17 / 50
17.終わりの日④
しおりを挟む
「俺さ、お前らが俺の事を勝手にターゲットに決めた時、スッゲェ腹が立ったし、絶対に関わり合いになりたくないって思った。でも、俺がそう主張したところでお前らは俺の気持ちなんてお構い無しにゲームを進めていくだろ? だから俺はその煩わしさを回避するために、あえてゲームに参加するって方法を選んだんだ」
高崎は訳がわからないって顔をして呆然と俺を見つめている。
「俺に『好き』と言わせたらゲームクリア。それがあの『告白ごっこ』のルールなんだよな。だからあの日、俺はあえて先手を打って高崎に告白をした。それでこの馬鹿げたゲームが終わると思ったからさ。でもそんな俺の目論見は外れ、ゲームが終わるどころか新たな賭けが始まってしまった。こうなったらお前らにとって優位に事が運んでるように見せかけながらとことん付き合って、最終的には二度とこんなふざけた真似をしようと思わないように、一番効果的なタイミングでネタばらししてやろうって決めたんだ。幸い言い逃れが出来ないレベルの証拠も手に入れたことだし」
「……じゃあ好きって言ってくれたのは……」
「嘘に決まってんだろ。俺ら元々接点ゼロじゃん。好きになる要素ある?」
心底嫌そうに説明すれば、高崎は表情を歪め俯いた。
加害者のくせに傷付いたような顔をしてる高崎にイラッとさせられる。
普段コイツらがやってることをそのまま模倣しただけだってことに気付いてないとか言わないよな?
「俺にとっては、気持ちが伴わないキスやセックスは単なる接触に過ぎない。むしろこのパフォーマンスをすることで完全にオチたと思わせることが出来るし、お前らが賭けのためにここまでクズな真似をしてるって証明にもなるかなって思ってたから、我慢出来るとこまで付き合おうって思ってた。
──でもさすがに何とも思ってないヤツとヤれるほど神経太くなかったらしくて、結局ああいう結果に終わったんだけどさ」
元々途中でやめる気満々だったし、いざとなれば遠慮なく実力行使すればいいって思ってた。俺も男だから、一方的にされるがままになってるつもりはなかったし。
それに大袈裟過ぎるほどに嫌がることであわよくば無理矢理されてるっぽい感じも演出できるかなと思って、念のため高崎の家に着いた直後からスマホのボイスレコーダーを起動させていた。
一応準備万端で挑んだんだけど……。
頭ではわかっていても、身体も気持ちもついていかなかった。
「お前さ、女子なら誰とでもヤれる自信あるとか恥ずかしげもなく豪語してたけど、それって誰でもいいとか誰でも一緒だって思ってて、相手を意思や感情をもった『個人』だと認識してないから言えるんだよな。でもさ。自分はそういうつもりでも、相手も同じだとは限らないっていう当たり前の事、忘れてんじゃね?」
俺自身、自分の性格が悪いことくらいは重々承知している。他人にどうこう言えるほど立派な人間じゃないことも。
でもコイツらみたいに他人の痛みすらわからず、ノリと勢いで他人を傷付けて喜ぶような人間じゃない。
少なくとも誰かを好きになって、想いが通じあって身体を繋げた時の幸せな気持ちを知っている分だけ、コイツらのしたことが本当に許しがたいことだって認識できている。
──たとえその幸せが長くは続かないものであったとしても、その時そこにあった気持ちは本物だったって言えるから。
「お前のやり方はホントに上手いと思う。決定的な言葉は絶対に言わないくせに、思わせ振りな態度と言葉で巧妙に相手の気持ちを絡め取っていくんだからさ。お前に告白された女の子達は嬉しかったと思うよ。だからこそ尚更お前のしたことは最低だと思うし、そんなお前の事を俺は心の底から軽蔑してる」
高崎は沈黙したまま一言も喋らない。
何も言わないってことは、もう聞きたいこともないってことでいいだろう。
だったら話はこれで終わりだ。
「こんな事がなかったらお前と話すこともなかったと思うし、もう話すこともないと思うけど、お前がいつか今までやってきたことを後悔するくらい本気で好きな人が出来ることを願ってるよ」
もっと辛辣な言葉しか出ないと思ってたけど、これで本当に最後だと思ったからか、自分でもビックリするくらい優しい言葉が口から飛び出した。
高崎もまさか俺がこんな事を言うなんて思っていなかったせいか、酷く驚いた顔をしている。
妙に居心地が悪くなった俺は、それ以上何も言わずに教室を出た。
知らず知らずのうちに緊張していたせいか、自然と大きなため息が溢れ出る。
これで本当に全てが終わった。
そう思ったら、妙に気が抜けた。
******************
お読みいただきありがとうございます。
これで一旦瑠衣視点は終わりです。
次話からは昴流視点になります。
高崎は訳がわからないって顔をして呆然と俺を見つめている。
「俺に『好き』と言わせたらゲームクリア。それがあの『告白ごっこ』のルールなんだよな。だからあの日、俺はあえて先手を打って高崎に告白をした。それでこの馬鹿げたゲームが終わると思ったからさ。でもそんな俺の目論見は外れ、ゲームが終わるどころか新たな賭けが始まってしまった。こうなったらお前らにとって優位に事が運んでるように見せかけながらとことん付き合って、最終的には二度とこんなふざけた真似をしようと思わないように、一番効果的なタイミングでネタばらししてやろうって決めたんだ。幸い言い逃れが出来ないレベルの証拠も手に入れたことだし」
「……じゃあ好きって言ってくれたのは……」
「嘘に決まってんだろ。俺ら元々接点ゼロじゃん。好きになる要素ある?」
心底嫌そうに説明すれば、高崎は表情を歪め俯いた。
加害者のくせに傷付いたような顔をしてる高崎にイラッとさせられる。
普段コイツらがやってることをそのまま模倣しただけだってことに気付いてないとか言わないよな?
「俺にとっては、気持ちが伴わないキスやセックスは単なる接触に過ぎない。むしろこのパフォーマンスをすることで完全にオチたと思わせることが出来るし、お前らが賭けのためにここまでクズな真似をしてるって証明にもなるかなって思ってたから、我慢出来るとこまで付き合おうって思ってた。
──でもさすがに何とも思ってないヤツとヤれるほど神経太くなかったらしくて、結局ああいう結果に終わったんだけどさ」
元々途中でやめる気満々だったし、いざとなれば遠慮なく実力行使すればいいって思ってた。俺も男だから、一方的にされるがままになってるつもりはなかったし。
それに大袈裟過ぎるほどに嫌がることであわよくば無理矢理されてるっぽい感じも演出できるかなと思って、念のため高崎の家に着いた直後からスマホのボイスレコーダーを起動させていた。
一応準備万端で挑んだんだけど……。
頭ではわかっていても、身体も気持ちもついていかなかった。
「お前さ、女子なら誰とでもヤれる自信あるとか恥ずかしげもなく豪語してたけど、それって誰でもいいとか誰でも一緒だって思ってて、相手を意思や感情をもった『個人』だと認識してないから言えるんだよな。でもさ。自分はそういうつもりでも、相手も同じだとは限らないっていう当たり前の事、忘れてんじゃね?」
俺自身、自分の性格が悪いことくらいは重々承知している。他人にどうこう言えるほど立派な人間じゃないことも。
でもコイツらみたいに他人の痛みすらわからず、ノリと勢いで他人を傷付けて喜ぶような人間じゃない。
少なくとも誰かを好きになって、想いが通じあって身体を繋げた時の幸せな気持ちを知っている分だけ、コイツらのしたことが本当に許しがたいことだって認識できている。
──たとえその幸せが長くは続かないものであったとしても、その時そこにあった気持ちは本物だったって言えるから。
「お前のやり方はホントに上手いと思う。決定的な言葉は絶対に言わないくせに、思わせ振りな態度と言葉で巧妙に相手の気持ちを絡め取っていくんだからさ。お前に告白された女の子達は嬉しかったと思うよ。だからこそ尚更お前のしたことは最低だと思うし、そんなお前の事を俺は心の底から軽蔑してる」
高崎は沈黙したまま一言も喋らない。
何も言わないってことは、もう聞きたいこともないってことでいいだろう。
だったら話はこれで終わりだ。
「こんな事がなかったらお前と話すこともなかったと思うし、もう話すこともないと思うけど、お前がいつか今までやってきたことを後悔するくらい本気で好きな人が出来ることを願ってるよ」
もっと辛辣な言葉しか出ないと思ってたけど、これで本当に最後だと思ったからか、自分でもビックリするくらい優しい言葉が口から飛び出した。
高崎もまさか俺がこんな事を言うなんて思っていなかったせいか、酷く驚いた顔をしている。
妙に居心地が悪くなった俺は、それ以上何も言わずに教室を出た。
知らず知らずのうちに緊張していたせいか、自然と大きなため息が溢れ出る。
これで本当に全てが終わった。
そう思ったら、妙に気が抜けた。
******************
お読みいただきありがとうございます。
これで一旦瑠衣視点は終わりです。
次話からは昴流視点になります。
11
お気に入りに追加
397
あなたにおすすめの小説

小石の恋
キザキ ケイ
BL
やや無口な平凡な男子高校生の律紀は、ひょんなことから学校一の有名人、天道 至先輩と知り合う。
助けてもらったお礼を言って、それで終わりのはずだったのに。
なぜか先輩は律紀にしつこく絡んできて、連れ回されて、平凡な日常がどんどん侵食されていく。
果たして律紀は逃げ切ることができるのか。
ハルとアキ
花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』
双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。
しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!?
「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。
だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。
〝俺〟を愛してーー
どうか気づいて。お願い、気づかないで」
----------------------------------------
【目次】
・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉
・各キャラクターの今後について
・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉
・リクエスト編
・番外編
・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉
・番外編
----------------------------------------
*表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) *
※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。
※心理描写を大切に書いてます。
※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる