告白ごっこ

みなみ ゆうき

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27.接近⑥

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瑠衣と屋上で深いキスをしてからというもの。
俺の中で瑠衣への気持ちが益々大きくなった気がする。

学校では出来るだけ一緒にいたいと思うし、離れている時間はつい瑠衣の事を考えてしまう。
部活の最中はさすがに集中してるけど、家に帰ってひとりになると瑠衣に会いたくて堪らなくなる。

せめて声が聞ければと思うけど、元々口下手で電話が苦手だという瑠衣に無理強いは出来ず、メッセージアプリのメール機能だけで連絡を取り合うことになった。


大抵は俺が一方的に他愛もない事を送るだけだし、瑠衣の方から送られてくることはない。
でも、俺の送った内容に既読がついて返事が返ってくるだけでも瑠衣と繋がっていることを実感できて嬉しくなってしまい、つい頻繁にメッセージを送ってしまっていた。

瑠衣の存在を知る前までの俺は、用事もないのに電話で喋りたがったり、どうでもいい内容のメッセージをしょっちゅう送ってくる彼女達の気持ちがさっぱりわからず、その相手をする事を物凄く面倒に感じていたものだ。

だからそれを自分がやる側になるなんて、考えたこともなかったのに……。


恋をすると人は変わるっていう言葉のとおり、瑠衣を好きになった今、俺は図らずも彼女達の気持ちが理解できるようになっていた。

好きだから一緒にいたいし、些細なことでも相手の事が知りたい。ほんの少しでも顔が見られたら嬉しいし、声が聞ければいいなと思う。
たとえ下らない話であっても共有したいし共感したい。何よりかまって欲しいからついメッセージを送ってしまう。

自分の気持ちも伝えられてないくせに彼氏ヅラすんのもどうかと思うけど、付き合うっていうのは、デートするとかセックスするっていうだけの関係じゃなく、そういうちょっとしたことの積み重ねもすごく大事で幸せな時間なんだって思い知らされた。


瑠衣から告白されてからそろそろ一ヶ月。

俺の生活はバスケを除けば瑠衣一色と言っても過言じゃない感じになってきている。

──だからこそ気になっていることがあった。


瑠衣は徹底して自分の事を話そうとはしない。

俺が瑠衣のことで知ってることと言ったら、学校で一緒にいる間にあった事だけ。

それとなく話を振ってみても上手くはぐらかされ、家でのことも自分の好きなことも食べ物の好みの事でさえもハッキリとした答えを返さない。

それがまるでこれ以上は入ってくるなとばかりに見えない線引きをされているようで、酷くさみしい気持ちにさせられる。

たぶん瑠衣がそういう態度を取るのは、俺が自分の気持ちをちゃんと伝えないせいで不安にさせてるのが原因だとは思う。
だいぶ自惚れてる考え方だけど、実際に付き合ってみたらがっかりしたとか、嫌いになったというパターンなら、メールのやり取りの他に、学校でも話をして、昼休みを一緒に過ごして、友達同士じゃ絶対にしないような深いキスをするなんて真似を許してくれる筈がない。

俺は頭の片隅に過った不安を払拭するように自分にそう言い聞かせ、瑠衣の気持ちを少しでも感じ取ろうと必死になった。



◇◆◇◆



《おつかれー》
《今日の部活めっちゃハードだった》
《でも》
《明日の部活は午前だけになった!》
《午後から会おうよ》


週末の夜。部活が終わって家に帰ってから瑠衣に送ったメッセージ。
すぐについた既読と、送られてきたOKのスタンプにテンションがあがる。
明日はゆっくり瑠衣に会えると思っただけで、ハードな練習で疲れ果てていた身体に活力が戻った気がした。


《行きたいとこある?》
《今度こそは瑠衣の行きたいとこで》


少しでも瑠衣が自分の希望を言ってくれたら嬉しい。

そんな思いで尋ねると。


《服買いに行きたいかも》


一生懸命考えてくれたらしい瑠衣から、そんな返事が返ってきた。
俺はすぐに行き先と明日の段取りを考えて文字を打ち込む。


《じゃあ》
《新しく出来たショッピングモールに行くってことで》
《そこの駅で待ち合わせでい?》


再び送られてきたOKのスタンプ。

素っ気ない返事だけど、それが瑠衣との約束を確定させている証拠だと思うと嬉しくて、ついいつまでもそれを眺めてしまっていた。

今までの俺では考えられない行動に、自嘲の笑みが浮かぶ。




賭けの期限まであと少し。

中田達への対応をどうするか何も決まらないまま、俺は瑠衣への想いを加速させていた。
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