告白ごっこ

みなみ ゆうき

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36.リスタート①(昴流視点)

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瑠衣に完膚なきまでに振られてから一ヶ月。

季節はすっかり秋に変わり、吹く風は冷たい空気を孕んでいて冬の気配を感じさせるようになった。

あの日以来、俺は部活の時以外、バスケ部メンバーとつるむのをやめ、昼休みは大抵屋上で、ひとりぼんやりと過ごしている。

瑠衣と一緒にここで過ごしていた時は、まだ照り付ける日差しが強くて、日陰に入らないと暑くていられないほどだったのに、今は逆に日差しがあるところにいないと、身震いしそうになるほど寒い日も増えてきた。

それでもだいぶ高くなった空を見上げながら、ただ何をするでもなく寝転んでいると、とるに足らない自分っていうのがよく実感できて身が引き締まる思いがするし、何よりもここにいると瑠衣と過ごした時間が確かにあったことだって実感出来る気がするから、どんなに寒くなったとしてもこの場所に来ることをやめられそうにない。


あの日上っ面ばかりで適当だった自分を死ぬほど後悔した俺は、これまでの自分を全て捨てて新しく作り替えるくらいのつもりで、あれからの毎日を過ごしていた。

まずは女の子達の誘いにのるのをやめ、その分出来た時間を今はバスケの自主練と勉強にあてている。

まだ一ヶ月程度とはいえ、その効果は自分でも驚くべきもので、部活では周囲が驚くほど技術が向上し、先月あった中間テストではこれまでで一番良い成績をとることができた。

先生も監督も親でさえもいきなり真面目になった俺に対し最初は驚いていた様子だったが、結果に反映されていることが目に見えてわかるようになると、喜ばれるどころか逆にエンジンがかかるのが遅すぎると叱られた。

テストはともかく、バスケに関しては俺の力がチーム全体のポテンシャルに大きく影響しているだなんて自惚れる気はないけど、もうちょっと早くから努力していれば大会の結果も違ったかもしれないと言われたら、さすがにちょっと申し訳ない気持ちにさせられた。

以前の俺だったら、試合に負けてもすぐに気持ちを切り替えて過ぎたことだと割りきることが出来ていたのに、あったかもしれない筈のもしもの可能性について考えたり、誰かの期待に応えることが出来なかった自分の不甲斐なさを悔やんだりってのを自分がするようになるなんて思ってもみなかった。

──これもみんな、瑠衣とのことがあったから気付けたことだと思うと、瑠衣に会うまでの自分がクズ過ぎて嫌になる。


教室でも、急激に仲良くなっていつも一緒にいた俺と瑠衣がいきなり疎遠になったことで色んな憶測を呼んだらしく、一時は妙に落ち着かない空気になっていた。

でも当事者である俺や瑠衣が何も言わない以上、周りの人間も下手なことは言えないらしく、今のところ俺や瑠衣にその事を直接聞いてくるような真似はしてこない。
その上、中田までもが大人しくなり、俺に近寄りもしなくなったことで、触れてはいけない事情があると察したんだろう。

クラスメイトに気を遣わせているのはわかっているけど、事情を話すわけにもいかない以上、素知らぬ顔で過ごすしかないと割り切ることにした。

中には好奇心だけじゃなく、本当に俺の事を心配してくれてる人もいるけれど……。


実は瑠衣と最後に話をした直後。俺のことを心配していたらしい岡野と安達からそれぞれメッセージが送られてきていた。
俺は部活が終わった後、二人に時間をもらい、あの告白の日から今日に至るまでの本当の経緯と俺の気持ちを正直に話して謝った。

二人は俺が瑠衣を本気で好きだと言い出したことに複雑な表情をしていたけど、あの時の俺の様子から薄々そうなんじゃないかと察していたらしく、安達なんかは。

『俺らも同罪だから謝る必要はないけど、高嶋とはもう一度ちゃんと話をして謝ったほうがいいんじゃね? 俺らも機会をみて謝るし』

と言ってくれた。

岡野は俺が話してる最中ずっと無言のままだったけど、その後家に帰ってから。

《たまにはフラれる側の気持ちを存分に味わうがいい(^^)v》
《頑張れよ(*゜▽゜)b》
《協力はしないけど(^з^)-☆》

という励ましなのか何なのかわからないメッセージをくれた。

きっと岡野は男が男を好きになるなんていうイレギュラーな事を、一生懸命自分の中で消化して理解しようとしてくれたんだろうな。


中田にも話すつもりでいたけど、あの日以来ずっと避けられていて、話がしたいと送ったメッセージも既読スルーされている状態だ。

こればかりは無理強いすることでもないし、中田が俺とはもう話もしたくないっていうなら仕方のないことだと思って諦めることにした。

安達や岡野も俺達の間がギクシャクしてるのに気付いていても、何も言わずにいてくれる。


そんな訳もあって、俺はひとりでいることが増えた。

そのせいで女の子達はこれ幸いと、以前にも増してアプローチしてくるようになり、校内でその手の誘いをかけてくる子まででてきた。

もちろん全部丁重にお断りしている。

以前の俺だったら、また適当に女の子と付き合って、適度に性欲を満たしながら、気楽な人間関係を楽しんでいたのだろうが、真剣に好きになるということがどういうことかという事を知った今では、そんな薄っぺらい関係の人間と、たとえ僅かな時間でも一緒にいたいとは思えなくなっていた。

それどころか、何で今まであんな風に調子に乗ってられたのか、自分のことながら物凄く恥ずかしい人間だと思えるようになってきた。


こんなんじゃ瑠衣が俺に言ったとおり、『好きになる要素』なんてあるわけがない。



瑠衣とはあの日以来、話をするどころか、目が合うことすらもない。

頑なに拒否されているというよりは、眼中にないというか、存在さえも認識されていないかのようで。

俺は完全に瑠衣の世界から弾き出されたんだと実感する日々。

それでも何とかもう一度、俺っていう人間を瑠衣のあの瞳に映して欲しくて。

……カッコ悪いくらい必死だった。



瑠衣に送ったメッセージは結局既読になることがないまま、メッセージアプリのIDだったところには『メンバーがいません。』と表示されるようになっていた。
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