告白ごっこ

みなみ ゆうき

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17.終わりの日④

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「俺さ、お前らが俺の事を勝手にターゲットに決めた時、スッゲェ腹が立ったし、絶対に関わり合いになりたくないって思った。でも、俺がそう主張したところでお前らは俺の気持ちなんてお構い無しにゲームを進めていくだろ? だから俺はその煩わしさを回避するために、あえてゲームに参加するって方法を選んだんだ」


高崎は訳がわからないって顔をして呆然と俺を見つめている。


「俺に『好き』と言わせたらゲームクリア。それがあの『告白ごっこ』のルールなんだよな。だからあの日、俺はあえて先手を打って高崎に告白をした。それでこの馬鹿げたゲームが終わると思ったからさ。でもそんな俺の目論見は外れ、ゲームが終わるどころか新たな賭けが始まってしまった。こうなったらお前らにとって優位に事が運んでるように見せかけながらとことん付き合って、最終的には二度とこんなふざけた真似をしようと思わないように、一番効果的なタイミングでネタばらししてやろうって決めたんだ。幸い言い逃れが出来ないレベルの証拠も手に入れたことだし」

「……じゃあ好きって言ってくれたのは……」

「嘘に決まってんだろ。俺ら元々接点ゼロじゃん。好きになる要素ある?」


心底嫌そうに説明すれば、高崎は表情を歪め俯いた。

加害者のくせに傷付いたような顔をしてる高崎にイラッとさせられる。
普段コイツらがやってることをそのまま模倣しただけだってことに気付いてないとか言わないよな?


「俺にとっては、気持ちが伴わないキスやセックスは単なる接触に過ぎない。むしろこのパフォーマンスをすることで完全にオチたと思わせることが出来るし、お前らが賭けのためにここまでクズな真似をしてるって証明にもなるかなって思ってたから、我慢出来るとこまで付き合おうって思ってた。
──でもさすがに何とも思ってないヤツとヤれるほど神経太くなかったらしくて、結局ああいう結果に終わったんだけどさ」


元々途中でやめる気満々だったし、いざとなれば遠慮なく実力行使すればいいって思ってた。俺も男だから、一方的にされるがままになってるつもりはなかったし。
それに大袈裟過ぎるほどに嫌がることであわよくば無理矢理されてるっぽい感じも演出できるかなと思って、念のため高崎の家に着いた直後からスマホのボイスレコーダーを起動させていた。
一応準備万端で挑んだんだけど……。

頭ではわかっていても、身体も気持ちもついていかなかった。


「お前さ、女子なら誰とでもヤれる自信あるとか恥ずかしげもなく豪語してたけど、それって誰でもいいとか誰でも一緒だって思ってて、相手を意思や感情をもった『個人』だと認識してないから言えるんだよな。でもさ。自分はそういうつもりでも、相手も同じだとは限らないっていう当たり前の事、忘れてんじゃね?」


俺自身、自分の性格が悪いことくらいは重々承知している。他人にどうこう言えるほど立派な人間じゃないことも。
でもコイツらみたいに他人の痛みすらわからず、ノリと勢いで他人を傷付けて喜ぶような人間じゃない。

少なくとも誰かを好きになって、想いが通じあって身体を繋げた時の幸せな気持ちを知っている分だけ、コイツらのしたことが本当に許しがたいことだって認識できている。

──たとえその幸せが長くは続かないものであったとしても、その時そこにあった気持ちは本物だったって言えるから。


「お前のやり方はホントに上手いと思う。決定的な言葉は絶対に言わないくせに、思わせ振りな態度と言葉で巧妙に相手の気持ちを絡め取っていくんだからさ。お前に告白された女の子達は嬉しかったと思うよ。だからこそ尚更お前のしたことは最低だと思うし、そんなお前の事を俺は心の底から軽蔑してる」


高崎は沈黙したまま一言も喋らない。

何も言わないってことは、もう聞きたいこともないってことでいいだろう。

だったら話はこれで終わりだ。


「こんな事がなかったらお前と話すこともなかったと思うし、もう話すこともないと思うけど、お前がいつか今までやってきたことを後悔するくらい本気で好きな人が出来ることを願ってるよ」


もっと辛辣な言葉しか出ないと思ってたけど、これで本当に最後だと思ったからか、自分でもビックリするくらい優しい言葉が口から飛び出した。

高崎もまさか俺がこんな事を言うなんて思っていなかったせいか、酷く驚いた顔をしている。


妙に居心地が悪くなった俺は、それ以上何も言わずに教室を出た。
知らず知らずのうちに緊張していたせいか、自然と大きなため息が溢れ出る。


これで本当に全てが終わった。

そう思ったら、妙に気が抜けた。






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お読みいただきありがとうございます。
これで一旦瑠衣視点は終わりです。
次話からは昴流視点になります。
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