突撃してきた岡野も、さすがに関わり合いになりたくないってハッキリ言われた後で声を掛けてくる図太さはなかったらしく、唇を開きかけてまた閉じるっていう動作を繰り返している。

それを視界の端に捉えながらも、あえて視線を合わせずに通り過ぎようとした時。


「高嶋」


岡野ではなく、岡野と一緒にいたヤツに名前を呼ばれ、岡野に対してしか意識を向けてなかった俺は、不意を突かれた感じになり、うっかり立ち止まってしまった。

岡野はソイツが俺に声を掛けたことで、なのか、俺が立ち止まったことで、なのかわからないけど、この展開は予想外だったらしく、驚きを隠そうともしないで俺達の顔を交互に見ている。


「……なに?」


ため息を吐きたくなるのを堪えつつ、迷惑だっていうのを全面に出しながら答える俺に、声を掛けてきたヤツは少しだけ困ったように笑った。


「俺はコイツと同じクラスでバスケ部の安達。ちょっと時間いい?」


教室前の廊下。放課後ってことで次から次へと人が出てくる。

しかもこんな珍しい組み合わせでどんな話をしてるのか皆気になるらしく、さり気ない感じを装いながらも視線が集まってるのがわかってウンザリさせられる。

コイツ、高崎と一緒にいたヤツだよな? 一体何を言い出すつもりだよ。


「……アンタも岡野と同じ用件? だったらそういうの要らないから」


下手なこと言われる前に釘を刺すと。


「そのつもりもあったんだけど、そっちは仕切り直すわ。今は別件。──梅原賢人って知ってるよな? 俺と昴流、一昨日青陽学園に練習試合の打ち合わせで行った時、ソイツに声かけられたんだけど」


全く思いもしなかった話が飛び出し、俺は言葉に詰まった。
俺が何も言わないのをいい事に、安達は勝手に話を続ける。


「俺達が高嶋と同じ高校だってこと知ってたらしくて、高嶋が元気にしてるか聞かれたよ」


知り合いを通して姉に俺のことを聞いてきた賢人。

まさかこのタイミングで偶然にも高崎達が賢人の高校に行ってた挙げ句に、賢人が高崎達に声を掛けてたなんて。

約二年もの間、全く何もなかったのに、ここにきて一気に色んな事がおき始めている。

きっと物事が動き出す時ってのは、こんな感じなんだな、なんて妙に納得してしまった。


「時間も無かったし、俺は高嶋のこと直接知らないからそれくらいしか話してないけど、昴流は梅原と連絡先交換して、その後色々話したっぽい」

「……そう」

「気にならない?」

「……べつに」


俺に関する話なんて、あの当時同じ学校に通ってた人間なら誰でも知ってることだから、今更賢人が誰に話そうと気にしない。

むしろ賢人がどういうつもりで今更俺の事を気にかけているのかってことの方が遥かに気になる。


「話ってそれだけ? だったら帰りたいんだけど」


薄い反応しか見せない俺が意外だったのか、安達は苦笑いしながらも、仕方ないって感じで道をあけてくれた。

安達の隣で岡野がずっと物言いたげな顔をしていたけど、わざわざ聞いてやる義理はないので、岡野を無視して歩き出す。


この後俺はわりとすぐに、岡野の視線の意味を理解し、安達の話をちゃんと聞かなかったことを後悔する羽目になるのだが。

そんな事になるなんて微塵も思っていなかった俺は、早くこの場から離れたい一心で、急ぎ足で立ち去ったのだった。
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