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18.始まりの日(昴流視点)
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ビックリするほど早く人がいなくなった放課後の教室。
いつもの俺なら授業が終わり次第すぐに部室に向かっている時間だけに、こんな短時間でここまで教室が閑散とすることに少なからず衝撃を受けていた。
去年も何度かこの時間まで残っていたことがあった筈だが、ここまで静かだったという印象はなかったように思う。
これから俺がコトを起こすことを知っていて、みんなが協力してくれているなんてことは絶対にないから、これがいつもの姿なんだってことはわかってる。
今日に限ってそんな事が気になるのは、今の俺がいつにないほど落ち着かない状態になっているからだろう。
──俺はこれから、ここで告白をする。
そう考えるだけで自然と緊張感が高まっていき、心なしか息苦しささえ感じてしまう。
何度も同じようなシチュエーションを経験してる筈なのに、こんな状態になるのは初めてで、正直戸惑っていた。
教室には、今日の日直である俺と、名簿の番号が前後という都合上ペアになっている高嶋瑠衣の二人きり。
クラス替えがあってから半年が経とうとしているのに、何故か今日初めて高嶋との日直の仕事をすることになった俺は、自分の席に座って日誌を広げながら、教室の窓とカーテンを閉めて回っている高嶋の様子をさりげなく眺めていた。
秋というにはまだまだ強すぎる日射しが眩しかったのか、時々軽く目を眇めている高嶋は、これから告白しなければならない相手だというのに、なんだか酷く現実感のない存在のように思えた。
パッと見の印象は地味。友達もいないし、授業で当てられない限りその声を聞くこともない。
つい数日前までその存在すら認識していなかったクラスメイト。
それが今の俺にとっての高嶋瑠衣。
周りに聞いた高嶋の印象も概ねそんな感じだし、中にはそんな高嶋のことをあからさまに馬鹿にしてるヤツもいた。
俺は俺で成り行きで急に接点を持つことになったクラスメイトに対し、どういう距離感でアプローチすべきなのか正直考えあぐねており、あれこれ考えている内に告白の日を迎えてしまったことを後悔している真っ最中だ。
これが女の子なら話は簡単なのに……。男相手に告白とかマジで罰ゲームだわ……。
日誌を書くことも忘れ、そんな事を考えていると。
いつの間にか全ての窓とカーテンを閉め終わっていたらしい高嶋が、前の席の椅子を俺のほうに向けて座ってきた。
考え事に夢中になるあまり高嶋のほうへ注意を向けていなかった俺は、想定よりずっと近い距離に高嶋が来たことに驚いてしまい、ビクッと肩を揺らした挙げ句、咄嗟に視線を逸らしてしまった。
──なんかカッコ悪い……。
すぐに意識を切り替えて、ここからどうやってそれらしい雰囲気に持っていくかを考える。
しかしごちゃごちゃになっているらしい思考回路ではどうにも考えはまとまらず、面倒になった俺は成り行きに身を任せてみることに決めた。
だけどすぐにその判断を後悔する羽目になる。
すぐ目の前にいる高嶋に視線を向けると、思ってたよりもずっと整った顔立ちだったことに少なからず衝撃を受けた。
蠱惑的な色を湛える黒い瞳。
目が合った瞬間。大袈裟なくらいに心臓の鼓動がドキリと跳ねた。
時間が止まったかのように見つめ合ったまま身動ぎひとつ出来ずにいると。
緩く弧を描いていた艶やかな唇が突然言葉を紡ぎ出す。
「……あのさ」
高嶋の呼び掛けで我に返った俺は、たった今自分が感じたことが信じられず、半ば呆然と高嶋を見つめた。
俺の心の内など知る由もない高嶋は、はにかんだような笑みを浮かべている。
そして。
「俺、高崎のことが好きなんだけど……」
俺が言う筈だった台詞が高嶋の口から出たことに驚き過ぎた俺は、その思考回路を停止した。
いつもの俺なら授業が終わり次第すぐに部室に向かっている時間だけに、こんな短時間でここまで教室が閑散とすることに少なからず衝撃を受けていた。
去年も何度かこの時間まで残っていたことがあった筈だが、ここまで静かだったという印象はなかったように思う。
これから俺がコトを起こすことを知っていて、みんなが協力してくれているなんてことは絶対にないから、これがいつもの姿なんだってことはわかってる。
今日に限ってそんな事が気になるのは、今の俺がいつにないほど落ち着かない状態になっているからだろう。
──俺はこれから、ここで告白をする。
そう考えるだけで自然と緊張感が高まっていき、心なしか息苦しささえ感じてしまう。
何度も同じようなシチュエーションを経験してる筈なのに、こんな状態になるのは初めてで、正直戸惑っていた。
教室には、今日の日直である俺と、名簿の番号が前後という都合上ペアになっている高嶋瑠衣の二人きり。
クラス替えがあってから半年が経とうとしているのに、何故か今日初めて高嶋との日直の仕事をすることになった俺は、自分の席に座って日誌を広げながら、教室の窓とカーテンを閉めて回っている高嶋の様子をさりげなく眺めていた。
秋というにはまだまだ強すぎる日射しが眩しかったのか、時々軽く目を眇めている高嶋は、これから告白しなければならない相手だというのに、なんだか酷く現実感のない存在のように思えた。
パッと見の印象は地味。友達もいないし、授業で当てられない限りその声を聞くこともない。
つい数日前までその存在すら認識していなかったクラスメイト。
それが今の俺にとっての高嶋瑠衣。
周りに聞いた高嶋の印象も概ねそんな感じだし、中にはそんな高嶋のことをあからさまに馬鹿にしてるヤツもいた。
俺は俺で成り行きで急に接点を持つことになったクラスメイトに対し、どういう距離感でアプローチすべきなのか正直考えあぐねており、あれこれ考えている内に告白の日を迎えてしまったことを後悔している真っ最中だ。
これが女の子なら話は簡単なのに……。男相手に告白とかマジで罰ゲームだわ……。
日誌を書くことも忘れ、そんな事を考えていると。
いつの間にか全ての窓とカーテンを閉め終わっていたらしい高嶋が、前の席の椅子を俺のほうに向けて座ってきた。
考え事に夢中になるあまり高嶋のほうへ注意を向けていなかった俺は、想定よりずっと近い距離に高嶋が来たことに驚いてしまい、ビクッと肩を揺らした挙げ句、咄嗟に視線を逸らしてしまった。
──なんかカッコ悪い……。
すぐに意識を切り替えて、ここからどうやってそれらしい雰囲気に持っていくかを考える。
しかしごちゃごちゃになっているらしい思考回路ではどうにも考えはまとまらず、面倒になった俺は成り行きに身を任せてみることに決めた。
だけどすぐにその判断を後悔する羽目になる。
すぐ目の前にいる高嶋に視線を向けると、思ってたよりもずっと整った顔立ちだったことに少なからず衝撃を受けた。
蠱惑的な色を湛える黒い瞳。
目が合った瞬間。大袈裟なくらいに心臓の鼓動がドキリと跳ねた。
時間が止まったかのように見つめ合ったまま身動ぎひとつ出来ずにいると。
緩く弧を描いていた艶やかな唇が突然言葉を紡ぎ出す。
「……あのさ」
高嶋の呼び掛けで我に返った俺は、たった今自分が感じたことが信じられず、半ば呆然と高嶋を見つめた。
俺の心の内など知る由もない高嶋は、はにかんだような笑みを浮かべている。
そして。
「俺、高崎のことが好きなんだけど……」
俺が言う筈だった台詞が高嶋の口から出たことに驚き過ぎた俺は、その思考回路を停止した。
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