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26.接近⑤
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それからというもの。
瑠衣と一緒にいられる大義名分が出来た俺は、学校にいる間は誰にも邪魔されることなく瑠衣と一緒の時間を過ごすことが出来るようになった。
でもそれは休み時間の間だけ。
最近は昼休みも一緒にいられるようになったけど、正直全然時間が足りない。
それを補うように人目につかないところでこっそり瑠衣に触れてはいるものの、触れれば触れるほどもっと直接的に瑠衣を感じたいという欲求に駆られ、瑠衣への渇望が増しただけだった。
もっとずっと一緒にいられればと思う。
だけど俺には部活があり、そのバスケ部は大きな大会の地区予選の真っ只中で、負けない限り当分部活が休みになることもないからそうそう時間が取れない。
しかも試合に向けてそれなりに真面目に部活動に取り組んでいる今の俺には、部活が終わってから何か出来るほどの余力がなく、瑠衣との時間は学校にいる間の僅かな時間だけとなっているのがもどかしかった。
俺はいつだって瑠衣と一緒にいたいし、瑠衣に触れたい。
瑠衣の全てを独占したいし、瑠衣の事をもっと知りたい。
瑠衣を好きだという気持ちは日に日に膨らんでいくばかりで、際限がない。
情けない話。
俺は最近、瑠衣とのアレコレを想像しながらひとりですることが増えた。
童貞を捨てて以来そっち方面で不自由したことはなかったし、たとえ間が開いても積極的に自分で処理しようなんて思ったことはなかった。
況してや男とどうこうなんて考えたこともなかったのに、瑠衣の事を考えると妙に身体が高ぶり、つい自分で自分を慰めてしまっている。
いっそのこと瑠衣を抱いたら少しはこの渇望がおさまるんじゃないかとも思ったが、それをしてしまったら自分勝手な欲望と不安解消のための捌け口に瑠衣を利用しようとしているようで嫌だったし、こんな余裕のない俺を知られたくはなかった。
◇◆◇◆
「今日は教室じゃなくて違うところで食べようぜ」
向かった先は校舎の屋上。
この季節、ここはあまり人が立ち入らない場所だけに二人きりになるには絶好の場所だった。
さすがに瑠衣を抱くことはできないが、誰にも邪魔されずにゆっくり過ごすには最適だ。
まだまだ日差しは強いものの、日陰に入ればそれほど暑さは苦にならないし、周りの目を気にしなくていいからありのままの自分でいられる。
俺はかなり浮かれていた。
秋の気配が濃くなってきてるのか、時折吹く風は随分涼しい。
瑠衣はいつもと同じようにあまり表情を変えないまま、俺の隣でコンビニのパンを食べている。
その姿が小動物じみてて可愛いななんて思っていたら瑠衣と目があってしまい、べつに疚しいことを考えていた訳じゃないのに妙に慌ててしまった。
その結果。
「瑠衣っていっつも買ったもの食べてるよな。飽きない?」
「……お昼だけだから飽きたりしないけど」
「量も少ないし。そんなんでお腹空かない?」
「……俺は昴流と違ってあんまり動いたりしないから特には」
「確かに瑠衣って動いてないかも。体育してるの見る限り運動神経は悪くなさそうなんだけどなぁ。たまには体育以外で運動したほうがいいんじゃない? 今度一緒にバスケでもする? 人数集めて3on3とか」
せっかくの二人きりだというのに、俺はひとりで空回りした挙げ句、うっかりアイツらに引き合わせるような誘いを口にしていた。
後悔しても口から出た言葉は元に戻らない。
痛恨のミスに落ち込んでいると。
「……バスケ部に混じってやれるほど、運動神経も体力もないから遠慮しとく」
瑠衣は本当に興味がなかったらしく、あっさり断ってくれたことにホッとした。
「そっか。よく考えたらせっかくの瑠衣との二人の時間なのに、わざわざ他のヤツを呼ぶ必要ないもんな」
本心から言った言葉に同意するかのように、瑠衣は穏やかに微笑み返してくれる。
その途端、好きだという気持ちが一気に溢れだし、瑠衣に触れたくて堪らなくなった。
「瑠衣の髪、サラサラしてる」
風に吹かれてハラリと揺れた瑠衣の髪。
少し乱れてた髪を軽く整えるように撫でながらサラサラな黒髪の感触を堪能する。
瑠衣はそんな俺を見て何か言いたそうな顔をしていた。
「何? 微妙な表情してるけど」
「……いや、最近昴流がやけに触れてくるから、どうしたのかなと思って戸惑ってただけ」
「瑠衣に触れたいから、じゃダメ?」
「……べつにいいけど」
その言葉に俺の中の何かが弾けた気がした。
遠慮なく瑠衣の髪に指を絡めた後、髪を弄りながら耳をなぞる。ピクリと反応したことでここが弱いのだということがわかり嬉しくなった。
他にも弱いところがないかを探るため、俺は殊更丁寧に指を滑らせていく。
止められないのをいいことに、頬をなぞり、唇に触れる。
その柔らかな感触と驚いたような瑠衣の反応に、あんなに自重しようと思っていたのに、あっさり歯止めがきかなくなった。
「瑠衣ってどこもすべすべで触り心地いいよな」
「……そうかな?」
「そうだよ。ずっと触っていたくなる」
本当は指なんかじゃなく、俺の唇でたっぷりとその唇を味わいたい。
白い首筋に吸い付いて俺の痕を残したい。
本当にそうできたらいいのにと考えながら、まるで愛撫するかのようにゆっくりと指を滑らせた。
俺の熱を感じ取ったのか、瑠衣がビクリと身体を震わせる。
少しだけ見えた怯えの色に嗜虐心がそそられた俺は、逃がさないとばかりに強引に瑠衣の身体を引き寄せると、性急に唇を塞いでやった。
この間のように掠めとるようなキスじゃなく、お互いの熱を感じあえるような深いキス。
薄く開いた唇に舌を潜り込ませ瑠衣の舌を絡め取ってやると、たどたどしい動きながらも瑠衣もそれに応えてくれた。
瑠衣の全てが欲しかった。
何度も好きだと言いながら抱いて、俺の全てを受け入れながらあらためて瑠衣からも好きだと言って欲しかった。
でも中田達とのことに決着がついていない内に俺の気持ちを言葉にするのは違う気がするし、俺の気持ちを伝えないうちに瑠衣を抱くのはズルい気がして、必死に自分の理性にセーブをかけた。
その代わり、ありったけの想いを込めて瑠衣に触れる。
──俺のこの気持ちがちゃんと瑠衣に伝わることを願いながら。
瑠衣と一緒にいられる大義名分が出来た俺は、学校にいる間は誰にも邪魔されることなく瑠衣と一緒の時間を過ごすことが出来るようになった。
でもそれは休み時間の間だけ。
最近は昼休みも一緒にいられるようになったけど、正直全然時間が足りない。
それを補うように人目につかないところでこっそり瑠衣に触れてはいるものの、触れれば触れるほどもっと直接的に瑠衣を感じたいという欲求に駆られ、瑠衣への渇望が増しただけだった。
もっとずっと一緒にいられればと思う。
だけど俺には部活があり、そのバスケ部は大きな大会の地区予選の真っ只中で、負けない限り当分部活が休みになることもないからそうそう時間が取れない。
しかも試合に向けてそれなりに真面目に部活動に取り組んでいる今の俺には、部活が終わってから何か出来るほどの余力がなく、瑠衣との時間は学校にいる間の僅かな時間だけとなっているのがもどかしかった。
俺はいつだって瑠衣と一緒にいたいし、瑠衣に触れたい。
瑠衣の全てを独占したいし、瑠衣の事をもっと知りたい。
瑠衣を好きだという気持ちは日に日に膨らんでいくばかりで、際限がない。
情けない話。
俺は最近、瑠衣とのアレコレを想像しながらひとりですることが増えた。
童貞を捨てて以来そっち方面で不自由したことはなかったし、たとえ間が開いても積極的に自分で処理しようなんて思ったことはなかった。
況してや男とどうこうなんて考えたこともなかったのに、瑠衣の事を考えると妙に身体が高ぶり、つい自分で自分を慰めてしまっている。
いっそのこと瑠衣を抱いたら少しはこの渇望がおさまるんじゃないかとも思ったが、それをしてしまったら自分勝手な欲望と不安解消のための捌け口に瑠衣を利用しようとしているようで嫌だったし、こんな余裕のない俺を知られたくはなかった。
◇◆◇◆
「今日は教室じゃなくて違うところで食べようぜ」
向かった先は校舎の屋上。
この季節、ここはあまり人が立ち入らない場所だけに二人きりになるには絶好の場所だった。
さすがに瑠衣を抱くことはできないが、誰にも邪魔されずにゆっくり過ごすには最適だ。
まだまだ日差しは強いものの、日陰に入ればそれほど暑さは苦にならないし、周りの目を気にしなくていいからありのままの自分でいられる。
俺はかなり浮かれていた。
秋の気配が濃くなってきてるのか、時折吹く風は随分涼しい。
瑠衣はいつもと同じようにあまり表情を変えないまま、俺の隣でコンビニのパンを食べている。
その姿が小動物じみてて可愛いななんて思っていたら瑠衣と目があってしまい、べつに疚しいことを考えていた訳じゃないのに妙に慌ててしまった。
その結果。
「瑠衣っていっつも買ったもの食べてるよな。飽きない?」
「……お昼だけだから飽きたりしないけど」
「量も少ないし。そんなんでお腹空かない?」
「……俺は昴流と違ってあんまり動いたりしないから特には」
「確かに瑠衣って動いてないかも。体育してるの見る限り運動神経は悪くなさそうなんだけどなぁ。たまには体育以外で運動したほうがいいんじゃない? 今度一緒にバスケでもする? 人数集めて3on3とか」
せっかくの二人きりだというのに、俺はひとりで空回りした挙げ句、うっかりアイツらに引き合わせるような誘いを口にしていた。
後悔しても口から出た言葉は元に戻らない。
痛恨のミスに落ち込んでいると。
「……バスケ部に混じってやれるほど、運動神経も体力もないから遠慮しとく」
瑠衣は本当に興味がなかったらしく、あっさり断ってくれたことにホッとした。
「そっか。よく考えたらせっかくの瑠衣との二人の時間なのに、わざわざ他のヤツを呼ぶ必要ないもんな」
本心から言った言葉に同意するかのように、瑠衣は穏やかに微笑み返してくれる。
その途端、好きだという気持ちが一気に溢れだし、瑠衣に触れたくて堪らなくなった。
「瑠衣の髪、サラサラしてる」
風に吹かれてハラリと揺れた瑠衣の髪。
少し乱れてた髪を軽く整えるように撫でながらサラサラな黒髪の感触を堪能する。
瑠衣はそんな俺を見て何か言いたそうな顔をしていた。
「何? 微妙な表情してるけど」
「……いや、最近昴流がやけに触れてくるから、どうしたのかなと思って戸惑ってただけ」
「瑠衣に触れたいから、じゃダメ?」
「……べつにいいけど」
その言葉に俺の中の何かが弾けた気がした。
遠慮なく瑠衣の髪に指を絡めた後、髪を弄りながら耳をなぞる。ピクリと反応したことでここが弱いのだということがわかり嬉しくなった。
他にも弱いところがないかを探るため、俺は殊更丁寧に指を滑らせていく。
止められないのをいいことに、頬をなぞり、唇に触れる。
その柔らかな感触と驚いたような瑠衣の反応に、あんなに自重しようと思っていたのに、あっさり歯止めがきかなくなった。
「瑠衣ってどこもすべすべで触り心地いいよな」
「……そうかな?」
「そうだよ。ずっと触っていたくなる」
本当は指なんかじゃなく、俺の唇でたっぷりとその唇を味わいたい。
白い首筋に吸い付いて俺の痕を残したい。
本当にそうできたらいいのにと考えながら、まるで愛撫するかのようにゆっくりと指を滑らせた。
俺の熱を感じ取ったのか、瑠衣がビクリと身体を震わせる。
少しだけ見えた怯えの色に嗜虐心がそそられた俺は、逃がさないとばかりに強引に瑠衣の身体を引き寄せると、性急に唇を塞いでやった。
この間のように掠めとるようなキスじゃなく、お互いの熱を感じあえるような深いキス。
薄く開いた唇に舌を潜り込ませ瑠衣の舌を絡め取ってやると、たどたどしい動きながらも瑠衣もそれに応えてくれた。
瑠衣の全てが欲しかった。
何度も好きだと言いながら抱いて、俺の全てを受け入れながらあらためて瑠衣からも好きだと言って欲しかった。
でも中田達とのことに決着がついていない内に俺の気持ちを言葉にするのは違う気がするし、俺の気持ちを伝えないうちに瑠衣を抱くのはズルい気がして、必死に自分の理性にセーブをかけた。
その代わり、ありったけの想いを込めて瑠衣に触れる。
──俺のこの気持ちがちゃんと瑠衣に伝わることを願いながら。
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